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未来のトップランナーたちと共に ~箱根駅伝予選会の一日~

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記事:堀越ひでき(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
先日、箱根駅伝の予選会があった。
予選会は、昭和記念公園に隣接する自衛隊の基地の中をスタートして、立川市の市街地を走り抜け、昭和記念公園の北側(砂川口方面)から昭和記念公園に入って、フィニッシュとなる。
僕は、昭和記念公園の北側に住んでいるから、行ってみることにした。
 
スタートしたのを確認してから、コース終盤である砂川五差路に向かって走った。
砂川五差路というのは、名前のとおり、道が五差路の交差点になっているところ。その両端は、すでに警備員の方々が交通整理の準備をしておられた。
ちらほらと応援の学生たちが見える。
 
軽く汗をかいた僕は、五差路近くの歩道脇に場所を確保し、スマホで状況を確認した。
ここまでランナーが来るにはまだ10分以上かかりそうだ。さらにスマホからは、気温が高くランナーにとっては過酷な条件と紹介された。
(どうりで、汗もかくわけだ)
この気温を前から想定していた大学があれば、有利に働くだろう。だけど、それは一種の賭けだから、「暑くなるかもしれない」程度での調整が妥当なのかもしれない。
そんなエセ解説者まがいのことを想像して悦に浸っていると、明らかに沿道の人口が増えた。ジャージ姿の若い子の集団が、思い思いの場所に陣取りだした。自分の大学の応援なんだろうけど、なんだか明るい。予選会をイベントとして楽しんでいるような軽さがあって、歳の差を感じ、微かな緊張感を覚えた。
 
少し前の世代なら、「近頃の若い者は……」と叱りとばして自分を守っていたのかもしれないけど、今を生きる僕には、そんな気持ちは芽生えてこない。ただ、軽く明るい雰囲気の中で、自分のところだけライトが当たっていないような感じで佇んでいた。といって悪い雰囲気でもない。なにせ学生の大会なのだから、学生が主役なのだから。
 
そんな感じで、またまた理屈っぽく、想像をこねくり回していると、右手の方から新しいざわめきが起きてきた。白バイも来た。
 
何かを期待して待っている時の人間というのは、思考が空白となる。たぶん沿道で待つ人の大方の思考は空白となっていたんじゃないか。少なくとも僕は空白となった。
 
その空白の向こうから、選手が来た。静かに駆ける外国人選手に、周囲の学生たちの声援が一斉に起こった。
僕は、拍手を送りながら選手を見た、選手の呼吸は、普通だし汗もほとんどないようだし、目にも周囲を窺う余裕が感じられる。
 
かれこれ15キロは走っているだろうに、呼吸の乱れすらないということに驚トップランナーのトップランナーたる実力を感じた。
 
次に日本人選手がやってきた。さらに声援が大きくなる。彼も外国人選手ほどではないけど、まだ余裕がうかがえた。さすがだ。
 
そこから、少し間が空いてから、長い集団がやって来た。走る選手の足音と沿道の声援で、場の熱量が上がるのを感じ、僕も「がんばれー」っと声を出していた。
 
片側2車線の道路いっぱい埋め尽くすように選手が走っていく。
 
予選会を走る選手は何人いるのだろう? 途切れることなく続く選手たちに、まだ続くのかと思った。
 
選手たちの疲労度は、後ろの選手になればなるほど、蓄積しているようだ。彼らの呼吸は乱れ、明らかにアゴがあがり苦しい走り方になっている選手が多くなってきた。選手の足音も、心なしか大きくなっている。
 
この頃になると、声援を送っていた学生も、移動し始めた。応援が終わって帰途に就く学生と、結果を確認しにゴールへ向かう学生とに分かれているようだ。
 
そんな声援がまばらとなる中、選手たちは全力で走っていく。
 
声援も少なくなってきて、僕ひとりで声援を送っているんじゃないかと、心細さを感じながら、走る選手に拍手と、エールを送り続けた。
 
先頭集団が通りすぎてから、どれくらい時間が経ったんだろうか? 
長いようで短い時間が過ぎて、最後のランナーが白バイを従えてやってきた。
 
僕も市民ランナーだったから、最終走者の悲哀はわかる。アゴの上がった選手に最後のエールを送った。
 
そして、僕は走り出した。
 
過酷でありつつ、声援の華やかさに満たされた沿道を後に。
走りながら思った。
 
僕は、この予選会を単に箱根駅伝の予選会でしかないと思っていた。
でも実際は、必死な選手と、明るく声援を送る学生たちのパワーを濃密に感じられる場だった。
 
願わくば、予選を勝ち抜いた選手の皆さんには、箱根駅伝で活躍してもらいたい。
 
そして、未来のトップランナーが生まれることを期待したい。
 
そんな明るい未来を抱きながら、僕は額の汗をぬぐった。
 
 
 
 
***

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2024-11-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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