【部下スタッフを育てる指針とは】 ~私の失敗から学んだ「おもてなし教育」の指導方針~
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:羽富 都史彰(ライティング・ゼミ9月コース)
1. 頑張っていたつもりだった私
私は小売・サービス業に43年間関わってきました。その間、店舗運営や人材育成に力を入れ、「結果を出すこと」に全力を注いでいました。現場では、部下に厳しく接し、目標達成のために自分も周りも追い込む姿勢で取り組んでいました。
特に、スタッフ教育においては「一人ひとりが目標に向かって努力すれば、必ず結果を出せる」と信じていました。そのため、失敗には厳しく対応し、改善を促すことを続けていました。しかし、そのやり方が正しいとは限らなかったのです。
2. 上手くいかなかった現実
一例を挙げると、ある女性スタッフがタバコの臭いを残したまま売り場に立っていたことがありました。その時私は「サービス業なのだから、モラルを持つべき」と注意しました。しかし、それがきっかけで彼女の態度が改善したわけではなく、同じ問題が繰り返されました。
また「お客様に笑顔を届ける環境を作ろう」と指導しても、スタッフたちは「何を具体的にすればいいのかわからない」と戸惑うばかり。次第に「やる気がないのではないか」「この仕事に向いていないのでは」と思うようになりました。しかしその一方で、「自分の教え方に問題があるのではないか?」という疑問も心に芽生え始めていたのです。
3. 私が得た気づき
その疑問を深く考えるうちに、「部下の行動には全て原因がある」という事実に気づきました。
例えば、先ほどのタバコの例。彼女が問題を繰り返した理由は、「売り場に戻る前に臭いを消す方法やその必要性」を教えていなかったからでした。「それくらい常識だろう」と思い込んでいた私ですが、新人にとっては「知らない」ことだったのです。
また、「人格」と「行動」を分けて考える重要性にも気づきました。仕事ができない原因は、人格ではなく「行動の仕方」を知らないだけのことが多いのです。行動を変えることで、誰でも成長する可能性があると学びました。
4. 改善策
私が行った改善策は、次の4つです。
1.行動を具体的に分解する
優秀なベテランスタッフの行動を観察し、それを細かく分解しました。例えば、「笑顔を作る際の表情のコツ」「挨拶のタイミング」「売り場の清掃手順」など、一つ一つの行動を具体化しました。
2.行動の意味を伝える
分解した行動リストを基に、「この行動がどんな効果を生むのか」を丁寧に説明しました。例えば、「笑顔で挨拶することでお客様が安心し、信頼感が生まれる」など、行動の背景や目的を明確に伝えるようにしました。
3.叱るのではなく寄り添う
部下がミスをした際には、怒るのではなく、「なぜその行動を選んだのか」「どうすれば改善できるか」を一緒に考えました。叱責ではなく対話を通じて、部下の理解を深めることを大切にしました。
4.反復練習を習慣化する
新人スタッフには、100点を取るまで何度でも反復練習をさせました。行動が自然に身につくまで繰り返すことで、自信を持って仕事ができるようにしました。
5. 振り返りと未来への指針
これらの改善を行った結果、スタッフたちは次第に自発的に考え、行動し、成果を出すようになりました。仕事に喜びを感じるようになった彼らの姿を見て、職場全体の雰囲気も明るくなり、売上や顧客満足度も向上しました。
今振り返ると、私が間違っていたのは「教える」と「伝える」の違いを理解していなかったことです。部下が行動に迷っているのは、単純に「やり方」とその「意味」が伝わっていなかっただけなのです。
例えば、自転車を初めて乗る際の練習を思い出してください。一度バランスを覚えてしまえば、たとえ数年乗っていなくても、すぐに乗れるようになります。それは、「体で覚える」という経験が身についているからです。同じように、仕事のスキルも反復と経験を通じて身につきます。
また、初心者マークをつけた運転免許取得者も最初は坂道発進や縦列駐車に苦手意識を持つものです。しかし、何度も経験し、やり方を理解すると、自然とスムーズにできるようになります。部下教育でも、この「慣れ」と「経験」が非常に重要なのです。
結論
部下を育てるためには、彼らの「行動」をしっかり観察し、その原因を探ることが第一歩です。そして、「行動を分解して具体化し、意味を伝える」ことを繰り返すことで、部下は自ら考え、成長するようになります。
さらに、「経験して身につける」という視点を大切にしましょう。たとえば、自転車に乗る練習や運転技術の習得がそうであるように、実践を通じて得た経験は、自然と記憶に根付き、長期的な成長につながります。
「おもてなし」の心も、丁寧な行動を通じて初めて育まれるものです。この考え方が、部下育成に悩む方々のヒントとなれば幸いです。
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