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筋トレは身を助ける パート2


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松本尚美(ライティングゼミ9月生)
 
 

「すみません。わたし立ちくらみがするから、ここから先はもう、あなた1人で行っていただけますか?」私の車椅子を押してダラダラ坂を登って来てくれたヘルパーさんが音を上げた。
60歳過ぎの女性だった。丘の上にある我が家まであと30メートルの距離だった。
 
私の家の手前に心臓破りの坂道がある。
この坂道のおかげで電動車椅子を借りることができなかった。坂の角度が急すぎて、うまく作動しないとの事だった。
 
私は以前、半年ほどのあいだ、車椅子生活をしたことがあるが、そのときの話だ。
 
変形性股関節症で少し痛みがあったところに派手に転倒。痛すぎて歩けなくなってしまった。診断名は「股関節捻挫」だった。
「そもそも変形があるので手術した方が良い」とのことであった。私は手術の説明を聞いて恐れをなしてしまった。
 
私に必要なのは、「人工股関節置換手術」とのことだった。
すでに手術を受けた人のレントゲンを見せながらの医師の説明。骨の中に「こけし」のような丸い頭をした円錐形の物体が埋め込まれている。
真っ白に浮かび上がるこの人工物を見て私は心底怖くなった。
 
「手術はいつでもできる。手術以外の方法でやれる事を試してからでも遅くない」と自分を納得させる弁解を考えた。
「今は自分の体を使って人体実験中なのですよ」などと他人に話すこともあるが、実は怖すぎて手術の決断ができない。
 
「手術すれば半月も入院したら、痛みも取れてきれいに歩けるようになる」らしい。整形外科医の説明はこうだ。
「変形性股関節痛症の末期です。骨と骨が触れ合って痛むのです。手術しなければ歩けませんよ」
 
なのに、手術を決断することができなかった。
 
座っていると痛みはないのだが、いざ立って歩こうとすると痛い。パソコン仕事をして家でじっとしているには不都合はなかったのだが。
 
しかし、緊急に、どうしても移動したいことが起きた。
1つ目は救急車で運ばれ入院した父の見舞い。
2つ目は緊急に、歯医者に行く必要。
家族の介護があれば何とか動けたかもしれない。が、忙しい家族の手を煩わせたくなかった。
 
「そうだ。車椅子を使ってみよう!」良い思いつきだと思った。
 
購入すると2〜3万するような車椅子だが、福祉機器のレンタルサービスでずいぶん安く借りることができた。
 
そして実際、車椅子を使って父の見舞いにも行くことができた。歯医者にも1人で行くことができた。
 
この時、私を助けてくれたのが、「筋トレで鍛えてきた私の腕」だった。
 
 
足を怪我してから外に仕事にも出られず、以前からしていた「腕立て伏せ」の日課を続けていた。
肘を90度に曲げる「評価型」の腕立て伏せではないが、甘い角度でなら100回連続してできる用になっていた。
 
父の迎えお見舞いに行く日。ケースワーカーの経験がある人が付き添ってくれることになった。
車椅子での初めての外出。「人に迷惑をかけるのではないか?」と、とても怖くて勇気が要った。この元ケースワーカーさんの女性が「一緒に行きましょう」と行ってくれたことで勇気100倍だった。
 
父の病院は電車とバスを乗り継いだ先にある。
電車に乗るには、駅の改札口とは別に直接ホームにつながる車椅子専用ドアがある。ドア前のブザーを押すと、駅員さんが自動で入り口を開閉してくれた。ホームで待っていると、駅員さんが電車とホームをつなぐ板を持って駆けつけてくれた。
バスについても運転手さんは、手慣れたもので数分もかからず、私を車椅子に乗せたまま安全に固定してくれる。
 
私が車椅子で父の病室にたどり着くと、父はびっくりしたが会えたことをとても喜んでくれた。お見舞いに行けてよかった!
 
大満足しての帰り道。行きと同じようにバスと電車を乗り継いで最寄り駅まで帰ってきた。私の家はダラダラ坂の続く丘の上だ。そして最後だけ急勾配。心臓破りの逆がある。
ずっと坂道をがんばって押してくれたヘルパーさんの体力が限界だった。最後の坂道で立ちくらみ。立ち往生になってしまった。
 
丁度そこは、車椅子に座っていると後ろにひっくり返ってしまいそうな怖い坂道だった。
車がきては大変だ。じっと立ち往生しているわけにも行かず、私は自分の力でのぼってみることにした。ゆっくり腕に力を入れて。なんと、なんと最後まで登り切れてしまった!
筋トレしておいて本当によかった。
 
自信がついた。
「最後の難所を1人で乗り越えることができたのだから、どこへでも行くことができる!」
 
おかげで、歯医者さんには、介護者の付き添いなして1人で通うことができた。
人の手を借りず、自分で計画を立てて動けることのありがたさを覚えた。
 
私が体感している筋トレのメリットが、3つから4つに増えた。
① 体力がつき気力が湧く。
② 一石二鳥で筋肉はつかないので、コツコツと努力する大切さを知ることができる。
継続する力がつく。
③ 筋肉がつくと体型が変わる。姿勢が良くなる。姿勢が良くなった。自分を鏡で見ると、嬉しくなる。さらに自信がつく。
 
「車椅子を使うようになっても腕が足代わりに働いてくれ、介護者にいちいちお願いしなくても、自分1人で自由に動き回ることができた!」というので、
 
④ 活動の自由度を広げることができる。
 
これだ!
 
おかげで私の「筋トレ」信者ぶりに拍車がかかることになった。

 
 
 
 
***
 
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2024-12-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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