メディアグランプリ

優しさの距離感—外国人と日本人の違いを考える


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:あきちゃん(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

「よし、待ってみよう!」
 
私は、1年分の荷物を入れたスーツケースを持って、地下鉄の階段を降りるときに、
友達に言った。
 
ここは、イギリスのロンドン。私と友達は、南部のカンタベリーに移動するのだ。
荷物は、バカでかくて、めちゃくちゃ重い。
 
しばらく、数分待つと「May I help you?」(お手伝いしましょうか?)と
笑顔できいてきてくれる。すぐに、走ってきてくれた。
「なんて優しいのでしょう」
 
紳士の教育を受けているのであろうか。弱いものに優しいのだ。
 
もちろん、私は、「Oh, it’s so nice. Thank you very much!」(まぁ助かります。ありがとうございます)と言って、お願いをする。
そして、重い荷物を軽々と運んで下さるのだ。
  
驚いたのは、スーツケースを運んだあと、
「It is my pleasure」 (どういたしまして)と言ってくださる。
直訳すると、「あなたの役に立ったことは私の喜びです」
である。「私の喜び」という意味に感動してしまった。
 
それからは、手伝ってほしい時や重い荷物を運ぶときは、足音が聞こえてくると、スーツケースを持つ準備を始める。すぐに、1人や2人が手伝ってくれるのだ。
大きいスーツケースを見た途端、考える間もなく、反射的に手伝ってくれるのだ。
以後、私は、スーツケースを運んだことは1年間、1度もなかった。
夏休みに旅行する時も、ホームスティする時も。
 
そして、1年が過ぎた。
 
やがて、日本に戻る日が来た。
同じスーツケースを持って、成田から地元の駅に向かう。
なんと、誰も手伝ってくれない。
重そうにしていても、サッと人は過ぎ去っていく。
当時の私は、とてもさみしかったのを覚えている。
  
 本当に困っていたら、日本人だって知らない人を助けてくれる。命を助けることももちろん日本人はするはずだ。でも、ちょっと困っているくらいでは、日本人は助けてくれない。「なぜだろう」と考えた。
 
 多くの日本人にとって、知らない人と距離を保つことは、安心感を得る手段なのかもしれない。関わらないほうが、安全なのである。
 知らない人同士で、天気の話はしないのと、似ているのではないか。
もちろん、地域によって、となりの席に座ったご縁で見知らぬ人同士で天気の話をすることもあるが、若い世代はナンパ以外に知らない人との交流は、稀であろう。
 
 息子のケースで考えてみる。息子は自閉症だ。言葉を話すのが苦手、こだわり、暗黙の了解が苦手であり、感覚過敏があるため、声を出すことがある。
 
5歳の頃、違うバスに間違って乗ったので、私は、「違うから、降りてきて」と言った。息子が、バスから降りた瞬間に、自転車にぶつかってしまった。
遠足の日であった。荷物があちこちに飛び散った。息子は、顔面が自転車のかごとぶつかったので、口を切ってしまってはれていた。
私は、驚いて、飛び散った、息子の荷物を集めていた。
 
その時、バス停で人は並んでいたが、「大丈夫ですか」はなく、何事もないように並んでいた。
バス停にいた人々は私たちをちらっと見るだけで、誰も近寄ってこなかった。
 
皆見て見ぬふりであった。
 
面識ある人には、優しいけど、知らない人には関わらない。私は、地面をはって、散らばったものを拾っていることが、恥ずかしい気が逆にした。
日本人の民族性ではあるが、その時も「距離感」を感じて悲しかった。
 
息子が10歳になり、声を出すようになった。
私も、息子の声もれにめげることもあるので、周りが驚くのは理解できる。
 
息子を知らない人は、自分を守るため、電車を並んでいる時に、他の車両に移動する。
または、老いも若きも驚いた目で息子を見る。
時には、白い目に感じて、親の私は、身が縮こまる思いであった。
 
なぜなら、彼らは、日常的に障害者と過ごしたことがないからである。
ほぼ、初めて、近くにいる体験をして、驚いた目をするのである。
そういった経験は、次第に私は、日常になり、「皆、知らないからね。声を出す人は、車で移動するから、会わない。怖がるのも当然だ」と自然に受け入れた。
 
 ある日、息子と電車に乗って、息子はまた大きい声を出していた。
そばに、外国の方達がグループで乗っていた。
申しわけないなと、その方たちを見ると、笑顔で微笑んでくれた。
「え!ニッコリして下さってる」と、とても励まされた。
 
さらに驚いたのは、声を出している息子にも優しいまなざしで、笑顔でニッコリして、息子に、バイバイもしてくれた。
 
日本人だって、お友達のお子さんには、笑顔でほほ笑むであろう。
日本人も外国人も優しい心を持っているのに、なぜ、日本人は、知らない人には、優しくなれないのだろう。
「見知らぬ人との共同体感覚」がないからではないか。
同じクラス、同じ職場、同じ地域、買い物で会う人たち、なら、助け合うであろう。
 
「見知らぬ人同士のつながりを感じる心」は、すぐに身につくものではない。
 
 外国人は、人とすれ違う時に、笑顔である。それは、「あなたに悪いことはしませんので、安心してください」という意味だときいた。
外国人は、「通りすがりの人同士でも助け合う共感の精神」を持っている。
 
 日本では、見知らぬ人に対して優しさを示すことが少ないと感じることがあるかもしれない。しかし、私たちもまた、見知らぬ人と心を通わせ、支え合う力を持っているのだと信じている。
 ある日、息子を連れて駅を降りると、通りすがりの誰かが私たちに微笑みかけてくれた。もしかしたら、同じようなお子さんを持つご家庭なのであろうか。
その小さな微笑みは、私たちにとって大きな希望となり、少しずつ私の心にも変化を与えていた。見知らぬ人同士でも、こうして微笑みを交わし合うことができる。それが、愛の循環の始まりなのだろうと感じる。一歩ずつ、一緒に地球人として助け合い、優しさを分かち合いませんか。

 
 
 
 
***
 
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2024-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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