「離婚、おめでとうございます!!」
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記事:ERI
「離婚、おめでとうございます!! 」
やっと離婚が成立した日、弁護士さんにそう言われた。とっさに「ありがとうございます」 と答えたが、何だかしっくりしなかった。別におめでたくはない。特に嬉しいとも感じなかった。「やれやれ、やっとか」 という気持ちと、終わる時はこんなにあっけないものなのか、と心が付いていかない感覚があった。それに、これからしなくてはいけない膨大な数の変更手続きを考えると逆に気が重くなるくらいだった。友達にはやはりおめでとうと言われ、やっぱりしっくりこなかった。父に電話で報告したら「ああそうか、やっと終わったか。おめでとうとは言わないな。ご苦労さまでした 」と言われた。そうだこの言葉が欲しかったんだ、とやっと違和感が取れた。この言葉を最初に父から聞けたこともよけいに嬉しかった。
この離婚は私が望み、1年ほどかけて本気で取り組んだ人生の一大プロジェクトだった。人生の先輩達から離婚は本当に大変! と聞いていたが、私は特に大変とは思わなかった。むしろ離婚を決断するまでの長い期間の方がよっぽど大変だった。一度覚悟が決まれば、あとは頭を使って最大限に危機感を働かせ、十分に計画したことを淡々と進め、相手の決断を辛抱強く待つ。ただプロジェクトを進めるために一生懸命に行動しただけで、そこに感情はなかった。離婚が成立したいまはなんだかちょっと「新しい自分」になった気分で清々しいという言葉が今の気持ちには合っている。父はそんな私の気持ちがわかっているかのように、旧姓に戻る私を静かに受け入れてくれた。
私は三人姉妹の二女なのだが、これで私たち三姉妹はそろって結婚と離婚の経験があることになる。改めて考えるととんでもない姉妹だ。父からすれば娘の離婚の報告を聞くことは別に初めての経験ではないので、そこまで衝撃を受けることではなかったのだろう。ここに至るまでの経過を知っているからということもある。少し前に両親に離婚を考えていると相談したことがあった。その時、母は離婚はやめてほしいと反対したけれど、父は
「お前は三人姉妹の中で一番俺によく似ている。だからわかる。好きなように生きろ。困ったらいつでもこの家に帰ってくればいい」
と言った。そんなことを父から言われることは初めてでとてもびっくりした。私が父に似ている……。認めたくない事実だ。
私は10代、20代の頃、父のことが大嫌いだった。父のような男性とは絶対結婚したくないと思い、正反対のタイプの男性とお付き合いするようにしていた。父は自己中心的で周りを振り回し、まずは自分を満たす事を優先するタイプだ。夕食の時間にお酒が入るとずっと大きな声で喋り倒し、若い時の武勇伝を何度も何度も聞かされて、うんざりした。若い時はお金や女性にもだらしなかったようで、母を幸せにしているとは到底思えないところがたくさんあった。ちょっとかわいそうになってきたので少しはいいところも上げておこう。いいところもちろんあった。休日は家族みんなで出かけることを大切にし、海や山や森林公園に家族で出かける習慣は私が高校生になる頃まで続いていた。綺麗好きで親父臭がしたことは一度もないし、部屋もいつも整理整頓されていた。そしてとてもオシャレで、今でも家族のファッションアドバイザー的役割を担っている。
(これくらいでいいかしら… )
さて、正反対のタイプの男性と結婚し、上手くいくはずだったのに、なぜ私は数十年後離婚することになってしまったのか、ここで振り返ってみたいと思う。
父のような男性とは絶対付き合わないようにしようと思っていた私は、寡黙で、余計なおしゃべりはしないし、自分より優先して相手を思いやることができ、女性やお金にだらしなくない彼と出会い、交際を始めた。年上でいつも私を引っ張って行ってくれて一緒にいてとても安心した。結婚した時、私は私の大切な家族ができたことにとても幸せを感じていた。ある時期までは。子供が小さい時は私も彼に逆らうような必要もなかったし、子供たちもお父さんに従っていた。子供が成長するに連れて、教育方針をめぐって彼の意見に従うことができなくなっていった頃から、彼との関係はおかしくなっていった。
「寡黙な人」は「無口で何を考えているかわからない人」になり
「自分より相手を優先して思いやることができる人」は「勝手に我慢してストレスをため混んで突然起こりだす怖い人」になり
「お金や女性にだらしなくない人」は「趣味がなく仕事以外はずっと家にいて重苦しい人」になり
「いつも引っ張っていってくれて頼りになる人」は「頑固で融通が利かない人」
になっていった。
なんでこんなに変わってしまうの、と思っていたけれど、実は彼は何も変わってないかもしれない。長所と短所は表裏一体なのだ。変わったのは私が彼をどう受け止め、彼に接していたかだけなのかもしれない。父に似てまず自分を満たすことを第一優先にするらしい私を、きっと彼も理解できなかっただろう。もちろん離婚にまで至ったのはそんな単純な理由だけではないということは付け加えて置きたい。
とにかくこの秋、私の人生の一大プロジェクトは集結を迎え、気持ち良く新年を迎えることができることの感謝したい。そういう意味では、
「離婚、おめでとうございます!!」
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