『嫌われる勇気』を11年間避け続けた私が知った、タイトルの裏に潜む危険性
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記事:いろは(ライティング・ゼミ特講)
アドラー心理学を解説した岸見一郎氏と古賀史健氏の共著による『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』は、国内での発行部数が300万部を超える超ベストセラーだ。
だが、「嫌われる」というタイトルの文字に拒否反応を起こした私は、2013年の発売以来、ただの一度も手に取ろうとは思わなかった。
『嫌われる勇気』にもアドラー心理学も避けたまま11年が経過したのだが、先日受講した天狼院書店の特別講座でも『嫌われる勇気』が紹介されたり、友人の悩みに一緒に落ち込んでいる私に別の友人から読んでみるといいと勧めらたりして、そこまでいうなら騙されたと思って読んでみることにした。
話は変わるが、『源氏物語』の現代語訳を読もうと思い立ったのが今年の3月。最初の2冊を読んだ時点で眼精疲労がひどくなって、紙の書籍はギブアップせざるを得なくなった。その後、kindleの読み上げは棒読み過ぎてギブアップ、アレクサは健闘してくれたが「桐壺の更衣(こうい)」を「桐壺のころもがえ」と読む可愛さに笑ってしまうのでギブアップ。結果、オーディブルに落ち着いた。
本に書き込みをしながら読む人や、視覚からインプットするのが得意な人は耳読は頭に入ってこないらしいが、私は聴覚情報で大丈夫なタイプだと分かり、そこからはオーディブルで本の世界に没入している。
『嫌われる勇気』はオーディブルの聞き放題ではなく、購入しなければならない。声優や俳優が朗読していることが多いオーディブル作品は、紙の書籍より値段が高めだ。『嫌われる勇気』も書籍は1,500円、オーディブルだと会員割引後の価格でも2,100円だ。もともと『嫌われる~』というタイトルで敬遠していたし、すぐに嫌になるかもしれない本に2,100円か……
買うかどうか結論が出ないまま、買物に出た。スーパーからの帰り道、坂の向こう側に古書店があったことを思い出した。『嫌われる勇気』は900円で6冊並んでいた。新規会員登録すれば100円割引クーポンで800円だったので、ま、いいかと購入した。
帰宅して、食料品を冷蔵庫に入れて、『嫌われる勇気』のページを開いた。内容は、哲学者と青年の会話形式で進んでいく。
これは、幽体離脱なのか?
本の中の哲学者の発する言葉に
「そんなのおかしい」
「やめて!」と私は強く反発していた。
そして驚いたことに本の中の「青年」が全く同じ反応をするのだ。私が反論したいことを「青年」が代弁してくれる。私はページをめくるのももどかしく、早く結論が知りたくて一気に読み終わった。電気をつけるのも忘れていて、日が沈んだ部屋の中はすっかり暗くなっていた。食料品を冷蔵庫に入れてから読み始めた自分をおもわず褒めたが、晩御飯、間に合わないぞ。
これまでの私が「生きる指針」にしてきたのは、松下幸之助さんや稲盛和夫さんのお話だった。仕事仲間、ママ友といった誰からも賛同を得られるし、いわゆる共通認識のようなものだったからかもしれない。特に稲盛さんが説く「利他の精神」つまり、他人のために尽くすことで自分も満たされ、幸福になれるという考え方は、まさに就職、結婚、子育て期での私の大きな指針となっていた。「人に嫌われましょう」なんてどこにも書いていない。嫌われないように生きていくことこそ、あるべき姿だと信じていた。
だから『嫌われる勇気』で取り上げているアドラー心理学の最終目標が「利他=他者貢献」ということに腰を抜かすほど驚いて
「あれ? この本と私が信じてきたこと、繋がっている?」
とページをめくる手が止まらなくなったのだ。
本の中の青年と同じように、突き放した考え方だと最初は反感を覚えた「課題の分離」も、私が26年間の結婚生活を終わらせて、離婚に至った経緯が美しく整理できた。『嫌われる勇気』流に表現すると「課題の分離ができず、自己犠牲をしてまで他者貢献をしてきた結果」だ。定義づけができると、手放した風船が空に舞うように、ふわっと気持ちが軽くなった。
本の中では、『嫌われる勇気』を実践できるようになるには、年齢の半分の時間が必要だとも語られていた。50代後半の私の場合、できたと思った時に生きているのかどうかわからない計算になるが、経験=データが山のようにあることが、私の強みだと思った。ChatGPTのように爆速でのアップデートは不可能だが、日々既存データと新しい情報を比較して、どんどん実践していけば25年かかるところが、10年すらかからない気がする。
私にとってはいいことずくめの『嫌われる勇気』だが、一方で『嫌われる勇気』には危険な面もあると感じた。私の場合、(結婚よりエネルギーを使うといわれる)離婚ホヤホヤで、「変わろう」「自分を変えたい」タイミングということもあり、『嫌われる勇気』の中の青年が自分事にしか思えず、幽体離脱だと感じたが、現時点で変化を求めていない人、変化が怖い人に、いきなり「課題を分離して、嫌われる勇気を持とう」と言っても、ただ苦しいだけで、周囲の誤解を招くだけの劇薬になりえる危険性がある。そういう人は『嫌われる勇気』をコップに注いで少し舐めてみるといい。苦くなければ、もう少し舐めてみる、少し口をつける、そしてちょっとずつ飲みこんでいけばいい。
『嫌われる勇気』という強烈なタイトルに惹かれて読む人は劇薬が欲しい人かも知れない。おそらく、そういう人たちは自分を大きく変えることができる人だろう。私のようにタイトルで敬遠して、まだ読んでいない方には、ぜひ自分の経験と照らし合わせながらゆっくり読み進めることをおススメしたい一冊だ。「良薬は口に苦し」だと、お忘れなく。
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