メディアグランプリ

日本人に見えなかったからこそ見えたこと


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記事:白峰優梨子(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
私は小さい頃、道を歩けば知らない人から「ハーフ!」「アメリカ人!」と蔑んだように言われる事が多かった。
 
それがもの凄〜く嫌だった。
 
確かに私の顔は彫りが深いし、小さい頃から背も高かったから、そう見られるのも仕方がなかったかもしれない。でも私の両親は日本人で二人の顔を合わせたのが私の顔だった。二人は平均的日本人の身長だったが、私の背が高いのは母方のおばあさんが大きい女性だったことから隔世遺伝だと言われていた。だから橋の下から拾ってきた子や、どこからかもらってきた子では無いという確信があった。
 
その当時は戦後アメリカ兵たちとの間に生まれた子供達は差別されたりいじめられたりしてたから、私を見た人たちはそういう子供だと思い込んだんだと思う。
 
言われるたびに嫌な気持ちになって「なんで私はこんな風に生まれちゃったんだろう……」「なんでこんなに背が高いんだろう……」「もっと普通の日本人みたいな顔や背で生まれれば良かったのに……」って思ってた。
 
そのうち「私が私じゃいけないの?」「なんだよ。見かけで勝手に決めつけるなんて!」と言われるたびに怒っていた。そしてどんどん自分の見かけが大嫌いでコンプレックスになった。
 
中学の時は部活の対校試合に出場すると、毎回相手校のコーチが私がハーフなのかどうかと聞いてくる。それをまたコーチが私に言ってくる。「もうそんなのどうでもいいじゃん」とうんざりだった。
 
高校生になってある雑誌で「夏休みアメリカ短期留学」の記事を見つけた。「アメリカに行けば、色んな人種や色んな大きさの人たちがいる! 私の見かけでも関係なく自由を感じられるに違いない!」とワクワクしたのだった。
 
そして渋る父親に毎日毎日頼み込んで、最終的には「成人式の着物はいらないからアメリカに行かせて!」となんとか説き伏せて、サンフランシスコの郊外にホームステイした。
アメリカでは私の身長は平均値でサイズの合う洋服も沢山あった。そしてサイズに関して言えば、小さいのから大きいのまで、ビキニなどは上下でサイズの違うのを購入できることや、今は日本でもあるけど、靴も幅の違うのも揃ってて感激だった。
 
様々な肌の色の人たち、ホームステイのママとパパはいろんな国の血が混ざっていて、そういう人たちが当たり前に沢山いる。
 
やっぱりアメリカって凄い国だ!
 
毎日楽しくて、日本に帰りたくない、この国にいたら幸せに生きていけるんじゃ無いかな、このままアメリカに居たいな〜って思ってた。
 
そんなある日、スーパーで買い物をしてレジで並んでいた時のこと。白人の大柄のお年寄りがいきなり私を見て「ジャップ!!!」と蔑んで叫んだのだ。声の方向を見ると、そのお年寄りは凄く怖い顔をして私を睨んでいた。
 
「え……」私は何が起きたのか分からず、フリーズした。
 
彼は、それ以上何も言わずに立ち去ったが、言われた私はもの凄くショックだった。
「私が日本人に見えたってこと? 日本だとハーフやアメリカ人って言われるのに……アメリカだとジャップって……なんなんだ〜〜〜?!」
 
後からよく考えると、そのお年寄りは第二次世界大戦で日本に対して嫌な経験をしたのかもしれない。でも結局「日本でもアメリカでも、見かけで勝手に判断するのは一緒なんだな」ということを思い知らされた。
 
だからその時「私は見かけで人を判断せずに中身を見よう」って思った。それでも自分の見かけに変わりはないから、相変わらず嫌いだった。
 
大学でお芝居を始めた。本名でやると案の定、お客さんから「あの人、ハーフ?」って聞かれた。あ〜、またか。お芝居を観て欲しいのに。いちいち聞かれるのが嫌で面倒臭いから役名でついたシーラという名を芸名として使うようになった。
 
面白いほど、そういう名前でやるようになったら誰も聞かなくなったので、安心してお芝居に専念することが出来た。
 
そのうちオーディションを受けるようになって、あるビジネス英会話番組のオーディションで、またショックな出来事があった。日本語のセリフと英語のセリフを言うオーディションで日本語も英語も素晴らしいと褒められたのに不合格だったのだ! 理由は日本人に見えないから。あ〜、もう〜。セリフは合格なのに、国籍は日本だけど、日本人に見えないからって、日本人に見えれば合格だったのか……。
 
また容姿のコンプレックスが再燃してしまった。
 
どうせこんな私なんかという思いに駆られてしまい、お芝居のオーディションも落ちまくった。もう最悪だった。いろんな本を読んだりして、なんとかこの状態から抜け出せないかと模索した。
 
その頃、葉祥明さんの絵と言葉の本に心が癒されて沢山読んでいた。ある日、新しい絵本『ぼくは はちぞう』が発売された。
 
ハチドリの巣にあった卵から生まれた子は、羽やくちばしのようなものもあるけど見た目がハチドリのヒナとは違う。ある日空を飛んでいて蝶々に出会って「あなたはだあれ?」って聞かれてハチドリだと思うと答える。そうは見えないと言われて「ぼくって、なんだろう?」って思い始める。象に似ているから行ってみると「そんなに小さい象は居ない」と言われてしまう。色んな生き物にも聞いてみるけど自分達とは違うと言われてしまう。
そして、ある時気付く。「ぼくは、はちぞうなんだ!」と。
 
最後のページで私はハッとさせられた。はちぞうは私だった。
 
作者である葉さんの言葉に「人間は一人一人、違った個性を持って生まれたユニークな存在です。しかし、物心ついた頃から、ずっと人と比較され、それでいながら画一化された生き方を強いられ、本当の自分が分からなくなってしまっています」とあった。
 
ホントにその通り! 私自身がずーっと人と比べてた。そして自分なんてダメだって自己卑下してた。私は日本人だけど日本人に見えない。それはダメでもいけないことでもない。
 
「わたしは わたしなんだ!」
 
 
 
 
***

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2024-12-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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