あざとい女子の前でも菩薩女子でいたい!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:春紀 沙和(ライティング・ゼミ9月コース)
「私だってぇ、最近色々あってぇ、しんどいんです……」
そう言われながら、仕事中に後輩の女の子に涙を流されてしまった。みんながいる前で。
彼女が担当する会計業務の締め切りが迫っていて、今の仕事のスピードでは厳しい、会計業務は特に締め切りを守ることが大事だと注意した。締め切りを過ぎてしまうとあなた自身が新たな作業をすることになって大変な思いをすることになるから、とも言った。
執務室が凍り付く。周りの職員達の視線が付き刺さる。
怒鳴っていないのに、注意しただけなのに泣き出すのか、という驚きと戸惑い。顔をクシャクシャにせず、机に雫を綺麗に落としながら泣く姿に感心してしまう。私、あんなに綺麗に泣けない。
周りは「か弱いあの子を泣かした、気のキツイ私が悪い」と思うのだろう。あの子は私のことを般若のようだと思っているのだろう。
私が顔をクシャクシャにして泣きたい。私が同じような仕事の仕方をすれば、先輩や上司から必ず怒鳴られる。私がしんどいと言っても誰も助けてくれない。私もあの子みたいに小柄でか弱くてか細い声を出す女子なら、みんな優しくしてくれるのか。
私も仕事中に泣いたことがあるが必ずトイレに行って泣いた。なぜ皆の前で泣く?
良いよね、あざとい女子って!
思わず心の中で毒づく。
叱られて泣いていると「人前で泣くんじゃない」とよく父親に怒られていた。私はその教えを守ってきたつもり。でも、か弱い彼女のように皆の前で涙を流すことで、むしろ人に優しくされる場面を目の当たりにする度に、自分が損をしているような気がしてくる。
幼いころから体が大きくて、今ではヒールを履くと170cm近い身長になる私。声も低いし、守ってあげたくなるような可愛い系女子じゃない。
自己嫌悪に陥る。
ダークな感情が沸き上がってしまったその日は、仕事のペースも狂ってしまい、普段の倍以上疲れてしまった。
帰りの電車の中で冷静さを取り戻し、この日の出来事を振り返る。
あざとい女子の前でも感情をぶつけず、周りの雑音を気にしないようになりたい。冷静であり、穏やかに自分を保ち続けられるようになりたい。なんなら微笑みを浮かべていそうな菩薩様のような人。
そう。私は、般若ではなく菩薩女子でいたい!
どうすれば良いか、自分でもできそうなことを3つ考えてみた。
一つめは仕事のスキル向上。自分の感覚で仕事をしている部分があったので、作業の手順やポイントを初めて業務を担当する人にとっても分かりやすい説明ができていなかった。慣れた仕事だからこそ一度振り返り、専門用語ばかりの説明になっていないか、どの作業が一番手間で間違えやすいかの確認をしながら、スキマ時間に業務の振り返りやマニュアル作りに取り掛かることにした。
そして、自分が担当する仕事の作業時間短縮。作業時間を何分の一にでも短縮できれば、時間に余裕ができた分、精神的にも余裕を持って接することができる。
去年と比べて残業時間は減ったが、まだまだ伸び代はたくさんある。
二つめは深呼吸する回数を増やす。通っているピラティスの先生に呼吸の浅さを注意されたことがある。人間はイラついたり緊張が高まったりすると呼吸が浅くなる。そこで、仕事中でも深呼吸するようにした。
これは効果抜群だった。職場の例の女の子と上司のイラッとする言動の度に、お腹を膨らませて鼻から息を吸い、お腹を凹ませて口から息を吐いてみた。すると、一呼吸しただけでも心が落ちつくようになった。さらに、眠る前にも布団の中で大きくゆっくり呼吸を繰り返すと寝付きが良くなった。
これは私の中での大発見、オススメ!
最後は自己肯定感を上げる。自己肯定感が上がれば、自分が他人から受けるダメージも少なくなるし、穏やかな気持ちでいられる。実は今年に入ってから、自己肯定感を上げる方法の一つである「ジャーナリング」をずっと続けている。
その日に起こった良いことや感謝したこと、頑張ったことを書いていくというもの。今まではメンタル的に凹むと1週間ぐらい引きずることが多かったが、最近は、ネガティブな気持ちを次の日も引きずることが少なくなってきた。
職場の女の子に泣かれて周りの視線を浴びた後はさすがに調子が狂ったが、次の日には落ち着きを取り戻していた。
今までの私なら「どうして泣かせてしまったのか」「周りの視線が怖い」としばらくクヨクヨ悩んでいたので、ジャーナリングも効果的!
結局は自分自身の心の持ち方。自分自身をどう磨き上げるかにかかっている。それが菩薩女子になるための道。
2ヶ月後、冒頭の女の子が締切日を過ぎて資料を提出してきた。
「あのぉ〜、私ぃ〜おうちでも頑張ったんですけどぉ〜、どうしても間に合わなくってぇ〜」と言われ、菩薩様のように微笑むどころか、またイラッとしてしまった。そんな彼女に対し「◯◯さんは頑張っているんだからー」と注意もせず庇う上司にも呆れて、さらにイラッとしてしまった。
でも、感情に任せて怒らなかった。「はい、分かりました」と言って彼女から一旦離れる。
自席に着くなり「間に合わなかったら、すみません、ってまずは一言謝るでしょ。なんで自分が頑張ったアピールから始めるの?」と心の中で呟きながらも、大きく深呼吸。
私が菩薩女子になるには、まだまだ道のりは長いな。
でも、こうして少しずつ自分を磨いていけば、きっといつか、ちょっとやそっとのことではイライラしない、穏やかで大らかで優しい自分にたどり着けると信じている。
自分を磨き上げていこう。そう何度も言い聞かせる。
菩薩女子への道はまだまだ続く。
***
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