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義妹に学ぶ、義実家に愛される嫁の条件


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:加藤 真矢(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する」とはいっても、
愛する人の家族には、できれば歓迎され、愛されるに越したことはないのではないだろうか。
 
6歳下の弟の奥様は、私の母をはじめ、加藤家全員がメロメロになる存在。
一体彼女の何が、そうさせるのか、
その手腕に学びたいと思う。
 
彼女、沙織さんとの出会い方は実は最悪だった。
当時私は30代後半に差し掛かる年齢ながら、結婚していないどころか彼氏もおらず、
行き遅れた娘として、加藤家には頭の痛い存在だったことと思う。
 
夏休み中、実家に帰省し、朝の6時半に起床して顔を洗っていると、
突然弟の声が耳に飛び込んできた。
 
「えっ、お姉ちゃん、いるの!?」
 
沙織さんとデートに出かける前に、実家への忘れ物を思い出して取りに帰ったらしい。
私が帰省していることは知らずに、動揺していた。
 
「あの、朝からすみません。またゆっくりご挨拶させていただけたら……」
 
洗面所越しに、遠慮がちな、でも鈴を転がすような可憐な声が聞こえてくる。
若くて可愛らしいだろう姿を想像し、どすっぴんの私は、どうか早く去ってくれと泣きたい気持ちになった。
 
「……真矢、ちょっと出れるかね」
 
今度は、少し困ったような父の声が聞こえてくる。
両家顔合わせが終わり、どうやら加藤家で私だけが、沙織さんと顔合わせできておらず、どう言いだそうか悩んでいたらしい。
独身で気を使われていることも含め、惨めな気持ちになった。
家族全員が待ち構えている空気を感じ取り、仕方なく、顔をふいて、表に出る。
 
「はじめまして、姉の加藤真矢です」
「岡部沙織です。突然すみません。お目にかかれて光栄です」
 
私の一回り下という彼女は、20代で、若くて可愛らしく、
ナチュラルメイクが肌の若々しさを引き立てていて、
アラフォー、どすっぴん、ほとんどパジャマ姿の私は、消えてしまいたかった。
 
しかしながら言葉遣いがとても美しく、
気取らないファストファッションが清楚で、
とても感じが良かっただけに、益々自分のことが惨めに感じてしまう出会いであった。
 
その後私の転勤により、3歳下の弟、6歳下の弟夫妻とも全員東京に住むこととなり、
何度か、きょうだい会を開催し、
ある日の私の誕生日月、彼女からプレゼントをいただいた。
美しいパッケージカラーのハンドクリーム。
 
「ラベンダー色がお好きかなと思って、選びました」
 
好きなものの会話なんてしたことがなかったのに、
それまでのきょうだい会で私が着用していた服やメイクの系統を細やかに見ていたようで、
好みドンピシャのパッケージ。
彼女の観察眼に恐れ入り、
男きょうだいで、このような機会がなかった私は、いたく感動し、心を奪われた。
 
聞くところによると、母も同じように、彼女の細やかな気遣いを受けていたらしい。
 
「大したものじゃないのよ。でもいつも、会う度に、ハンカチやリップクリームとか、ちょっとしたものをくれるの。お返しをしなくちゃと気を使いすぎないようなものをね。母の日や誕生日にはエプロンやお花とか、本当に『プレゼント』って感じのものもくれるのだけど、クリスマスやバレンタインデーとかにはメッセージカードもくれて、それが楽しみで」
 
実家でよくよく観察すると、沙織さんからもらったというメッセージカードが綺麗に飾られていた。
ある年のクリスマスカードには、不妊治療の末に子どもを授かったことが綴られていて、
デリケートなことも包み隠さず義理両親に打ち明ける姿勢に驚くとともに、
 
「悲しいこともあり、時に衝突することもありましたが、不器用ながらも必死に支えてくれる優人くんには本当に感謝しています」
 
と、弟に対する感謝で締めくくる文面からは彼女の人柄が溢れ出てくるようで、
息子に対してこんなこと言われたらそりゃ嬉しいよね、
最高のクリスマスプレゼントだよね、
としみじみ彼女の女子力には脱帽するばかりであった。
 
ある年の年末年始には両親が上京し、加藤家全員が一同に会することとなり、
そこで母から切実な相談を打ち明けられた。
 
「沙織さんに、どうしても、プレゼントを買いたいの。いつもお世話になっているから、どうしてもお返しがしたいの」
 
夜の待ち合わせを前に、母と百貨店巡りをした。
あれでもない、これでもないと妥協を一切許さぬ姿勢の末に、
足を止めたのは某高級キッチンウェアブランド。
 
すごい……こんなものを贈りたいと思われるなんて。
 
正直ちょっと嫉妬してしまった。
けれど、彼女にはそうしたいと思わせる、圧倒的な人間力があった。
ブルー、オレンジ、ホワイト、ピンク、
鮮やかな食器をどう組み合わせてプレゼントするか、小一時間悩む。
一度お会計に足を運んだものの、やっぱり違うと売り場に戻り、
 
「ねえ、真矢ちゃん、こっちの組み合わせの方がいいかしら」
 
お会計と売り場を何度も行き来して悩む母に、
困ったような笑みを私へ向ける店員さん。
二時間ほど悩んだ末にお買い上げし、待ち合わせ場所で彼女にプレゼントした。
 
「えっ、こんな高級なものを!? お義母さん、すみません」
 
暫く経って、その後どうしているか、義妹に尋ねると、
 
「実はもったいなくて、割るのも怖くて……飾ってます(笑)」
 
そんなこと言いながら、きっと、
再び私の両親が来たときに、見えるようにしてくれてるんだよね、と
相変わらずのさりげない心遣いに、恐れ入った。
 
義実家の心を掴むのは必ずしも高級品ではなく、
負担に感じさせないようなプチギフトや、
信頼してデリケートなことも打ち明け、感謝の気持ちを伝えるメッセージを通して
相手方家族を大切に思っていることを伝えること。
いつかのいつか、嫁に行けることになったら、参考にできるとよいのだけど(笑)
 
尚、娘としてツボだったのは
「ワシは知らん!」
と一人拗ねる父の姿であったことは内緒。
 
 
 
 
***

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2024-12-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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