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トイレが詰まってくれたおかげで心からの「ありがとう」が言えるようになった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ふみふみ(ライティング・ゼミ 9月コース)
 
 

「おはよう。ごめん、さっきトイレ使えなくなっちゃってさ」
ある平日の朝、起きた時に夫に言われたセリフである。
半分寝ぼけた私は「おはようー。……え? トイレ?」
 
この日、私はトイレのおかげで「当たり前だった」ことに感謝することとなる。
 
夫が朝トイレに行き、用を足した際、トイレが詰まったというのだ。
夫は子どもの頃からお腹がゆるいらしく、お腹の調子が悪くなりやすい。
例にももれず朝もお腹の調子が悪くトイレに立てこもっていた。
しかし、今まではトイレに立てこもっても水が流れずに詰まる、なんてことは一度もなかった。
夫いわく「うーん。いつもと変わらなかったんだけどな。もしかしたらトイレットペーパーを多く使ってしまったかな?」だそう。
多く使ったら詰まるもの、なのか? もしかしたら何か便器に落とした?
そう私は思ってしまった。
 
私はこの時人生ではじめて自宅でトイレの詰まりに出くわしてしまった。
今まではトイレの水が流れず詰まってしまったことなんてテレビCMをみたぐらいで、実家にいた時も一人暮らししていた時も経験したことはなかった。
「トイレ詰まり」はどこか他人事だと思っていた私がいた。
 
しかし、現実にトイレが詰まってしまったのだ。
悠長に「これがトイレ詰まり! なるほどね」と感心している暇もなし。
今の私は一刻もはやく詰まりを解消しなくてはいけない。
なぜなら、この時、私は育休中で2歳の娘と7か月の息子と日中自宅に3人で過ごしており、トイレに行くことは必須であった。
しかし、アパートの1LDKに住んでいるためトイレが一つしかない。
実家も、義理実家も、知り合いも近くにいない。
夫は平日のため日中は仕事でいない。
小さい子どもを2人連れていちいち自宅を出てお店でトイレを何回も借りに行くのはかなり大変なことだ。
……ピンチの中のピンチだった。
 
「これはヤバいことになってしまった! 今日1日子どもたちと自宅で過ごせる自信はない……ほんと困った」
頭を抱え、プチパニックになっていた私。
そのとき夫が「「すっぽん」を買ってきてトイレ詰まりが解消するのか試した方がいいかもしれない」と助け船を出してくれた。
知識では「すっぽん」「ラバーカップ」だとかいう黒い丸いゴムがついた棒を使うというのは知っていた。
しかし、詰まったことがなかったため自宅にはない。
「すっぽん」をホームセンターへ買いに行く必要が出てきた。
 
ホームセンターの開店時間は10時。
それまでに洗濯干して、子どもと朝ごはん食べて、着替えさせて、食器洗って……と頭の中でやらなきゃいけないことと、全体の所要時間を計算。
トイレの詰まりを解消するなら10時に開店とともに買いに行けるようにすることができる気がする、と感じた私。
「なんとかこれならいける! よし、やるか!」
この言葉とともに私の中で「カーン!」とゴングが鳴った。
 
子どもを起こして、オムツを替えて、朝ごはんを食べて、着替えさせて、食器を洗って……
そこまでは順調だった。
子どもも協力的で、計画通りスムーズに進んでいた。
しかし、洗濯物を干している際に急にトイレに行きたくなってきたのだ。
トイレに行きたくなる、というのは計算に入れておらず、困ったことになった。
 
時間は9時過ぎ。
ホームセンターの開店時間まではあと1時間。
「あと少しだというのに……計画通りだったのに……」
「トイレが使えない」というのは私の心理的にもストレスだったんだろう。
「トイレに使えない」というブレーキと、「トイレにいきたい」というアクセルが同時に踏んでいるようで苦しくなり、「トイレにいきたい」アクセルが勝ってしまったのだ。
 
「トイレに行きたい」と焦りながらも大急ぎで洗濯物を干し、子どもたちを車に乗せ、近くのコンビニへ。
到着後、車から降りて、一人は歩き、もう一人は抱っこ紐。
その状態で私の気持ちは猛ダッシュ、現実はやや早歩きでコンビニのトイレへ。
「助かった……コンビニさん、トイレ貸してくださりありがとうございました!」
自然と感謝するくらい、トイレで用を足せることに感動した瞬間だった。
 
そこから再び車に乗り、ホームセンターへ。
開店時間とともにホームセンターに入り、「すっぽん」を見つけ購入。
「きっとこれでトイレの詰まりが直るはず」私はそう信じて疑わなかった。
 
子どもたちと帰宅し早速説明書をみながら、「すっぽん」を使ってズボズボとやってみた。
しかし、何度ズボズボとやってみてもトイレの詰まりは解消することはなかった。
 
「うそでしょ……詰まりが解消されない」
トイレの詰まりが解消せず少し落ち込んだが、落ち込んでいられない現状。
「すっぽんは効果なかったのは仕方ない。早く次! 1分1秒でも直るように動かなくちゃ!」
自分を奮い立たせ、今度はインターネットで「トイレ詰まり」を直してくれる業者さん探しへ。
すぐに見つかり、電話をかけ、1時間半後に来てくれることになった。
「これでトイレが使えるようになるはず!」と業者さんが来てくれるという安心で「トイレが使えない」というストレスが和らぎ、「もうすぐトイレが使えるようになる」という安心感に変化していった。
 
約束通り業者さんは1時間半後に自宅へ来てくれた。
薬剤を使用したり、強力な機械を用いて数分後……
 
「ジャー」
 
トイレが流れる音がした。
トイレ詰まりが解消された瞬間だった。
きっとトイレの流れる音でこんなにも晴れやかな気持ちになることはないだろう。
「あぁ、やっとこれでいつもの生活に戻ることができる!」私は心の底から安堵し、この「トイレ詰まり騒動」は終わりを迎えたのだった。
 
トイレの詰まりが解消して初めてトイレで用を足せた時、私は便器に向かって「いつもありがとうございます」と心からの感謝を伝え、深々とお辞儀した。
 
私は今まで「当たり前なことなんてなかったよね」と色んなことに感謝してきた。
自宅にも、トイレにも、どんなことにも「ありがとう」をしてきたはずだった。
しかし、それはつもりだったのだ。
 
実際にトイレが詰まることを通して、トイレが私の中で「当たり前」であったことに気づけ、同時に「なくてはならないもの」と再認識することができた。
そしてトイレの詰まりが解消後、トイレに対して心からの感謝もできるようになった。
トイレが詰まったことは一見ネガティブな経験ではあるが、同時に素晴らしい出来事だったと私は思う。
 
「当たり前」というのは空気のようなものだ。
空気のような「当たり前」だからこそ、私たちは常日頃その空気がどれだけ大事なものなのか考え、感謝して生活していく必要があるのかもしれない。
 
そう、トイレのようにね。

 
 
 
 
***
 
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2024-12-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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