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引き出す

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀越ひでき(ライティングゼミ9月コース)
 
 
あれは10年以上前、社会人駅伝をテレビで観戦していた時のことだ。画面には、肩を怒らせて両手を大きく振りながら力強く走る選手が映し出されていた。その選手のフォームは、美しいフォームとは言えないが、僕には、その人の必死さが伝わって来るように感じた。決して速くはないが、その姿には不思議と目が釘付けになる。先頭集団にいるわけでもない彼がテレビ画面に映し出されているのは、解説者の言葉によると、彼がチームに与える影響の大きさに理由があるという。
「彼は、決して速いわけじゃないんです。でも、彼が走るとチーム全体の成績が良くなるんです」と語られた言葉が、妙に心に残った。
 
スポーツで「勝たせる」存在といえば、真っ先に思い浮かぶのは「エース」のような存在だろう。大谷翔平選手のような人は、その圧倒的な実力で勝利を引き寄せる象徴的な存在だ。しかし、その駅伝選手はエースではない。にもかかわらず、彼が走るだけでチームの成績が良くなるという事実があるのならば、それはどういうことなのだろうか?
僕の中で、その選手の存在がずっと引っかかっていた。エースのように目立つ実績や記録を持たなくても、周囲に良い影響を与える力を持つ人がいる。
それはどんな力なのだろう? 
そういった力を持つ人が、なぜ他の人と違う影響を及ぼすことができるのか、僕は気になった。
そして、それはやがて「人の能力を引き出せる人」というテーマへとつながっていく。
 
食材の「本気」を引き出す料理人との出会い
 
数年後、YouTubeで偶然見つけたある料理人の動画が、僕に新たな気づきを与えてくれた。その料理人は、特別な高級食材ではなく、普通のスーパーで買える食材を使って料理を作るのだが、その料理が抜群に美味いのだという。そして彼の哲学が興味深い。彼は食材との出会いを「一期一会」ととらえ、その食材が命を捧げてくれたことに感謝しながら、食材の「本気」を引き出すことを心がけているというのだ。
 
「食材の本気を引き出す」とはどういうことなのか? 単に美味しく料理するだけではなく、その素材が持つポテンシャルを最大限に発揮させる技術や思考のことを指しているらしい。これは、ただの料理技術を超えたものだ。そして僕は思った。チームの成績を上げる「目立たない選手」の存在と、この料理人の哲学には、共通点があるのではないかと。
 
人の力を引き出す「出汁のような存在」
 
チームに良い影響を与える人というのは、その場に潜在するポテンシャルを最大限に引き出すことができる人だと言える。そう考えると、人間の能力や個性は、ただ普通にしているだけでは表面化しない可能性がある。つまり、「引き出す」存在が必要だということだ。
 
この「引き出す力」は、監督やコーチといった人たちによる外側からのリーダーシップとして求められる能力のようにも思える。
しかし、あの駅伝選手のように、必ずしもリーダーである必要はないのではないか。
むしろ、料理で言うところの「調味料」や「出汁」のようにチームに内側から働きかけ、全体を引き立てる役割を担っているような人の存在が重要なのではないか。
出汁とは、料理のベースとなるもので、個々の食材の味を引き立てる効果がある。これと同じように、チームにとって「引き出す存在」は、他のメンバーが持つ力を引き出し、全体を調和させる役割を果たすのだろう。
それは、以下のような行動ではないかと思う。
冗談を交えて場を和ませ、小さな笑いを作る。
ミーティングで他のメンバーの意見を引き出し、議論を深める。
仲間の小さな成功に気づいて、声に出して褒める。
 
こういった行動をする人は、チームの調和を保ちつつ、その場の「空気」を良い方向に持っていくことができるはずだ。
そうした人々は、多くの場合、オープンマインドで誰とでもフランクに接することができるだろう。
 
自分を「引き出す」力
 
また、ここで気づいたのは、自分自身の力を「引き出す」ことの重要性だ。先ほどの料理人の哲学を借りれば、自分という「素材」にも無限の可能性があるのではないだろうか。僕たちは、自分の中に眠る能力や特性に気づかず、普段の生活を過ごしていることが多い。それを引き出してくれる存在がいれば理想的だが、同時に自分自身でその可能性に向き合う努力も重要だ。
 
僕が駅伝選手や料理人から学んだのは、どんな場面でも周囲の力を引き出せる存在がチームを一歩先に進めるということだ。そして、それは周囲だけでなく、自分自身にも応用できる考え方である。僕たちが日常の中で「引き出す」存在を目指すことで、もっと豊かで充実した関係や成果を築けるのではないか。
 
スポーツでも、仕事でも、日常生活でも、「引き出す」力を意識して生きてみたら、面白いかもしれない。もしかしたら、それが自分の中の「本気」を引き出し、周囲に良い影響を与える鍵になるかもしれない。
 
 
 
 
***

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2024-12-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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