「秘めフォト」撮影直後に海外に飛んだら、思いがけない相手にナンパされた話
*この記事は、「絶対麗度ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:加藤真矢(絶対麗度ライティング)
脱いでる場合じゃないんだけどな……。
その日、私は、48時間後にドイツ渡航を控えていたにもかかわらず、
荷造りが全く手つかずのまま、カメラの前でランジェリー姿になっていた。
天狼院書店の「絶対麗度プロジェクト」では、「他人が決める相対的な美しさではなく、自分が決める絶対的な美しさ」を手に入れるためのさまざまな企画があり、中でも魅力的なコンテンツの一つとして「秘めフォト」撮り放題がある。
一度参加すると、見たことのない自分に出会える感動が病みつきになり、
この日も、無事にフライトに間に合うのか極めて危機的な状況の中、
それでもカメラの前に立たずにはいられない自分に、
半ば、自分でもちょっと呆れていた(笑)
加えてこの日は、映像サービス「秘めフォトCINEMA」の撮影も合わせて行われ、いつになく盛り上がっていた。
「もう、皆さんがうますぎて……」
「眼福!」
「秘めフォト」で培った自分なりの表現力を武器に、
ものの数分の間に、なめらかに表情とポージングを変え、
鮮やかにトップレスに、
艶やかに撮影を終えていく参加者に、
見学で残る参加者も続出し、ため息と歓声の嵐。
「ご出発に間に合いました!」
通常、「秘めフォト」は48時間後に写真データを納品いただくところ、
アシスタントの女性から、なんとその日のうちにいただいた。
私の荷造りはまだ終わっていないのに(笑)
うん、今回もよいではないか。(ニヤリ)
ピュアな私、煽情的な私、茶目っ気のある私……、
「秘めフォトCINEMA」の納品は帰国後のお楽しみに、
荷造りを諦めた私は、最低限の荷物を持って、ドイツへ飛んだ。
趣味のヴァイオリンを本場ヨーロッパで学びたく、渡航した私は、
早速移動でつまずいた。
旅行者用の公共交通機関乗り放題チケットを、アプリ版を購入したはずが、
印刷しないと使えないやつだった。
印刷なんて、していない……。
それなりの格式のホテルなら、印刷ぐらい快くしてもらえただろう。
しかし格安ホテルに泊まった私は、フロントの男性に渋い顔をされていた。
「そういうことはしていない」
困った私は、
精一杯目を潤ませ、男性を見つめて、
「本当に困っている。これがないと私は移動できない」
何度か頼み込んだ。
(今思えば、「秘めフォト」で培ったはずの表情を駆使した……のかもしれない)
「分かった。同僚に相談してみる」
ほどなくして女性従業員が出てきて、
四苦八苦の挙句、私のスマートフォンとホテルのプリンタをWi-Fiで繋ぎ、
チケットを印刷してくれた。一安心。
「本当に、ありがとう! 助かった!」
それから彼とは毎朝、ホテルを出る時に挨拶を交わすようになった。
「ハロー!」
海外のホテルの従業員はみんな、そのようにフレンドリーなものかなと思った。
しかし、ただ微笑んで見送ってくださる女性も多く、
積極的に絡んでくるような方は今思えばあまりいなかった。
ドイツ・ベルリンに二週間、滞在していたのだが、
ベルリンは北海道より北部にあり、12月に入ると氷点下になる。
ある時、ホテルのロビーにある暖炉に火を灯す彼を見かけた。
柔らかい光が辺りを照らす。
「素敵ですね」
「でしょう。暖かいですよ」
営業スマイルから、くだけたような自然なスマイルになり、
随分友好的な従業員だなあ、ぐらいに思っていたのだ。
この時は。
ベルリンでは四つ星以上のホテルでないと、フロントが24時間営業ではないらしい。
格安ホテルだったので、平日は22時半までの対応、土日はフロントが閉まっていた。
日曜日の帰国を目前にした金曜日、
夜のコンサートに出かける前にドレスアップのため、
外出先から一時ホテルに戻ると、彼がいた。
「いつまで滞在しているの?」
そんなことは宿泊データを見れば分かるだろうと思いつつ、
「明後日の日曜日にチェックアウトするの。
だから、あなたに会えるのは今日が最後ね」
どちらかというと奥手な私は、
日本語だったら、こんな顔から火が出るような台詞は出てこないように思うけれど、
今思えばこれは、私が仕掛けたんだな。
「……そうなんだ。コーヒーでも、どう?」
ホテルの従業員だから、ルームサービスの話をしているのかと思った。
格安ホテルなので、そんなものは提供されていなかったので、
怪訝に思って、聞き返した。
「え、今、ここで?」
「今夜か、明日の夜に」
えっ、デートのお誘いか……!?
サービス業の従業員が、客をナンパするなんてことがあるのか!?
呆気に取られつつも、
今夜はコンサートがあるし、
明日の夜は行けなくはないが、今度こそ荷造りをしないといけないし(笑)
まだまだベルリンでやりたいこともある。
「ごめんなさい、友達と約束があるの」
そんなものはなかったのだが、
きっと嘘と見抜かれていたと思うけれど、
「そうか、最後までよい滞在を!」
と明るく見送ってくれた。
なんとなく再び顔を合わせたくなくて、
フロントからではなく、裏口からホテルを出てコンサートへ向かった。
翌日、ベッドメイキング終わりの客室に戻ると、
ベッドの枕の上に小さな赤いものがそっと置かれていた。
サンタクロースのチョコレート。
ベルリンでは11月最終週からクリスマスマーケットが始まり、
街はクリスマスムードに包まれていた。
シーツの交換も彼がやっていたように思い出した私は、
お返し? に日本のホッカイロを置いて、チェックアウトした。
異国の地で生きていくためではあるけれど、
「秘めフォト」で自信をつけた私は、
気が付かぬ間に、大胆に異性を誘惑する術を身に付けていたのかもしれない。
帰国後に確認した「秘めフォトCINEMA」には、また違う自分がいたけれど、
その魔法はまた、別の機会に。
***
この記事は、天狼院書店の「絶対麗度ライティング」にご参加の方が書いたものです。
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