『すごい』と言われた私の地味なルーティン
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:内山遼太(ライティング・ゼミ9月コース)
「これ、もう一回やり直してもらえる?」
上司のその一言に、会議室が静まり返った。突然の仕様変更だった。プロジェクト全体の計画が狂い始め、みんなが凍りついたように手を止めている。全体の進捗が頭の中で浮かぶ。優先すべきタスク、後回しにできるタスク――。私はスッと席を立ち、対応すべき部分を手早く整理した。
「まずこの資料を再作成します。他のデータは必要に応じて順次更新しましょう」
指示を出しつつ、自分でも即座に作業に取りかかった。迷いがない行動に上司は少し驚いた様子で、「君、いつも対応が早いね」と言った。その言葉を受け流したように見せたが、実は少し戸惑っていた。自分では特別なことをしているつもりはなかったからだ。ただ準備をしていただけ――そう思った。
けれど、振り返ると確かにいつも「早い」と言われている。もしかすると、自分が無意識にやっていることに、周りとは違う何かがあるのかもしれない。そう思い、自分の「当たり前」を見直してみることにした。
私の仕事は、前日の夜から始まる。業務が終わる直前に、翌日のタスクをリスト化し、優先順位を決める。そして、どの時間帯に何を終わらせるかスケジュールを頭の中でざっくり組み立てる。これが、翌朝のスタートを格段に速くする秘訣だ。やるべきことが明確になっているため、朝は迷わず作業に取りかかれる。これを怠ると、最初の一歩を踏み出すまでに無駄な時間がかかることを、過去の失敗から学んでいた。
数年前、何の準備もせず一日を始めた時は、やるべきことを考えるだけで午前中が終わってしまった。その時の挫折感を思い出すたびに、事前準備の大切さを実感する。それは、突発的なトラブルが起きた時に特に威力を発揮する。優先順位が明確だからこそ、冷静に対応できるのだ。
準備だけではない。私にはもう一つの「武器」がある。それはルーティン化だ。メールチェックや資料作成など、毎日繰り返す作業を固定化し、ほぼ無意識に進められるようにしている。これにより、余計な判断を減らし、頭のエネルギーを大事な意思決定に集中できる。実際に試してみたことがあるが、毎回やり方を変えたり、テンプレートを試行錯誤しているうちは作業スピードが遅くなる。しかし、ひとつのやり方を確立すると、驚くほど効率が上がる。
ある日、後輩から「どうしてそんなに早く仕事を終わらせられるんですか?」と尋ねられた。私は「ただの習慣だよ」と言いながら、自分の方法を簡単に伝えた。翌日、彼は早速それを試し、後日笑顔でこう言った。
「おかげで残業が減りました! もっと早く知りたかったです」
その言葉に少しほっとした。自分の当たり前が、誰かの悩みを解消できたことが嬉しかった。
一方で、他人の仕事ぶりに悶絶することもある。特に、ペースが極端に遅い同僚に遭遇すると「なぜそんなに時間がかかるのだろう」と思ってしまうのだ。以前、簡単なデータ入力を分担した際、私が終わる頃になっても彼はまだ作業の半分にも達していなかった。思わず「そこまで慎重にやる必要があるのかな」と感じてしまった。
しかし、そんな時こそ「どうしてそのペースなのか」を考えるようにしている。話を聞いてみると、彼はそもそも作業手順を知らないまま進めていたことがわかった。そこで私は、効率的な方法を教えるとともに、簡単なテンプレートを作って共有した。彼が後日「おかげでかなり早くできるようになりました」と言ってくれた時、心の中で小さくガッツポーズをした。
もう一つ、私が意識しているのは「全体を見る視点」だ。目の前のタスクだけに集中するのではなく、その仕事が全体の中でどんな役割を果たしているのかを考えるようにしている。たとえば、複数の部署が関わるプロジェクトでは、個々のタスクの進捗だけでなく、全体の流れを俯瞰することでトラブルを未然に防ぐことができる。
実際に、あるプロジェクトでスケジュールの遅れが発生した時、全体の工程を見直し、最優先で進めるべきタスクを提案したことがある。当初は「本当にそこを優先する必要があるのか」と疑問の声も上がったが、結果的にその判断が功を奏し、プロジェクト全体を立て直すことができた。この時、「全体を見渡す力がある」と評価されたが、それは過去の失敗から学んだ結果にすぎない。
自分では当たり前のように行っていることが、他人にとって「すごい」と映る。その事実に気づいた時、少し恥ずかしさを覚えると同時に、それが他人の助けになるならば積極的に共有すべきだと感じた。
「すごい」と評価されることは、決して天性の才能や特別な技術ではない。日々の工夫と積み重ねが、その価値を生み出している。これからも自分の「当たり前」を磨き続け、それを必要としている人に届けていきたい。自分の小さな行動が、誰かの悩みを解決し、背中を押すきっかけになるならば、それ以上に嬉しいことはないのだから。
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