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2番目の女になる理由


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記事:阪本 沙衣(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
「彼女いるのに、クリスマス私と過ごしてくれたんだよ」
そう嬉しそうに話す友達の梨花。彼女は見た目も綺麗だし、女子力はかなり高いと思う。でも、本命の彼女になりにくい女性なのだ。料理もできるし、部屋も家具をフランフランにまとめるこだわり屋さん。そして、意識高い自己啓発の本も読んでいる。
なのに、彼氏ができない。
というより、男性と仲良くはなれるのだけど、本命になれないのだ。
私と彼女との出会いは婚活パーティーに行きまくっていたときだ。
私も35歳になって、独り身という現実を打破するために、必死で動いていたとき、たまたま、隣に座った彼女と仲良くなった。
結局婚活パーティーではいい出会いはなく、梨花との出会いが同じ目標を掲げた戦友の様に、意気投合して仲良くなった。
それからは、私の婚活は梨花と共に活動することが増えた。
そして、たまにはお互いデートしてみる相手もできたりもした。そのたび、経過を話したりするのだが、何故か梨花が気になるっていう人は怪しい香りのする人なのだ。
婚活している場所なのに、紛れ込んでくる既婚者や彼女アリの男たち。
何故か、高確率で彼女はその人たちを引き当ててしまう。
「なんか、ご飯奢ってくれたし、BARいって、私は帰りたいって言ったのに、全然帰してくれなくて、電車なくなっちゃったし、仕方なくない?」
この前の婚活パーティーで出会った人に、お願いして合コンを開いてもらった会で、梨花は気に入った人が出来て、ご飯へ行った時の報告会を二人で行っていた。
「いや、仕方なくないでしょ」
私はこの手の話は正直好きではない。わたしだったら、強気で断る。
冷めた対応の私とは裏腹に、梨花は浮かれた口調で出来事を話す。
「ただ、朝一同じ電車で帰ったとき、次の会う予定全然聞いてこなくて、もうすぐ私降りるよって、次いつ会えるとか聞かなくていいの? ってきいたら、やっと聞いてきてさ」
その時点で、その男はアウトなのだよ。
私は心の中で思った。
その後、きっと誰もが想像できるだろう。
「そのあと、2回くらいは会ったけど、平日の夜でさ、土日は出張行くらしくて会えなくて、そんなに工場でも出張ってあるのかな」
梨花はある意味純粋。
気になった男性の言葉を全て信じている。
その彼は、私と同じような業種で働いていた。工場のラインで働いていて、出張なんて職制にならない限りない。
「ねえ、本気で信じてるの? その人、きっと既婚者かなんかだよ」
私の言葉に、動揺しながら梨花は認めたくないようで、でも、本当は勘づいているのだろう。
「やっぱり?」
なんだか、梨花が可哀想に思えてきた私は、合コンの幹事に連絡を取って白状させることにした。
案の定、幹事は自分が出会うために男は既婚者や彼女持ちを連れてきていたのだ。私は電話越しで激怒した。そして、連絡先ブロック。
最近の男性はこんなんばかりだ、自分のために女にはいい子を連れて来いという。こっちは本当に彼氏のない子を連れていくのに、男性側はその趣旨すら伝えずに、ただの飲み会といって仲間を連れてくるパターンが本当に多かった。
幸い、私はそういうセンサーが働いて、引っかかることはない。けれど、その事件以降も、梨花は引っかかるのだ。
次第に、相手の正体が分かっても、梨花は諦めているのかグレイな関係を築くようになってしまった。
「彼女いるのに、私に会いに来るんだよ」
「ねえ、いい加減やめなよ。その人がもし、気づかないうちに結婚してたら、不倫になるの。そうなったら、慰謝料だってとられちゃうんだから。梨花に何のメリットもない」
きつい私の言葉にも、梨花は真剣な表情で言い返した。
「でもね、私は一人になりたくないの。本命じゃなくても、私を求めてくれることが嬉しいの。それに、彼だけじゃないの。私だって他にもいるんだから」
なんのマウントだろう。ドヤ顔で言い切る梨花の言葉に理解が追い付かない。
「ナンパされて、7歳も年下の人だけど、本命は要らないって人で、ただ、遊びの関係。それはそれで割り切ってると楽しくて」
初めて聞かされる、もう一人の彼氏ではない存在。
「ねえ、自分だけを好きになってくれる人が欲しいんじゃないの?」
本来、私と梨花が仲良くなったときは、互いに本命の彼氏、結婚できる人を探しているはずだったのに、梨花は寂しさのあまり、違う方向へと向かっていた。
「ちゃんと見つけるよ。見つかるまでの繋ぎでいるだけだし、割り切ってるし」
梨花は自分に言い聞かせるように言っている気がした。
 
そんな、梨花と私は距離を置くようになった。私もなかなか見つからない彼氏に、出会いを諦めて、自分らしく、自分を楽しむ生き方へとシフトチェンジした。
すると不思議なことに、出会い結婚した。
梨花と連絡しなくなって2年がたった頃、久しぶりに会おうと言われて、会うことになった。2年も経ったんだ。私も変わったし、梨花もいい風に変わっているかなと、期待をして会うことにした。
すると、
「いや、今でもずるずる関係続けているよ。本命の女って、自分だけが愛されてるって勘違いしているけど、結局、浮気されてるじゃんって思ったら滑稽に思えてきたし、2番目でも寂しさ埋めれるから。でも、本命も探してるよ。ねえ、なんで結婚できたの? 私のほうが家庭的なのにさ」
「なんでか、分からないのね」
人って、自分が変わりたいと思わないと、何も響かないんだと、私は梨花に何かアドバイスするのも辞めた。うわべだけの寂しさ埋める存在。
それがいる限り無理だよ。
なんて、私はもう教えてあげない。
 
 
 
 
***

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2024-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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