うちの孫はブラックジャック?
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:前田苺日子(ライティング・ゼミ9月コース)
「いったい私が何をやったというのだろう?」
久しぶりに怒りの感情がふつふつと沸き上がってきた。
最近は、以前ほど感情の起伏が激しいことはなくなっていたのに、今回ばかりは納得のいかないことの連続で怒りを超えて悲しみの感情が湧き出てきた。
いただいていた仕事を急にキャンセルされた。しかも1年間の予定を組んでいた仕事だった。
「大変申し訳ありませんが、この話はなかったことに」というだけの到底納得のいかない短い一文でのキャンセルだった。
仕事は縁もあるから仕方ないかと思うけど、なんだか納得がいかない。なぜなら、今回が初めてではないからだ。受けなければいいものだと思うけど、やってみたいと思って受けた仕事だったから自分のせいでもある。仕方のないこと……だと言い聞かせていたものもある。でも、キャンセルされて、考えれば考えるほど怒りが沸き起こり、それが悲しい気持ちになっていく。
「秋だからなのかな?」
私が学んでいる2000年以上歴史のある中国の伝統医学(以下、中医学)では、秋は肺が活発に動く季節だけど、逆に肺のトラブルも多いので肺を労わるとよいと考える。
そして、なんだか物悲しい気持ちになりやすいのもこの季節だからなのか?普段だったら聞き流せるようなことでも怒りからの悲しい気持ちが湧きおこってしかたがない。
悲しい。悔しい。仕方がないと思えど納得いかない。そんな悶々とした感情のままでいた。
中医学を学ぶものとしては、これしき自分の知りうる力で治すべきなのかと自問自答するも、うまくいかない。
例えば、秋は肺を労わる必要があるから肺を労わる食材を食べたらいいのかと考えて、蓮根・ゆり根・ほたて・松のみ・玉ねぎ・白ごま・梨・牡蠣・白木耳などなどたべてみるもなんだか決定的な効果は見られない。
じゃあ、肺を動かして気を補おうと深い深呼吸をしてみる。ヨガ教室を開催する友達に教えてもらった呼吸法などあれこれやってみるものの、これまたはっきりとした効果がない。
今は落ちていていいものかと思って、いったんあきらめ落ちたままの自分を受け入れることにして様子を見ようと思った。
そんな中、長女から連絡が入り長女の家に行くことになった。
小一時間ある長女の家に行くほど今は元気がないのだよね……と思いながらも、長女の家に行けば孫がいるからと思い、孫と遊びたくて車を走らせ出かけて行った。
孫は3歳と1歳。上の子どもに「いくつ?」と聞くと「3歳5か月」と答える。実に細かい3歳児。
下の子どもに「いくつ?」と聞くと「うーあーうー」というだけで、まあ何の会話にもならない。
でも、「おいで」というと反応して来るようになった下の子を呼んで抱っこする。するとなんだかこれまでのもやもやした思いがなんだか薄れた気がした。
上の子も、下の子も、長いこと抱きしめていても嫌がってどこかに行ってしまう……という事がないので(実にありがたい)羽交い絞めのように抱っこしてみる。羽二重もちのような、ぷにぷにのほっぺに、かっさかさの私のほほを摺り寄せても嫌がることなく、涎を垂らしながら抱かれている。何とも言いがたいかわいさだ。
私はというと……どんどん気持ちが穏やかになっていく。仕事のキャンセルにあたり、大きなショックを受けて怒ったり泣いたりしたが、そんな自分が本当にちっぽけなものだと思うほど、心が穏やかになってきた。
曇りのない真っ白な子どもにふれて、自分の邪心だらけの心がずいぶんすっきりとしてきた。中医学の理論だのなんだのってそれもなんだか恥ずかしい限りだと思った。
今回のお仕事はそもそも気持ちに無理をしていたため、それも含めてうまくいかなかったのかもしれない。すべては自分の中にあるのだと改めて気づかされた。いつも言っていることなのにね。
改めて大きく深呼吸してみる。これまでよりずっと、しっかり気(エネルギー)が入ってきたように感じた。
これこれ……この感覚だよ。
何もしない……無邪気なままの心にふれると、こっちも心があらわれる。心の病気は、本当の医者でも治しにくいものではあるけれど「何もしない」何もしなくて「あーうー」言っているだけで、これだけ落ちていた気持ちをすっきりさせてしまったうちの孫は名医だと断言する。
さて、心が落ち着いて、クリアになった私に起こった次の出来事は、1年契約のお仕事だった。心をクリアにして企画を進めていきましょうか……。
***
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