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MBTI診断をして気づいた上司の価値観


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記事:クルクマ(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 

「しょうがないじゃない、Aさんはおじいちゃんだし、Bさんはまだ子供がちっちゃいから」
私が初めて転勤を言い渡されたとき、部長は私に人選理由をそう告げた。
関西に新設される部署に、本社にある私たちの部署から誰かひとり赴任しなければならない、と言われたとき私は何となく自分だろうと感じていた。
AさんもBさんも今年異動してきたばかりで、一人で仕事を任せられるようになるにはまだ時間が欲しい。少なくともこの部署に2年いる私の方が適任だろう、と。
「(転勤するとしたら)私しかいないと思っていました」
そう言う私に告げられた人選理由は思いもよらないものだった。
仕事が理由の転勤なのに業務遂行能力が全く関係ないなんて思わなかったのだ。
全員転勤前提の総合職で雇用されているのに、同僚の年齢や家庭の事情を「(転勤できなくても)しょうがない」と言いきる上司に困惑してしまった。
聞けば直属の上司は東京本社で勤務するので報連相は全部リモートなのだという。
「新部署での業務内容は?」と聞いても「今の本社での業務の延長」「走りながら考えようと思う」と何とも曖昧な返答。
赴任して真っ先に本社に電話を掛けた。「私、今日から何しましょう?」
 
数ヶ月後、結局本社にいた頃と何も変わらない業務をリモートでこなしながら、納得できない日々を過ごしていた。
これは転勤した意味があったのだろうか。
もし、私が今年異動してきたばかりの人間だったらどうするつもりだったんだろうか。
もし、同僚が定年間近や産休復帰明けではなかったら自分は転勤しなくて済んだのだろうか。
個人の事情への配慮が業務遂行能力より優先されているのは仕事と言えるのか。
皆が当然だと思っている配慮に納得できない自分は非社会的なのではないか。
上司が本社から面談に来る度に新部署設立の経緯や目的をしつこく尋ねた。
しかし返ってくる言葉は「わかるだろう」「色々」そんな答えばかりだった。
 
全ての謎が解けた(?)のは、MBTI診断というものを知ってからだった。
人間の性格を4つの指標から16パターンに分けたもので、診断自体はインターネットで無料でできる。
設問内容やその日の気分によって結果は若干異なるが、私の場合はINTP(論理学者)というタイプが最も近いらしい。
韓国で流行っている性格診断らしく、KPOP好きの人から日本に広まったようだ。
そんな事情もあってかインスタグラムには各性格パターンの特徴や違いを投稿したものであふれかえっていた。
最初は論理学者タイプに関する投稿を読み漁っていた私も、徐々に他のタイプの詳細や指標の意味、性格タイプの比較などの投稿にも目を通すようになった。
その中で「判断の仕方」という指標に関する投稿があった。
判断の仕方には思考型と感情型があり、何かを判断するとき思考型は客観性や合理性を、感情型は協調性や共感性を重視する。
例えば友達が仕事で失敗した話をしたとき、「原因は何だったの?」と解決しようとするのが思考型、「それはつらかったね」と共感してあげるのが感情型。
突然、すとんと腹落ちした気がした。
自分は思考型の傾向が強い分、人選の合理性や部署の新設で何を解決するのかにこだわってしまう。それが当たり前だと思っていた。でも少なくとも私の上司たちはそうではないのではないか。
彼らかはもしかしたら感情型に近い判断をしていて、年齢や子供のような共感できる事情で判断することが当然だと思っているのではないか。きっと新部署設立の理由や業務内容に疑問を感じているのは私だけで、彼らはそもそも説明の必要さえ感じていないかもしれない。むしろ協調性を是とする彼らから見れば、異動の理由にこだわる私は異常な人なのかもしれない。
そしてそれはどちらが善でどちらが悪ではなくただの違いなのだ。
筋道立てて考えることが普通だと思ってきた。多少不満があっても合理的であれば従うのが「当然」だと思ってきた。
でも隣にいる人は全く違う「当然」を生きているのだ。
合理的に説明できることより共感できること、客観性の有無よりも「和をもって貴しとなす」が重要な人もいるのだ。
少し上司たちの考えが分かった気がした。
一度腑に落ちると上司との面談でも納得することをあきらめることができた。
その代わり部署を異動できるようあらゆる手を尽くし、無事に叶えることができた。
 
MBTIの診断結果自体は自己申告制なこともあり、科学的根拠に疑問符が付くものらしい。
それでも今までぼんやりとしか認識していなかった価値観の違いを改めて認識し、違いを認め合う手段としてはアリなのではないかと思った。
それは決して、相手の価値観に合わせるというだけでなく違いを認識したうえで心地よい距離感を維持するという意味合いも含めて。

 
 
 
 
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2024-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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