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【悲報】俺氏、パワハラを受けたことに気付かない


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記事:masa(ライティング特講)
 
 
「masaさん、それってパワハラじゃないですか?」
今年7月のある日、私は行きつけの美容院でシャンプーをしてもらいながら、いつものように会社の愚痴を言っていた時に、美容師からこう言われた。
私は気付かぬうちに上司からパワハラをされていた。
 
時は遡って、3月の頭。
その数週間前に、私はアメリカに行って責任重大な仕事を完遂してきたところだった。
そんなタイミングに、上司から呼び出されて1on1の面談をした。
 
それまでの上司の言葉には、どこか本音を隠しているような、ちぐはぐに聞こえる部分があった。
そして、この日の上司は本音でこう話してくれた。
「君には、社会人としての能力が無い」
正直なところ、言われたことの一字一句を覚えてはいないが、大体このような意味合いのことを面と向かって言われた。
 
その言葉を受けとめた自分は、
「そうか~、やっぱり自分はダメな社会人だよなぁ~」
「一応、アメリカでの仕事も自分なりには頑張ったんだけど、頑張りが足りなかったか~」
と内心思った。
そして、薄々感じていた自分の能力の無さがとうとう証明されたか、と認識した。
 
その後上司は、このような心掛けでこれからは頑張るように、といった内容を私に話して面談は終わった。
言われたことはショックではあったものの、自分の至らない部分は直していこう、そう心に誓って次の日から頑張って仕事をしよう、そう思いながら家に帰った。
 
だが、この上司の言葉は私に仕事を頑張らせてはくれなかった。あの言葉は私にとっての、弱体化の呪文、呪いの言葉であった。
 
異変は徐々に大きくなっていった。
最初は比較的普通に仕事が出来ていたのだが、あの面談から日にちが経つにつれて、呪いはどんどん強まっていった。
仕事で行き詰まる場面に出くわした時や、なんだかやる気が出ない瞬間がやってきた時に、「私は社会人としての能力が無い」という言葉が頭に浮かんでくる。
そしてその言葉は、自分の心と身体を萎縮させて、より仕事が進まない状態を作り出す。
そうして仕事が進まない状況になった自分を、さらにあの言葉が責め立てる。
 
次第に、上司の呪いは仕事の時間以外にも自分を責め立てるようになっていった。
休日に自分の好きなことを思いっきり楽しんでも、じっくりと家で身体を休めても、常に心のどこかに自分を責める言葉があって、心身が休まらない気分だった。
これまで自分とは切っても切れなかった欲も、不思議なくらいに湧き上がらない。
何をしても、どうやっても、普段の元気な自分に戻れない。
おかしい。おかしい。自分が自分じゃない。
 
そう思っていたある日、美容院に行った時に言われた一言が冒頭のセリフである。
ようやく、上司の言葉がパワハラとも言えるものであることに気付いた。
いやいや、パワハラなんてもっと常習的なもので、もっとキツイことを言われてこそパワハラだろう。
こう考える方も居るだろうし、私も美容院に行くまでそう思っていた。
けれど、自分以外の意見の1つに、あれはパワハラだという意見が1つあるだけで、自分の認識はガラリと変わった。
あの言葉は自分のだらしない一面を言い表す正しい言葉かもしれないが、その一面だけが正解という訳では無かったようだ。
 
この一件がきっかけとなって、様々な変化が起こった。
まず、私は上司のことを正式に嫌いになった。
基本的には性善説で生きている、人を嫌うことが珍しいこの私が、久しぶりに人を嫌いになった。
そうか、人のことを嫌いになっても良いのか。
そう思うだけで、スッと心が軽くなった。
嫌いな上司の言う事は最低限のことさえ聞いていれば良いし、嫌いな人との接する機会を無理に作ろうとしなくていい。
とにかく上司との接点をなるべく減らそうとするだけで、とても気が楽になった。
 
そして、あの上司の言葉がパワハラである可能性が生じたことで、あの一言が自分を苦しめる頻度がぐっと減った。
もしもあの一件がパワハラだとするなら、あの言葉は社会人としてのルールに違反した言葉である。
人として、社会人としてルール違反の言葉など、気にする必要は無いのだ。
それでもしばらくはあの言葉に苦しめら続けていたが、次第に気にならなくなっていった。
最近では、上司を嫌いになったこととの相乗効果もあり、「社会人としての能力が無い」の言葉は効力を失いつつある。
 
それでも、嫌いな上司の下での仕事がこのままだと延々と続いていくのは事実だ。
あの上司が外面は愛想良く接してくるその裏に、パワハラまがいの本音が隠れていると思うと、それだけで仕事の意欲が削がれていく。
なので、私は決心した。これまで勇気が出なかったが、ついに踏ん切りがついた。
あの上司の居る職場からサヨナラするのだ。
転職あるいは異動した先でも、自分の能力の無さを突きつけられるだろうが、今よりは絶対にマシな気持ちで仕事が出来るはず。
 
というわけで私は今、絶賛転職活動中である。
こんな私にご興味のある方がいらっしゃいましたら、是非。と一応この文章でも呼びかけてみる。
 
 
 
 
***

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2024-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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