車いす生活で気づいた、京都の人々のやさしさ、町の暮らし
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記事:松本尚美(ライティング・ゼミ9月コース)
私は半年間車椅子で過ごしたことがある。
雨の中、滑りやすいタイル道を走っていて仰向けにツルッ、すってんころり
と派手にこけた。その後しばらくは気合で歩けたが、数時間立つと痛みがひどくなった。歩けなくなった。左股関節捻挫と診断され「自宅で安静にしていなさい」と医師の指導を受けた。
痛くて歩けないのだが、どうしても外出したいことが、出てきた。
突然救急車で病院に搬送された父の見舞いに行きたかった。歯医者に緊急に通院する必要ができた。
車椅子を使うにはとても勇気がいった。何日も悩んだ。「人に迷惑をかけたくない。人目をひくと恥ずかしい」しかし、それ以上に外出したい気持ちがつのり、思い切って車椅子をレンタルすることにした。
はじめて電車を使って外出するときには、たまたまヘルパー経験がある人に付き添ってもらえた。電車やバスの乗り方を教えてもらい自信がついた。
以降、一人で、車椅子を使って出かけるようになった。
一人で車いすに乗って外出すると、普通に歩いていた時には全く気づかなかった「発見」がたくさんあった。
道路に段差が多いことは、子育て中にベビーカーを使った経験があったので分かっていたつもりだった。が、車いすでの自力移動となると自分の体重が乗っかった車いすを自分の腕力で持ち上げなければならない。ベビーカーよりも、もっと大変だった。
怖かったのは、道路と線路が斜めに交わっている踏切だった。線路に対して、車いすのタイヤが直角になるようにアクセスすれば問題がなく渡ることができる。が、ある日十分注意していたつもりなのに、車椅子のタイヤがレールにすっぽりはまってしまったことがある。身動きができなくなった。近くを歩いていた人が車椅子を動かしてくれたので電車に挽かれずに済んだ。当時、5年間で12件ほどの車いすによる鉄道事故があると聞いた。危機一髪で助かった。命の恩人ができた。
電車を利用したときには、テキパキと動いてくださる駅員さんがとてもかっこよかった。ブザーを押して車椅子の利用を伝えるとすぐにホームと電車をつなぐ板を持って、駆けつけてくれ、ほとんど電車に乗り遅れることはなかった。
ある時電車に乗ると、隣に座った年配の男性が「みんなに迷惑がかかるから、車いすで洗車に乗るべきではない。タクシーを利用しなさい」そのような考えの方もあるのだな。
京都市バスの対応も手早い。ワンマン運転。運転手さん一人で板を降ろしてササッと手早く車椅子を押して乗せ、固定してあっという間に出発。手際の良さと親切な声掛けには感動する。
ちょうど先日、たまたま京都市バスに車いすで乗りこむ人に出会った。運転手さんが「固定しますか?」と質問され、「いや必要ないです」と車いすの方が答えられた。柔軟な対応がとてもいい。車椅子利用者といっても重度軽度、いろいろ人によってさまざまなので、「このように気軽に意思疎通できるのが一番!」と思感心した。
最後に「京都の人たちの親切さ」を紹介したい。これには本当にびっくり。感謝しかない。
私が本当に困っている時だけ、どこからか誰かが助けにとんで来てくれた。サラリーマン風の男性、若者、女子中学性、高校生。年配の男性、女性。
「一声かけるのにどれだけの勇気が要っただろう。私ならできなかったかもしれない」今でもとても感謝している。そこから今でも仲良くお付き合いしてくださっている方もいる。
不思議なことに、私が困っていなかったら、静かに見守っていてくれているようなのだ。
「困った。どうしよう」と立ち往生したときに限って「サッ」と、どこからともなく人がとんできてくれるのだ。遠巻きに見て気配を読んで、「必要!」とあらば、とんできてくれるの「気配を読んで察する力」と「優しさ」
松葉杖を使っている知人から聞いた話だ。「大阪人は松葉杖を見ると寄ってきて、話かけてくる」らしい。東京では、全く無関心な感じだったが「バタっ」と自分が転倒した瞬間、四方八方から助っ人が現れて「大丈夫か?」と立たせてくれたそうだ。土地柄の違いが面白い。
「私は半年ほどの車いす生活をしていたことがります」というと「大変でしたね」と声をかけられることが多いが、人のやさしさを知るいい機会になった。町のちょっとした段差が障害になることも身をもって知ったことも、「立場が変われば、これってどうなの?」と考える習慣をつけてくれた。
「人生の困難は私たちをより強くするために意図されています。苦しいものになるためではありません」ダン・リーブスの名言がある。
半年間の車いす体験も、私にとってはとても良い体験だったと思う。
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