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日本酒を謳う!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:みちこ(ライティング・ゼミ11月コース)

 
 
帰りのマイクロバスの中では、心地よい振動にみんな頭を揺らして眠っている。
昼間から美味しい食事と日本酒をあんなにいただいたのだから無理もない。
至福の振り子たちだ。
 
今日は早朝から、日本酒の仕込みツアーに参加した。
 
日本酒造りの講義と酒蔵見学、そして工程のうちの一部を体験させてもらう。
 
あつあつに蒸しあがった酒米が大きな板にどどっと投げ入まれ、それを素手で広げて冷ます。
 
「あつあつっ!」
 
少しつまんで手のひらで押し固め、「ひねり餅」を作り、ほおばる。
杜氏さんが酒米の蒸し具合を確かめる方法だそうだ。
その気になって「ずいぶん硬いね」「旨味があるよね」とつぶやき合う。
 
お米が冷めたらもろみのタンクに入れて、一人ずつ楷(かい)で混ぜていく。
みんなご満悦の笑顔。
約一か月後に日本酒が出来上がる。
 
体験後は、その蔵で醸した数種類の日本酒を食事とともにいただく。
 
初めましての人も、帰る頃にはきまって学園祭の終わりのように、名残惜しげに顔を見合わせ、1か月後のお披露目会での再会を約束する。
とても楽しくて、毎年参加させてもらい今回で3回目になる。
 
私は日本酒が好きだ。
 
10年程前、酒蔵直営の日本酒バーに足を踏み入れて、初めて日本酒を美味しいと思った。
 
幼い頃、お正月の宴で、呑べえのおじさんたちが湯気の上がったアルコール臭の強い日本酒を飲みながら、ゆでダコのような顔でしゃべりまくり、ときには怒鳴りだすこともあった。
下戸だった私の両親は、ゆでダコおじさんたちのカオスに呆れ果て、私たちを連れて早々に退散したものだ。
 
その刷り込みがあったので、日本酒には近づかなかった。
 
20代の初め頃は吟醸酒ブーム真っただ中で、もちろん飲んでみたことはあるが、当時、淡麗辛口と言われた日本酒を美味しいとは思えなかった。
 
ところが、である。
いつの間に日本酒はこんな美味しくなったのか。
私が年齢を重ねたから?
 
フルーティーで華やかな香り、甘味も酸味も絶妙に顔を出し合い、飲みやすくて旨い。
私の中の「日本酒」の固定概念が、カミナリに打たれて砕け散った。
 
友人が、どこそこの蔵のお酒はこだわりがあるとか、あのお酒はめったに出回らないとか話し始める。興味のないときは耳を素通りしていた話だ。
 
なになに、もっとほかにも美味しい日本酒があるの?
 
めったに湧かない探求心がむくむくと湧いてきた。
 
 
それからにわかに情報をかき集めたところ、やはり日本酒は変革を遂げていたらしい。
 
昔ながらの経営方法を続けていた中小規模の酒蔵が衰退の一途をたどっていたところ、次世代の蔵元たちが現状を打破するために一念発起、日本酒を飲まなかった人にも親しまれるような、今までにない酒質のお酒を目指して研究し、開発し、全国そして海外に広めていったという。
 
管理過程でのデータを取り、数値化し、設備を整え、繊細な酒質を常に一定に保つ製法を確立した蔵、一方で、受け継がれてきた製法を違うアプローチで進化させた蔵などなど、どの蔵にもそれぞれのストーリーが生まれ、
そして多くの蔵元がその成果をお互いに共有・教授し合う関係を築き、
ライバルでありながら、切磋琢磨して日本酒業界の向上を目指していることを知った。
 
 
さらなる深みを見たくなった私は、文化センターで開催されている日本酒講座に参加することにした。
 
そこは、素性も仕事も全く違う、ただ、ただ、日本酒愛に溢れる人たちが集う空間だった。
 
講座の中でもみなが楽しみなのは、何種類かの日本酒のテイスティングと、先生が用意してくれるちょっとしたお料理とのペアリングである。
 
ペアリングでは、純米大吟醸と大福を合わせるという常識破りの美味に出会えたし、
テイスティングでは、さっきまで居眠りしていた高齢のおじいちゃんがいきなり覚醒し、香りや味わいを具体的な比喩をもって語り尽くすという素晴らしい光景を見た。
 
面白すぎてやめられない。
 
最近では海外でも日本酒人気が高いようで、海外向けに醸された、酸味の立った白ワインのような日本酒はこれまた美味しかった。
 
ほかにも、酒米をほとんど削っていないのに、麹菌と酵母の組み合わせによってフルーティーかつコクのあるテイストに仕上がった純米酒や、レモンスカッシュのような生酛造りに出会ったりした。
 
個性豊かな日本酒たちをいただくとき、そのストーリーに想いを馳せ、私はさながらオリンピックを見ているような、参加者全員に力いっぱい拍手送りたいような、深い感動に包まれる。
 
すっかり虜である。
 
ちなみに私はあまりお酒が強くなく、経験上、日本酒の限界値は2合だと分かっている。
 
最近は、多くの種類を取りそろえ少しずつ飲ませてくれるお店も多いので、アルコール弱者の横好きにも優しい世界だ。
 
とはいえ、健康でなければ楽しめないので、自分の肝臓とうまくお付き合いしながら、これからも日本酒ライフを楽しみながら、仲間と出会いたい。
 
私のように日本酒に興味のなかった人、一度こちらの世界に足を踏み入れてみませんか。
 
 
 
 
***

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2024-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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