港区OLの長崎仮移住体験記
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記事:shiho(ライティング・ゼミ11月コース)
私は東京で働く29歳、いわゆる「港区OL」だ。会社も住まいも港区にあるが、世間がイメージする華やかな日常とは少し違う。仕事が終われば、友人とディナーを楽しむ余裕もなく、週末も家にこもってひたすら仕事漬けの日々。とはいえ、便利な交通網に囲まれ、刺激的な都会の喧騒の中で暮らしている私は、紛れもない港区OLだ……と、自分では思っている。
そんな私が、1年前から長崎に通い始めたのだ。
2ヶ月に1回、2〜3週間ほど長崎で過ごす生活を続けている。普段の生活は3/4を東京、1/4を長崎で送るという、いわば「仮移住」スタイルだ。リモートワークが可能な会社と、長崎に住むパートナーのおかげで、何の不自由もなくこの生活が成り立っている。
実のところ、私は長崎に特別な縁があったわけではない。唯一の接点は、高校生の時の修学旅行で訪れた記憶くらいだ。「中華街があった」「出島があった」……その程度の印象しか残っていなかった。しかし、いざ通い始めると、長崎は私にとって忘れられない場所へと変わった。自然と文化が調和するこの街での暮らしは、いつの間にか私の心を掴み、今では「完全移住」すら考えるようになっている。
まず驚いたのは、長崎の豊富な祭りだ。1月下旬から2月かけて開催される「ランタンフェスティバル」では、街中が無数のランタンに照らされ、中国文化が色濃く反映された幻想的な光景が広がる。そして、4月から5月にかけて行われる「長崎ハタ揚げ大会」では、色鮮やかな凧が空に舞い上がる。この祭りは、かつて出島のオランダ人の従者としてやってきたインドネシア人から伝わったものだと言われており、長崎ならではの歴史が垣間見える瞬間だ。
秋に訪れる「長崎くんち」も見逃せない。この祭りでは、日本舞踊に中国や南蛮文化が融合した装飾や踊りが披露され、異国情緒溢れる長崎の街が一層活気づく。そして実は、これ以外にも長崎には数えきれないほどの祭りがあり、季節ごとに様々なイベントが街を彩っている。いつ訪れても賑やかな雰囲気に包まれているのが、この街の魅力だ。
そして長崎は、祭りだけでなくドライブにも絶好のエリアだ。山、海、川がすぐそばにあり、自然がぎゅっと詰まっている。春には桜や菜の花が咲き乱れ、花見を楽しめる。そして、夏には夜道を歩きながら蛍の光を楽しむことができる。さらに、多くの島々が点在する長崎では、美しい海水浴場が多く、透き通った海でのんびり過ごす贅沢なひとときが待っている。
また、長崎は温泉地も豊富だ。秋が深まり、肌寒さを感じる季節になると、自然に囲まれた露天風呂に浸かるのが至福の時間。冬の澄んだ空気の中で温泉に入ると、心も体も芯から温まる。つい最近も秋桜を見に行ったが、広大な秋桜畑の向こうに広がる山々の美しさには息を呑んだ。東京では決して味わえない、心が洗われるような景色がそこにはある。
こうして四季折々の風景を楽しめるのが、長崎の何よりの魅力だ。季節ごとに変わる自然の表情に触れるたびに、私はこの地に惹かれていく。そして冬が来れば、温泉巡りの計画を立てるのも私の楽しみのひとつだ。
気がつけば、私は長崎で四季の移ろいを堪能するのが習慣になっていた。この生活のおかげで、仕事のオンとオフをしっかり切り替えられるようになったのも大きな変化だ。平日と週末の区切りだけでなく、平日でも日中と夜の過ごし方を意識するようになり、効率よく働くことを心掛けるようになった。仕事だけに追われる生活から解放され、「遊び」に忙しくなったのだ。その分、集中して仕事を終わらせる意識も高まったように思う。長崎は、ただ楽しいだけでなく、私の働き方にも嬉しい影響を与えてくれた。
もちろん、移住を本格的に考えるとなると悩みも出てくる。長崎は斜面が多く、平地の居住エリアが限られているため、家賃は意外と高めだ。また、知り合いもほとんどいない。しかし、そんな不安を理由に足踏みしてしまえば、どこにも移れないだろう。むしろ、こうした不安を抱えながらも新たな一歩を踏み出そうと思えていることが、私自身の成長だと感じている。
もし、私のように「東京以外の暮らし」に興味がある人がいるなら、ぜひ「仮移住」をしてみてほしい。実際に足を運んで住んでみることで、見えてくるものが必ずある。きっと、新しい土地があなたの心を開かせ、次のステップへと導いてくれるだろう。
私はもうしばらく、この長崎との二拠点生活を続けたいと思っている。そして、いつか完全移住の日が来るのを心待ちにしながら。
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