インプロで学ぶアドリブコミュニケーションの真髄
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:村人F(ライティング・ゼミ9月コース)
演劇は台本通りにやるものだと私含め多くの人は考えているだろう。
セリフと動作を暗記して、決められた動きを完璧にこなす。
そういうイメージだと思う。
しかし演劇業界ではその真逆、全部アドリブで行う練習があるらしい。
インプロという即興演劇だ。
ルールは決められているが、何を言うかはすべて自由である。
だから相手の言った文言に反応して、その場でやることを考えなくてはならない。
台本無しのスリリングな手法である。
これを天狼院書店の講座で体験してみた。
やってみて思ったのは「台本がないのは、なんとありがたい」ということだ。
私はそもそも記憶力が悪い。
だから長いセリフをノーミスで言うなんて高度なことはできないとずっと思っていた。
というか演劇ができないと思っている人の大半はそうではないだろうか。
しかしインプロでは全部アドリブでいいのである。
だから、そもそも言い間違いという概念がない。
全てが正解になる。
セリフを噛んだとか、そういうことを気にしなくていい。
なんと精神安定によい手法だろう。
このハードルの低さゆえに「やってみよう」と私も思えたわけである。
そして実際メチャクチャ楽しかった。
ただ逆に台本があった方が安心するタイプの人もいるだろう。
「即興で言うことなんて思いつかない!」
これもよくわかる不安である。
確かに言葉がポンポン出てくるかどうか心配になる。
だが「言うことが思いつかない」理由を考えてみると、演劇に対する先入観が邪魔しているように思える。
それはお客様視点、見る側の視点である。
私たちにとって演劇は、基本は人様に見せるものだろう。
小学校の学芸会で練習してみんなの前で演じる。
劇団四季のように金を払って本格的なものを見に行く。
つまり誰かに披露するものなのである。
そうなると「言うことが思いつかない」と不安になる理由が見えてくる。
「面白いかわからない」からだ。
何かが頭には浮かぶ。
ただそれを本当に言っていいかわからない。
スベって残念な空気になってしまうだろうか。
そういう不安がどうしても出てしまうからだ。
だからこそアドリブが怖くなる。
そうなると台本できっちり決められていた方が確かに安心するだろう。
だが同時にこれが「台本を覚えないと演劇はできない」というハードルになっているのは事実だろう。
実際、私もこの理由で演じる側は無理だと思っていた。
しかし実際にインプロのワークショップを体験して知ったのは、お客様に見せない演劇もあるということだ。
本講座の目的はコミュニケーションである。
つまり演じた内容がショーとして面白かったかは評価基準ではない。
やってる側が楽しければそれでいいのである。
こう書いたところで「何か言ってスベったらやっている方も楽しめないだろう」
「相手を楽しませることもそんな瞬時に出てこない」という反論を思いついてしまった。
この文章をアドリブで書いたことがバレてしまう失態だ。
ただインプロで言いたいことは「スベってなにが悪い」という点もあると思うのだ。
人間なのだからミスをするのも当たり前である。
そのため私のように何か発言した途端、周囲の時が完全に止まってしまった失敗をすることもある。
しかしその失敗を恐れて自己嫌悪に陥る必要はないとインプロは教えてくれる。
実際、スベリ倒しても何とかなるのだ。
なにせ相手も「何かを返さないと」と思いながら聞いてくれる。
つまりコミュニケーションにおける最大の恐怖、無視が起こらないのだ。
だから変な空気になっても変な空気だからこそ出てくる文言がちゃんと戻ってくる。
これほど安心できる環境はないだろう。
そして、この中で生まれたアドリブ空間も、なかなかカオスで乙なモノである。
「今から何をする?」と聞かれて「空を飛びましょう」と返していい場面なんてインプロしかないだろう。
そう思って実際にやってみたら互いに空を飛ぶイメージが違って、謎空間が生まれるワクワク体験になった。
つまりインプロが教えてくれる即興の真髄は、相手の言うことにちゃんと反応する意識さえあれば、十分に面白くなるということだ。
すなわちコミュニケーションの第一歩もそうなのだ。
「面白いことを言わないと」と緊張してしまい何もアクションしないのではなく、まず何かを言ってみる。
相手の発言に対して自分なりに反応をしてみる。
その連鎖こそが楽しい会話であり、日常を演劇化する秘訣なのである。
そもそも人生に台本がないのだから、即興で全部やってもいい。
この楽しさが十分味わえるワークショップだった。
インプロ、もう一度体験したい。
***
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