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キラキラした子どもたちを見て、泣いていた日のこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:関谷陽子(ライティング・ゼミ9月コース)

 
 

外で無邪気に遊んでいる小学生を見ると、涙が溢れる。
もしくは、制服で歩いている学生を見るだけで、涙が溢れる。
どちらも、普段そこかしこに溢れている、ただの日常風景。だが、そんな日常に触れるたびに、心がえぐられるような、突き刺されるような、形容しがたいつらさや切なさに苛まれる母たちがいる。
 
 
それはおそらく、「日常」をなんらかの理由で送ることが出来なくなった子どもがいる母親の姿だ。そして、その中の姿のひとつに、「不登校」がある。
 
 
私もかつて、そんな母たちの1人だった。小学2年生で完全不登校になった次男は、学校どころか外に出ることも出来なくなった。小学2年生といえば、まだまだ無邪気な年頃だ。次男もそうなる直前までは、とにかく友達と一緒に、無邪気に遊んでいた。家の中でゲームをすることも好きだったけれど、外で友達と鬼ごっこをしたり、サッカーをしたりすることも大好きだった。
 
 
いつもと変わらないはずの風景。その中に、次男の姿だけがない。
 
 
理由は分からない。8年経った今でも分からない。ただおそらく、「学校」という空間が合わないのだろう。
考えてみれば、私も子どもの頃、学校が苦手だった。私の場合は、あまり友達関係がよくなかったせいもあったと思うが、それがうまくいっている時も、学校という場所が苦手だった。
おそらく、あの独特の雰囲気が受け付けないのだと思う。
 
 
大人になれば、自分に合った職業につくことができる。サラリーマン、公務員、フリーランスなど。もちろん全て自分の希望通りの職業を選ぶことが出来ないが、フリーランスに魅力を感じなければどこかに就職すれば良いし、就職先の雰囲気にどうも馴染めなければ、変更することだってできる。
 
でも、子どもの時は、「学校」という場所が合わなければ、その先が見えない。残念だけれど、それが日本の現状だ。
 
 
学校が合わない。学校にいけない。みんな行っているのに、出来ているのに、自分には出来ない。そうやって、毎日「できない」を突きつけられた子どもたちは、次第に心のエネルギーを失っていく。
その結果、外にすら出られなくなったり、無気力になったりする。
 
そんな我が子をみていると、外で見かける「日常的な」子どもの姿に、胸が締め付けられるようになる。私もそうだった。
どうして次男は、この中にいないんだろう。この子たちと次男と、一体なにが違うんだろう。まだまだ無邪気で、遊ぶことが大好きな歳だったはずだ。にも関わらず、次男は家の中で、暗い顔をして過ごしている。
かけがえのない子ども時代を、どうして楽しいことが中心の世界で過ごさせてあげることができないんだろう。私の育て方、関わり方が悪かったんだろうか。一体どうすれば良かったんだろうか。
 
一瞬でそんな思いが脳内をめぐり、溢れる思いは涙となって溢れ出す。
 
ただそのうちにふと思った。苦しくなるのも、切なくなるのも、よその子たちが、みんなキラキラと輝いているように感じるからだ。こんなキラキラした子ども時代を過ごして欲しかった。楽しい子ども時代を過ごして欲しかった。キラキラとしていて欲しかった。
 
 
でもある日、こう思った。うちの次男は、キラキラしていないだろうか、と。
 
 
確かに、「普通の」子ども時代ではないかもしれない。でも、今は毎日、自分が過ごしたいお家の中で、安心に囲まれて過ごしている。好きなゲームをしたり、漫画を読んだり、アニメを見たりしている。
母である私とべったり一緒だが、一緒に話をしたり、ゲームをしたり。時々、一緒に簡単なお菓子を作ることもある。
そういうことをしなくても、美味しいねと言いながら、おやつを食べる日々。
 
 
そんな次男は、キラキラしているのではないか、と。
 
外で会う子たちほど、強烈な光ではないかもしれない。でも、ささやかだけれど確実に、次男はキラキラと瞬いているのではないか。
普通ではないかもしれないけれど、逆に言えば、他の子が過ごせないような、かけがえのない時間を、次男は過ごすことが出来ているのではないか。
 
 
そんな思いが芽生えてから、家の中で過ごしている次男のことが、少しだけ輝いて見えるようになった。そして、外で遊ぶ子どもたちの姿が、以前ほどは眩しく見えなくなった。
 
結局、比べるから苦しくなるのだ。
 
そもそも、キラキラしていてほしいなんて、私の一方的な押し付けだ。キラキラした子ども時代を過ごさなければならないなんて、しかも親の期待する「キラキラ」の姿を見せないといけないなんて、子どもからすれば重たいだろう。
その時、その瞬間を精一杯生きているだけで、その子の魂はキラキラしている。いや、精一杯じゃない日すら、あっていいはずだ。
 
そんな思いが芽生えてから、次第によその子を見ても、苦しさも切なさも感じなくなった。もちろん、単純に羨ましいと思うことはある。でも、次男と比較して、勝手に落ち込むようなことはなくなった。
 
 
とはいえ、今なお同じ気持ちを抱え、「普通の子」を見ると涙が出てしまう、という母たちの気持ちも、痛いほど分かる。分かるからこそ、伝えたいことがある。
 
あなたのお子さんは、その子なりの光を放っていませんか、と。

 
 
 
 
***

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2024-11-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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