でも大丈夫!
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:前田苺日子(ライティングゼミ・9月コース)
「もしもし……みかげさんがまだ登校していませんがどうかされましたか?」
なぜ? どうして? いつもこのタイミングで電話がかかってくるのだろうか?
このタイミングとは、私が東京に出張で出てきて、東京駅で新幹線を降りたそのタイミングだ。
「え? 登校していないですか? 私が仕事に出るときに起こしました。
本人も、『わかった。ちゃんと行くよ』って言っていましたけど、まだ登校していないですか?」
あーやっぱり今日も行っていないのか……と思うと同時に、毎回同じ白々しい母親の発言に付き合ってくれる先生に感謝する。
毎回同じ新幹線に乗っているわけではないのに、必ずと言っていいほど東京駅に降りたタイミングで電話がかかってくる。
「見えてますか?」
思わず聞きたくなるほどだけど、先生も言わないだけできっとこう思っている。
「また、このパターンか……」
次女は、春から公立高校に進学したものの、中学生の頃はいわゆる「不登校児」だった。
何が嫌って勉強が嫌い。ただそれだけ……。
それだけ? と思うけど、本人からしたら「100点取るために勉強頑張るなんてことは、それこそバカのすることだ! 勉強が嫌いなんだから、勉強をするために学校に行くのはバカみたい!」
そして、学校に行かない。
病気があるわけでも、友達とトラブルがあるわけでもない。
「勉強が大嫌いだから、勉強をするために学校には行きたくない」のだ。
うちは母子家庭で、私が仕事をしないと生活が成り立たないから、行きたくないという子を無理やり学校に連れていくとか、学校に行かない娘がいるために、家庭に残るといったエネルギーの使い方はしなかった。義務教育中はかなり自由度の高い「不登校ライフ」を送っていた娘だった。
それが……
高校に進学したとたん通用しないことになり本人もこんなはずじゃなかったと思っているだろう。
実際に、高校に入ってすぐぐらいに「ねえお母さん知っていた? 高校は学校に行かないと単位がもらえなくて進級できないらしいよ。留年はさすがに嫌だな」
「えーっと、お母さんは高校受験の際に言いましたよ。だから、通うのに楽な家から1番近い学校を選んだんでしょ?」
本人は、聞いていない。
あとから分かった話だけれど、娘のレベルでは相当な努力をしないと受からない高校を、家から近いからというだけで選んだのだ。そして、神様のいたずらとしか思えないような「合格」の二文字を手に入れてしまった。
中学時代の娘は、勉強が嫌いで学校に行っていないという事以外は、びっくりするほど普通の中学生で、学校に行けば友達と遊んでくるし、部活もしてくる。友達も多く信頼もあった方だと思う。
先生もこんなパターンの不登校児は珍しく、親の対応もびっくりするほどゆるいものだと思っていたであろう。今から10年以上前の話だ。
何度も言うことになるけれど、「勉強が嫌いで学校に行っていない」以外は普通の中学生。
いろいろな物事を客観的に見て、一般的に言う「正しいこと」を見極めることができ、みんなからの信頼も厚かった。
先生も、「みかげさんが、みんなでやろう!」というと、男女問わずついていっていました。
この年ごろの子どもたちは「面倒なこと」「汚いこと」などやりたがらないものですが、みんなが嫌うようなことでも、それが正しいと思ったら……やるべきだと思ったら……彼女は動くので、こちらとしては助かることも多かったです。機転はきくし、物事を客観的に見て判断できるし、クラスの中でも信頼は厚かったですね。
ただ……勉強は本当に嫌いでしたけどね。
先生! それは褒めてますか? けなしていますか? といいたかったが、そんな「不登校児生活」が、一変しての、自分が正しいと思ってもそれはこの高校では通用しないことなんだ! と思い知らされたわけだった。
みんながよく私に聞いてきたのは「なんでその理由で学校行かないことを許したの?」
無理に行かせても本人のためにならないと思ったし、行かせるために機嫌をとったり、なんだかんだが面倒だった。何より、学校の勉強は嫌いだけど、頭が悪いのではなく、知恵もあるし、頭の回転も早かった。だから、彼女の中で嫌いな勉強をするために学校に行くことは無駄だというそんな考え方を変えさせてまで無理に行かせる必要性を感じず、本人にとって必要になったら行くだろうと思った。
たぶん……一般的な親だったら、ここが我慢できないのだと思った。「本人にとって必要になったら行く」行く日が来るのか? そうだよね。心配で仕方ないだろうと思う。私だって絶対的な確信があって不登校を許していたわけではない。周りだっていちいちうるさかった。
学校に行くことは絶対ではないし、学校でしか学べないものもないと思っていた。学校で学ぶことを、ほかで学べばいいだけのこと。
その当時は、それは家庭というコミュニティがしっかりしていたらいいのだと思っていた。生きていくことに必要なこと、守らなければならないルールを親子で学び育てた気がする。
さて、高校に入学して中学とは違うルールの存在に気づいた娘はどうしたかというと、登校時に車で送って行ってほしいと言い出した。歩いても10分ほどの距離だったけど「お母さんにとってもしっかり門まで送れば安心でしょ?」という、なんとも自分勝手な理由をつけていたが、それで行ってくれるのであればまあいいかという思いもあり1つ条件を付けた。
「お母さんは仕事に行かなければならない。あなたを送っていくためには7時45分までに家を出ないと仕事に遅刻するから、7時45分きっかりに車を出せるよう準備をするのであれば送って行ってあげる。1分でも遅れたら送らないからね」
「えー!!!!」といったものの、その日から娘はきっちり準備をして後部座席に座っていた。
何が成功のカギだったのかはわからないが、無事に高校を卒業し、2年ほど好き勝手をしながらフリーター生活の後、今は結構なお給料をいただきながら仕事をして、悠々自適な一人暮らしをしている。最初は外食も多かったものの、お金がかかるという事で、最近は自炊し、お弁当も作って持って行っている。生きていく力を学ぶのは学校だけではないとつくづく思う今日この頃である。
不登校だけど……でも大丈夫。
***
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