誰かの心を震わせる美しさとは
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:春紀 沙和(ライティング・ゼミ9月コース)
「私、秘めフォト初めて参加するんです。今、好きな人がいて。真剣なお付き合いをする前に、この手術の痕を写真で見てもらおうと思って」
撮影用のランジェリーに着替えながら、彼女は打ち明ける。
天狼院書店の「秘めフォト」は、自分史上最高にSEXYな写真を撮ってもらう女性限定のサービス。
「カメラマンの三浦さんは、いつも綺麗でカッコ良い写真を撮ってくださるんですよ!」
何回も秘めフォトに参加している私はそう答えた。
あたたかな朝の光が、白を基調としたスタジオに優しく降り注ぐ。まさに「白の世界」で、秘めフォト撮影が始まる。
彼女の穏やかで柔らかな表情を、自然光が包み込む。神々しくて、でも時折見せる妖艶な表情にドキッとさせられる。手術の痕など、全く気にならない。美しいという言葉も陳腐に思えてしまう程、その姿に終始心を奪われる。
彼女の人生を勝手に想像してしまう。
病気を宣告された時。お相手に傷痕を見せると決めた時。今日の撮影に臨む時。
神々しくも妖艶な美しさが際立ち、涙が込み上がってきそうになる。
「やばい、涙が出そう。今撮影中なのに。我慢、我慢!」
その美しさを心の底から讃えるために、今にもこぼれそうな涙を押し込めるために、大きな拍手を送った。
他の参加者の方達の妖艶な姿も眼福だったが、あの方の表情や佇まいが、撮影後も頭からずっと離れない。
余韻に浸りながらの帰り道、急に思い出したのは、ちょうど1年前、秘めフォト展に行った時のこと。
渋谷のど真ん中にある本屋さんに、埋め尽くされたセクシーな姿の女性達の写真達。曲線美や筋肉美にただただ見惚れる。繊細なレースや煌びやかな刺繍やアップリケが施された大胆なランジェリーにも心奪われる。
でも一つ一つの作品を観ているうちに、力強さや生命力といった鬼気迫る凄みを感じ取った。
身体が、心が、ゾクゾクしてくる。
写真に映るセクシーな女性達に「あなたにもこんな凄み出せる?」
と問われているようだった。
それは、涙が出そうになった今日の撮影の感情と似ていた。心奪われ、揺さぶられ、頭からずっと離れない。でも、なぜこんな感情になったのか、当時の私には分からなかった。
それからまもなくして、「絶対麗度ビューティーラボ」が始まった。「絶対麗度」とは、他人が決めた相対的な美しさではなく、自分が決めた絶対的な美しさ。
1年間毎月秘めフォトの撮影に参加し、それぞれが決めた絶対麗度を手に入れるために日々努力する。
美と向き合う1年間は楽しそう、と思い参加を決めたが、ここに参加すれば、秘めフォト展で抱いた感情の理由が分かるはず、とも思っていた。
絶対麗度ラボを始める前の私は、鍛え上げたボディーとトラブルのない肌、ツヤのある髪、そして撮影映えするメイクで理想の写真が撮れると思っていた。
他人が羨むような見た目になれれば、自信がついて良い表情になって表れてくる。素人でも、何度か撮影されていれば、カメラ慣れして良い写真も出てくるはず、とも考えていた。
今思えば、本当に浅はかな考え。
でも、ラボに参加し、日々自分と向き合うことで、痛感した。
人の心を揺さぶる美しさは、外面を整えるだけでは完成しないということを。
ラボの参加者は、年齢も職業もバックボーンも多種多様。私のような独身の方もいれば、パートナーがいて、子育てに奮闘している方もいる。
そんな私達が共通しているのは、辛くて苦しい過去を抱えていても、現在(いま)を懸命に生きているということ。
愛した人との辛い別れや裏切り、離婚を経験した方、大病を患った方、病気やメンタル不調で休職や離職を経験した方、見た目にコンプレックスを抱えながら長年生きてきた方。
私も幼い頃から容姿に対する強いコンプレックスを抱き、数年前に仕事でうつ状態になってから、何年も睡眠薬を服用している。何より、自信がなくてずっと自分のことが好きになれなかった。
ただ、そんな自分の経験など霞むほど、辛くて悲しい経験や思いを抱えている方もたくさんいる。
私達は、色々な過去や思いを抱え撮影に臨んでいる。
全ての希望を失いそうになり、全てを投げ出したくなるほど、辛く悲しい出来事があっても。
そして、過去を乗り越えるために、幸せで笑顔あふれる未来を築くために、今を一生懸命もがきながら生きている。
でも、撮影中はそんな悲しみや苦労なんて、誰ひとり感じさせない。
やれ、スレンダーだ、ふくよかだの。シワの数や肌ツヤ、目が一重、二重だの。髪が長い、短いだの。顔のパーツが整っているかどうか。
そんなものはどうでも良いも思える程。
何より、ひとりひとりの表情や、その裸体が、美しい。
みんな強くて、みんなセクシー。
まるで、辛くて悲しい経験を、全て美しさに昇華しているかのように。
目の前の理不尽なものに負けるものか、そんな力強さが込められている時もあれば、心から愛する人にしか見せないような優しい、妖艶さが込められている時もある。
美しくてセクシーな写真からは想像できないような人生、そして、ひとりひとりの思いや決意が、すべての写真に秘められている。
これこそが、1年前の大秘めフォト展で身震いする程、心揺さぶられた理由だったんだ!
再び、冒頭の女性のことを思い出す。
お相手の方が傷跡を含めて受け入れてくれたら良いのに。
いや、大丈夫。秘めフォトの写真を見れば、もっと彼女に夢中になる。
人生は、理不尽なこと、やり場のない怒りや悲しみを抱えることばかり。それでも限りある命を懸命に生きていく。
どんな状況であっても、美しくあろうとする。
だからこそ、セクシーさと力強さ、そして美しさに深みが増す。
今年も大秘めフォト展の季節が来る。今年もみんなの写真を見て、ゾクゾクするのだろう。
1年前はセクシーな写真を見て、たじろいでいるばかりだったが、今の私なら自信を持ってこう言える。
「私自身の写真で誰かを身震いさせられるかどうかは分からない。でも、私もみんなも、どんな状況であっても美しくあろうとしている。秘めフォトの写真は、そんな私達の、一番綺麗な瞬間を切り取るものだから」
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00■天狼院書店「湘南天狼院」
〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00