てんしゃい長男の小学校日記:奮闘と笑いの日々
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記事:神林 智子(ライティング・ゼミ11月コース)
うちの長男は、のんびり屋さんで、小学校に入学する前からいろいろとやらかしていました。小学校の校区を越境するお願いに行った際、校長室でやらかしたのです。その日は新年度入学生の歯科検診の日で、校長室の机の上には歯科医の先生にお出しするお茶菓子が準備されていました。
「キャー! 何するのっ!」と女校長先生の叫び声。長男はそのお茶菓子を鷲掴みにして、校長室を駆け回りました。そのすばしっこさに大人総出でやっと捕まえました。恥ずかしさでその後の会話はよく覚えていませんが、越境の承認印はなんとか頂いて、逃げるようにその小学校を後にしました。
これから始まる小学校生活が思いやられるスタートでした。
無事に違う小学校に通うことが許された長男は、授業のチャイムが鳴っても花壇でセミの幼虫掘りに夢中になっていたり、伸び伸びと興味の赴くままに学校生活を送っていました。担任の先生も「あらあら!」と言いながらも彼の興味を殺がないように見守ってくださいました。
しかし、彼が進級して2年生になると、様子が変わりました。新しい担任の先生から、彼の「勝手な行動」を責める内容のお便りをしばしばいただくようになったのです。
そしてある日、突然電話で、市の養護教育センターへ連絡するようにと言われました。詳細の説明がなかったので、わけがわからないまま電話をかけました。
「お子さんは歩けますか? 身体障害もありますか?」 センターの方の質問に、さすがの私も混乱しました。ちょっとわんぱくなところはあるけれど、日頃接していて知能的な障害があるとは到底思えなかったからです。母親のくせに気づかなかったのかと、自分が情けなくなるし、突然大きな心配のタライを頭に落とされたような衝撃でした。
「歩けるなら連れてきてください」と事務的な口調で日程を告げられ、ある平日の午後、彼を早退させて知能テストを受けさせることになりました。
当日、息子のことが不憫になってきた私は、罪滅ぼしに「マックする?」と問いかけました。「うん!」と元気よく答える息子は思いがけずマックに行けるとスキップしています。
フライドポテトを食べながら、息子が私に聞いてきました。 「ねぇ、今日はどこに、何しに行くの?」 私は心配のタライの襲撃以降、動揺のあまり彼に説明できていなかったことを反省しました。 「あのね、先生がね、君が天才かもしれないから、専門のセンターでテストを受けてきてくださいって!」 「そっかそっか!」 本人すんなり納得してくれて、ご機嫌でポテトをぱくぱく。急な要請に大きく動揺して、いったいどんなテストが待ち受けているのかもわからないままパニックに陥り、そんな適当な受け答えしかできない、情けない自分を責めました。
天気のよい平日の昼下がり、坂道の上にある養護教育センターを目指して、不安を吹き飛ばすように一緒に大声で歌を歌いながら乗り込みました。
2時間近くテストが続きました。ずっと長い時間感じられました。戻ってきた息子は得意気な顔でこう言い放ちました。 「ママ。やっぱり僕てんしゃいだったよ! ぜーんぶできた!!」 「そう!ご苦労さま!!」くしゃくしゃに頭を撫でて抱きしめました。
30分ほどして、結果について講評がありました。知能的にはおしなべてすごく高いが、1点、協調性、社会性の部分だけが平均以下。教員も、勉強は問題ないのに行動がぶっ飛んじゃって困ったのではないだろうか? 別に病気じゃないから、成長につれ、大丈夫になるでしょう、とのことでした。
テストの内容は、言語理解、数の理解、図形の理解、記憶力、処理速度など、多岐にわたるものでした。息子は特に数字や図形の問題が得意で、楽しんで取り組んだようでした。
息子は上機嫌で遊具で遊びながら私への講評が終わるのを待っていました。彼の大好物をお夕飯にしたその日は、食卓でも「僕てんしゃいだった!」と鼻の孔をふくらませて父親に自慢していました。
翌日、ことの顛末を学童保育の園長先生にご報告しました。彼女は0歳の時から息子らを預かってくれていた保育園の園長先生で、小学生になった彼らを見放せなくて学童保育を開園したという愛情の持ち主です。彼女は黙って目を潤ませながら私の話を聞いていましたが、私に、「そんなこと、気にしなくていいです!彼と長いこと過ごしていればわかりますよ」ときっぱり仰っていました。翌日担任に電話をかけ、「あなたに彼の何がわかるのっ!」と猛抗議していたそうです。
うちの「てんしゃい」も、小学三年生になると、担任の先生も代わって、たまにやらかすものの落ち着きを見せるようになりました。学童の先生や新しい担任の先生に理解してもらい、愛されて小学生生活を送りました。
今となっては笑い話ですが、一人目の子供の子育てというのは、つくづく暗中模索だったなぁと思い返します。
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