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私の青春を一緒に過ごしたウサギは実は人間だった?


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記事:ふみふみ(ライティング・ゼミ 9月コース)
 
 

私の家族の一員であったウサギは人間であった。
 
そう思われているウサギは何匹いるのだろうか。
きっとウサギ以外でも人間と一緒に過ごしている犬や猫、それに他の動物たちに「もしかして中身は人間?」と思ったことのある方はいるのではないだろうか。
 
家族の一員であったウサギと出会うきっかけとなったのは、当時大学生だった私の姉が都内の公園で生まれたての子ウサギ3匹を見つけ、その3匹のうち1匹を姉が引き取ったことがはじまりだった。
姉の引き取った子ウサギの身体の色は白、耳と鼻の周りだけ灰色でフワフワモフモフしており、目はクリっとした黒目。その姿が姉にはマシュマロのように感じたらしく「マシュ」と名付けられた。
フワフワモフモフしており可愛らしい姿であったがマシュは男の子だった。
「マシュ」と名付けられた日から美味しい物を食べ、部屋の中を元気よく走りまわってスクスクと大きく育ったマシュ。
都内で1人暮らしをしていた姉は1人でマシュを育てていたものの、当時大学生であったため、アルバイトやクラブチームでバレーボールをしており家を空けている時間が長かった。
そのためマシュと出会い数か月経つ頃、姉は実家である北海道にマシュを預けることに決めた。
 
夏の暑い時期、姉の帰省とともに飛行機でマシュも実家である北海道にやってきた。
自宅に到着し、部屋でゲージからマシュを出すと、マシュは「? ここはどこだろう?」とまわりをキョロキョロ……。
部屋の色んな場所を鼻でクンクン、私や父、母、姉のことも鼻でクンクン、ツンツン。
一通り大丈夫だと分かり安心すると、走ってみたり、跳んでみたりとすごく楽しそうにしていて、走るのが疲れると部屋の隅っこで休憩。
当時小学生の私はウサギなんて動物園でしか触ったことのない。
最初はマシュを見て「可愛い!」と言って写真や動画を撮っているだけであったが、勇気を出して少しずつマシュの背中や頭をナデナデ……安心しているのか私にされるがままマシュ。
そんな私とマシュが出会ってから一緒に遊ぶようになるのにそんなに時間はかからなかった。
昔から遊んでいる友達かのように部屋で一緒に走りまわったり跳んだり、玄関の前の駐車場で一緒に走りまわったり、マシュと一緒に遊ぶことが多くなった。
自宅にいて時間があるとひたすら遊んだ。
近くの公園でカラスや猫に警戒しつつ遊んだりしたこともあった。
玄関の前にマシュを放しても、必ず私の後ろを追っかけてきたり、「そこは行っちゃダメだよ」と注意するとUターンして私のもとに戻ってきたりもした。
逃げ出したことはない。
いつも私の近くにいてくれた。
それが当たり前だった。
しかし友人から「普通飼いウサギだとしても外で放すとどこかに行っちゃうよ。マシュは賢いんだね。なんか人間みたい」そう言われ、外に放しても逃げない、ということは当たり前ではないことに気づいたのだ。
そして、「本当にこの子は賢くて実はウサギの皮を被った人間なのではないか」と感じる出来事が起こる。
 
私は高校3年生になり、雪が少し降り積もった日だった。
その日は土曜日。私が午前中塾で勉強している時に、父がマシュのゲージを洗おうと玄関の前でいつものように外でマシュを出し、父はゲージを洗い、マシュは父の近くで遊んでいた。
いつもはマシュのゲージを洗い終わり少しすると、外で遊んでいたマシュもお腹がすいてくるのかゲージと一緒に家の中に入ることが常だった。
 
しかし、その日は違った。
なんと近くにキタキツネがマシュのことを狙っていた。
キツネは家の近くでマシュと父のことを観察し、父がマシュから少し離れたとき、マシュを食べようと追いかけ始めたのだった。
最初はマシュ、キツネと家の周りをグルグルと走っていた。
マシュがキツネに追いかけられていることに気づいた父がマシュを助けるべくキツネを追いかけはじめ、マシュ、キツネ、父、の順番で激走。
マシュの足が速かったのか、はたまたキツネは相当お腹がすいてチカラがなかったのか気づけば走っていた順番がキツネ、父、マシュ、と順番が入れ替わり、そのまましばらく走っていたがキツネがいるのにもかかわらずマシュがいなくなってしまったことに気づいた父。
「マシュ、どこにいったの?」
「もしかして……他の動物に食べられてしまった?」
何とかキツネを家のまわりから追い出し、急いで父が家のまわりを探したがマシュを見つけられず。
焦りと不安が気持ちをザワザワさせる中、マシュが行きそうな場所を見て回っていると玄関が少し開いていることに気づいた父。
「まさかな」と思いながら家の中を探してみると……マシュが部屋の中にいたのだ!
なんとマシュは玄関が少し開いていることに気づき、機転を利かせてキツネという危険から逃げるべく玄関のちょっとした隙間から1人で部屋に入り、無事無償でキツネから逃げることに成功したのであった。
その話を塾から帰ってきた時聞いた私は、キツネとマシュと父が入っていたことにも驚いたが、「マシュ、本当はウサギの皮を被った人間なのでは?」と、本気で感じた。
 
私が大学生の頃にマシュは亡くなってしまったけれど、私の青春期間はマシュと過ごしたと言っても過言ではないと思うぐらい、いっぱいマシュと遊んだ記憶が昨日のことのように思い出される。
マシュが外で放しても逃げなかったのは、きっと人間の言葉が分かるからなのではないか? と今でもそう思っている。
きっとマシュは賢いウサギだったのかもしれないし、人間と過ごす時間が長かったから何を言っているのかなんとなく理解できただけなのかもしれない。
私の家族の一員であったマシュは間違いなく「僕は人間だ」と思っていたに違いない。
 
きっとこれはマシュだけではないかもしれない。
人間と一緒に住んでいる犬ちゃん、猫ちゃんなどの動物たちはきっと動物の皮を被った人間なのかもしれない。
彼らがコトバを話せたらきっと「わたしは人間です」と言うんだろうなぁと私は想像してしまう。
そんな楽しい想像を、今日も飼い主さんと散歩している犬ちゃんをみて微笑ましく思う。

 
 
 
 
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2024-12-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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