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渋谷の中心で誓った「私は、一流の俳優になる」

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*この記事は、「絶対麗度ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

絶対麗度ビューティー・レコーディング・ラボ

記事:izmy(絶対麗度ライティング)
 
 
これまで力を尽くしてきたプロジェクトの成果が認められ、管理職に昇進し、仕事に邁進している私。ちょっとした肩書きがつき、誰にも分かりやすく「成功」「成果」を収めた。女の幸せは結婚、出産、幸せな家庭、と言われているけど、そうではない幸せもあるんだよ。私はこれまでの努力が報われた幸せと、これからのやる気と希望に満ちて、江ノ島を見ながらウェディングドレスで微笑んでいる。
 
こうなるはずだった。
2024年3月にはこれらが現実になって、絶対麗度も半年で余裕の卒業、と踏んでいた。しかし、前半の筋書きは見事に打ち砕かれた。さらに、秘めフォトウェディングの撮影前にひどい花粉症を発症してしまい、ティッシュが手放せない、鼻がカピカピ。これでは撮影の参加も危うい。すっごく楽しみにしてた撮影。「ウェディングドレスを着たい!」という執念で、症状を抑えて、湘南天狼院に乗り込み、なんとか「江ノ島を見ながらウェディングドレスで微笑んでいる」は叶えられた。
 
4月になると会社の体制が大きく変わり、いままで私に目をかけてくれた人はみんな異動してしまった。
舞台は暗転した。
強いリーダーシップで厳しくもチャレンジングなストーリーを描き、活躍できる役を与えてくれていたボスがいなくなり、次のボスの周りには、ベテラン層とボスの飲み友達で固められている。
愛想がなく、不器用で、ちょっとポンコツな私は、次の幕で、気づけば控え選手のような立ち位置になってしまっていた。
 
「なんとか流れを変えたい」と、人生で一番おみくじを引いた年でもあった。
京都秘めフォトの後に引いた六波羅蜜寺のおみくじは、生年月日と性別をもとに、より自分の星回りにあった運勢が書かれているのだが、そこには「与えられた本分を責任を持って全うせよ。自重してお過ごしください」と書かれていた。
他の神社仏閣のおみくじもアンラッキー寄りで、人が去り、健康を害し、仕事を失う、のような、恐ろしいことが書かれた上で、最後に「控えよ」がお決まり文句だった。
 
悶々とする~!!
動きたいのに!
でも、私は何をやりたいか、分からない。夢も特に、ない。
 
少女時代の夢を思い出してみた。
富士山が見える田んぼの真ん中にある中学校にて、文集に書いた夢は「都会で白いスーツ着てバリバリ働く秘書」だった。
職種こそ違うが、今は、旧江戸城のお堀の傍らにある素敵なオフィスで、それなりに働いているので、ある意味、夢は叶っている。
 
家庭の事情で東京に引っ越し、武蔵野某所の立て直し直前の古い高校にて、卒業アルバムに書いた夢は「銀座に店を出して、ママになる」だった。
一国一城の主に憧れはあるが、コミュニケーション能力が低いくせに思い切った夢を描いたものだ。
 
それにしても、夢の持ち方に一貫性がない。
ただひとつ、「彼氏とずっと一緒にいたい!」は思っても、「お嫁さんになりたい」とか「お母さんになりたい」を夢見たことが無かったことだけは、一貫している。
 
あー! もう! こんな会社辞めてやる! 銀座のクラブで働くんだ!!
と心の中で何度も叫んだが、実際はそうもいかない。
今ある場所で、ふて腐れたり、機嫌が直ってやる気が出たり、不安定な感情と付き合いながら日々を過ごす。
ポジションが思い通りになっていないだけであって、冷静に考えれば、やりたい仕事はできているし、なんなら、残業が減って「時間」という武器ができて、はたからみたら、非常に恵まれているのかもしれない。
 
だけど、一種の敗北感と、危機感は拭えない。
「時間」という武器を使って、天狼院書店さんの講座を主に活用させてもらって、いろんなことにトライしてみた。生成AIの勉強、ライティング、自己啓発、読書、などなど……。
「時間術」や「整理術」の講義を受けることで、うまく時間を使えるようになり、仕事をしながら学びも並行してできる体力が備わった。先延ばし体質も改善した。
ライティングゼミでは、もやもやした思考を言語化することで頭の整理をすることができ、心の安定につながった。仕事のメールやドキュメント作成も早くなって、仕事を速やかにたくさんこなせるようになった。
仕事につながる講座を重点的に受講しながら「今に見てろ、仕事で飛躍してやる!」と闘志を燃やしていた。
 
ある日、天狼院書店のスタッフさんが「演劇講座をオープンしたので、ぜひご参加してみませんか? 演劇を体験することで、秘めフォトでの表現力もアップするかと!」とご案内をくださった。
演劇ゼミはまったくのノーマークだった。
文化人の領域で、ビジネス向きではないよな……と思いながらも、体験したことがない領域だったので、おしゃべりの練習も兼ねて、一度行ってみるか、と気軽な気持ちで参加することにした。
 
行ってみると、先生もゼミの仲間もとっても良い人たちで安心した。黙々とデスクワークをする日常生活では出会えないような、芸能や表現を楽しむ刺激的で豊かな世界だ。しかし、人前でしゃべるのが苦手な私は、最初の3回までは、しゃべるのがつらすぎて登校拒否をしようかと何度も考えた。でも、ここで辞めたら、一生おしゃべりが苦手なままだ。自信を持って、笑顔で爽やかに話せるようになっている自分を思い浮かべて、ゼミに通い続けた。
 
講座のアーカイブ動画を見て、自分はしゃべるときにこんな表情をして、こんな声なんだ、と、秘めフォトとは違った角度で、自分をさらに知ることもできたし、日々の話し方や表情も少し改善することができた。
 
本番では無事、楽しく舞台で演じることができて、自分のハードルをひとつ超えられた大きな充実感があった。さらに自分のコントロール力を磨きたくて、2シーズン目も申し込みをして演劇に取り組んでいる。こんなに自分の気持ちは変化するのかと驚く。
 
相変わらず仕事場は、自分の思うようなステージにならず「新しいことを自分で考えて作るんだ」というモチベーションも失われ、つまらない気持ちで過ごしている。モチベーションがなくても、それなりに寝て食べて運動して働き続けられていることは、自分を多少コントロールできるようになって、大人になったような気もする。生きていれば超ラッキーというレベルの運勢だったから、ここまで生き延びられているだけでも十分、今年の目標は達成か?!
 
トラブルがなく仕事を終えることができて、ホッとしながら渋谷に向かう。今夜は演劇ゼミ。
 
稽古の前に、台本の読み解き方について、先生の講義がはじまる。役者としての心構えや、考え方、アプローチ方法を、シェイクスピア作品を読みながら軽快なテンポでレクチャーしてくれる。
舞台なんて、会社員かつデスクワークの私には程遠いな、と思う。
でも、別世界の考え方を学ぶのは新鮮でワクワクする。
 
舞台における自分の与えられた役が、ストーリー全体や場面にどんな役割があり、他者に対してどういう行動ができるか? を考える場面で、先生はこう付け足した。
「セリフや出番が少なくてふて腐れるのは、二流の俳優がすることなんです」
 
どきっとして顔をあげ、先生を凝視してしまった。
 
それ、会社での私じゃん。
 
楽しい講義と稽古はこの後も続いたが、二流俳優であることが気になって仕方なかった。
 
ゼミ終了後、先生に「一流俳優の考え方をもっと教えてほしい」と質問した。
「なんか、普段の仕事にもつながるな……と思いまして……」
すると先生は「いやいや『自分が一流俳優』と言っているみたいでお恥ずかしいですが……」と照れ笑いしながらも、優しい口調で教えてくださった。
 
一流の俳優は、例え脇役だったとしても、ストーリー全体を理解して、その役の目的や価値を認めて、いかに役割をまっとうするかを考える。
たくさんセリフがあるから観客に印象が残る、というわけでもない。
仕事場に置き換えると、花形の仕事であっても、サポートする人がいないと回らないことが多い。すべての役に、担うべき役割が存在している。一人も欠けてはならない。
 
冷たい雨が降り、ネオンがふわりと煌めく渋谷からの帰り道、この一年の自分を振り返る。
 
私は主役になりたかった。
でも、主役になりたい、と言ったことはない。仕事で成果を上げれば、おのずと主役は回ってくると思っていた。
だけど現実は、そうならなかった。
自分が築いた舞台は、思想もキャリアも相容れない別のメンバーにがらりと入れ替わった。
元ボスの構想のもと、プロジェクトの立ち上げメンバーとして四苦八苦しながら一定の成果物を残し、途中で潰すことなく安定期を迎え、ベテランリーダーに代替わりができるほどに成長をさせた。
一緒にプロジェクトを走ったメンバーが一足先に評価を手にして、それを「自分が主体的にやっていた」とアピールしている姿には、さすがに失望した。せめて、私がプロジェクトの主力から外れるときに、「あなたのおかげで」とか「これまでありがとう」とか言われていたら、拗ねたりしなかったのに、な。
でも、今では「仲間が『私が主役だ』とアピールできる舞台を、ひたむきで丁寧で粘り強い黒子となって支えていた」と胸を張って言える。
 
これまで、どのプロジェクトに携わっていても、最後は誰かに引き継いで、次の未開の地に赴いた。
初めから耕した場所で主役に居座りたいと思いつつ「あの海の向こうには何があるんだろう」と向こう見ずな好奇心も発揮されて、ひとつのところに留まれない自由奔放な旅人の私もいる。
後ろ髪はもう十分に引かれて、ひととおりジタバタした。綺麗にカットして、次の目的地に出発しよう。
 
今の私がやれることは、一歩引いたところから、周りを見て、いろんな人の役割の価値を理解すること。リーダーの仕事でサポートできそうなことを一緒に取り組むこと。生成AIなどの技術の情報収集をして、チームに共有して興味をもってもらうこと。実直さだけでなく、相手を楽しませようと企てる。様々な感情が生まれて揺さぶられても、自分をコントロールして美しい姿勢と表情を保つ。美しい笑顔・かしこい戦略・豊かな情報がウリの、よろずや相談所になること。
そして、いつか、まだここにない新しい役割を開拓して、仲間づくりをして、みんなが輝くビジネスの舞台をプロデュースしたい。
 
「与えられた本分を、責任を持って全うせよ」
一年を通じて言われていたことは、こういうことだったのか。
まるで、私の行動や心の中も見えていたかのように、告げてくれてるよね、おみくじよ。
 
世界を見るからこそ、観客を見るからこそ、いろんな役回りを経験するからこそ、自分よがりにならず、バラエティに富んだ、とびきりにおもしろい筋書きを描けるのかもしれない。
そうならば、今の役を楽しんで思いっきり演じ切り、舞台を盛り上げよう。
主役じゃなくても、一流になれる。
これから創るストーリーのために、視線を上げて、決心した。
「私は、一流の俳優になる」
 
 
 
 
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この記事は、天狼院書店の「絶対麗度ライティング」にご参加の方が書いたものです。

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2024-12-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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