筋トレと我が子とパソコン修理
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:松本尚美(ライティング・ゼミ9月コース)
11月10日朝、パソコンが故障した。電源を入れても画面が真っ暗なまま。いくら待っても立ち上がってこなかった。
「今日は、ライティングゼミの課題を提出しようと思っていたのに。パソコンが立ち上がらず、このまま使えないとしたら、書きためた原稿のデータも全部無駄になる!」
「仕事用に、時間をかけて作ったPPTや、書類のデータも。今までの苦労が全部ゼロになる!」
数分たってもパソコン画面は真っ暗なまま。私の目の前も真っ暗になった。
故障してみて、私がいかにパソコンに依存していたかが分かった。「もはや私の手や脳の一部をなしていて、パソコン無しには勉強も仕事もできない!」ことを思い知った。
今日一日、朝から「あれして、これして」と頭の中で計画を立てていたが、それがすべて崩れてしまった。
修理について、スマホで急いで検索した。安くても1万円5千円以上かかる。重要なパーツ交換が必要になると5万円程度かかることもありそうだ。修理料金は業者によってまちまちだそうだが、買い換えた方がお得な場合もあるという。
いや、料金もだが、今回は時間のほうが問題だ!
「修理に出したら、梱包して配送なども必要になる。早くても1週間はかかるに違いない」
「近くの電気屋さんにパソコンを持ち込んで、見てもらうのが早い?」
「いや、すぐに修理は無理だ。修理に出す斡旋をしてくれる程度だろう」頭の中がぐるぐる回った。
とにかく今日中にパソコンが使えるようにならないと困る!
「新しいパソコンを買いにいこうか? 買ったとしてもデータの移し替えとか沢山のアプリの立ち上げなど、相当手間がかかる」
前回買い換えた時も、ちゃんと使えるようになるまで1週間くらいかかった。そもそもパソコンが立ち上がらなければ、データの移し替えもできない!
それに、買い換えたとしても「使っているアプリのIDやパスワードも分かるかどうか。FacebookのID、パスワード、覚えていないよ! どこかに書いたと思うけど。どこに書いたか分からないよ~」
パソコン音痴の私が、さらにパニックになるような難題が山ほど湧いてきた。
「とにかく、11月11日が、ライティングゼミの課題提出日だ。今日が10日」
「12日火曜日までに仕上げなければならない急ぎの仕事もある」
途方に暮れている間もなかった。
そのとき「自分で何とかするしかない! できる!」という声が自分の中から湧いてきた。
私は、パソコン大の苦手。自分で修理なんて絶対無理。「や・り・た・く・な~い!」
猛烈な心の抵抗が出た。
が、それでも「やってみなければ分からない! 不可能だと思っていた懸垂だってできるようになったのだから」と自分を励ます声が聞こえた。
懸垂チャレンジとパソコン修理。何の関係も無いように思われるだろうが、「やってみなければ分からない! やってみよう」と思えたのは、7月半ばからずっとチャレンジし続けている懸垂のおかげに違いないと思う。
1回もできなかった懸垂が、その日の体調によるにしても今は5~6回はできるようになった。
「不可能だと思えても、できる事を一つずつ積み重ねていけばいつかはたどり着くことができる」という信念ができた。体力、気力も懸垂を始める前に比べて明らかに向上した。
「とにかくやってみよう!」
「パソコン画面真っ暗」で検索をかけてみた。ドンピシャ。こんな素人くさい言葉でも「原因は?対処法や注意点は?」いくつかの記事が表示された。パソコンの画面が突然真っ暗になる現象は一般的に「ブラックアウト」と呼ばれるそうだ。
対処法としては
① まず電源がつながっているか確認すること。
② コードに不具合が発生している場合があるので直接コンセントにつなぐ。
から始まって、素人でもできるチェック方法が紹介してあった。
外側から対処できることを次々と試してみたが、改善しなかった。
いよいよ中を開けてみるしかなかった。パソコンを裏返してみたら沢山の小さなネジ。
頭がクラクラした。「でも、やるしかない!」
やると決めたら、不思議なことに、脳が私を応援しだした。
「うちの子は物を分解することが大好きだった。こんなパソコンを前にしたらきっとワクワクしただろう。中には何が入っているのだろう? と好奇心で目を輝かせたに違いない」
今は巣立ってしまった我が子の少年時代を想像して、自分をワクワクさせてみることにした。
いざ、パソコンの裏側のネジをはずそうとしたら、ネジが小さすぎて普段使っているようなドライバーでは使い物にならないことに気がついた。パソコンのネジは長さ5ミリもないくらいだ。十字のネジ穴の直系も2~3ミリ。小さくて特殊なドライバーでないとネジ穴にはまらない。
これも我が子に助けられた。大工道具箱に子どもが使っていた大小色々な形のドライバーセットが残っていた。今まで何に使うのか分からなかった。
「こんな小さなネジを扱うときに要るのか!」
知らなかった事を知るのは楽しい。だんだんテンションが上がってくるのがわかった。
時間が思った以上にかかると私はイライラしてくる性分なのだが、「今日一日かかってもいい。とにかく直すことだけに専念しよう」と決めたことがよかった。集中できた。
「これを機会に、パソコンの仕組みが分かって、簡単な故障なら治せるようになるかもしれない!」と、脳が勝手によい自己イメージを運んできてくれた。
20個ぐらいのネジを丁寧に外していった。パソコンの底を取り外すことができたときにはそれだけで妙な達成感があった。
蓋を開けてみるとパソコンの中に、ビルが建ち並ぶ大都会を見るようだった。
「昔のパソコンは、人が入れるような大きな一部屋分の大きさだった。人類の進歩はすごい」と感心した。
CPUのとても大切な場所に冷却ファンがセットされていた。ファンにほこりがたまっていた。絵の具の細筆でほこりを取り除きながら掃除機で吸い取った。部品がとても繊細なので吸引力の弱い古い掃除機が役に立った。
取りあえず素人ができるのはここまで。ほこりを取るという物理的な作業ならできるが、様々な部品の内部の故障は専門家でないと分からない。
「これがダメなら、次は液晶の故障を疑え、か……」
蓋を閉め20個ぐらいのネジを所定の位置に置いた。時間をかけて一つずつ、ネジ回しで締めた。
そして電源を入れてみた。期待していなかったが、なんと、立ち上がった! そして普通に作業をすることができた。
「のど元過ぎれば」にならないように、今回得た教訓を書き止めておきたい。
パソコンは突然故障する事があるので、必要なデータはパソコンの外にバックアップを取っておくこと。
机上のほこりを拭き取っておくこと。ファンにほこりが絡め取られて故障の原因になる。
IDやパスワードの管理をきちんとする。忘れたものはきちんと思い出しておくこと。
昨日の朝の絶望的だった私に変わって、今日の私は明るく、肯定的だ。「古くなったパソコンの一部は私にも直せるかもしれない。ほこりが原因ならば、蓋を開けて掃除をすれば良いだけだから」
ライティングゼミ課題も何とか時間に合わせて提出できそうだ。
***
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