お手玉を楽しむように。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:奥村麻香(ライティング・ゼミ年末集中コース)
子育てをしていく中で、「自分としてどう生きるか」がどうしても後回しになる。
それは仕方がないことだし、その時間に大切な意味があるとも思っていた。
子どもを抱え、てんてこ舞いしている時に、子育てが終わった先輩ママに「本当にあっという間に大きくなるんだから今を楽しんでね」と言われても、「楽しむって?」といつまでもこの状況が続く気がしていた。そのときの玉は二人の子どもだった。初心者の私は、玉二つで精一杯だった。
上の子が小学生になった頃、「ここで仕事を得るには?」と考え、通信制の大学に通い、教員免許を取ることにした。大学生だった当時は、選択肢の中に全く入っていない職業であったので、免許を取るための単位や実習をしている同級生を横目にバイトに明け暮れていた。今回は最短2年で単位を取るため、レポートや毎月のテストに追われていたが、子どもと離れてスクーリングに通う時間が自分だけの本当に貴重なものだった。二つの玉の扱いにも慣れていたので、「なんとかなるだろう」と学業というもう一つの玉を加えた。
単位修得は順調に進み、2年後地元の小学校で働き始めた。フルタイムでの仕事はやりがいがあったが、玉数が一気に増えた気がした。マルチタスクが基本の現場で、その時々に投げられる玉を受ける必要があったので、同居していた両親に子どもの送迎やら、夕飯の準備という玉はお任せし、それから何年かは回している玉の多さにヘトヘトになりながらも、それ以外の選択肢が無いと思い込み、ぼんやりと周りの状況を視界にいれながら続けていた。
講師として仕事を続けていたある日、「来年のお仕事なんですが、産休の後補充という形でゴールデンウィーク開けからおねがいしたい」と校長先生から告げられた。4月から仕事がないことが不安だったが、1ヶ月のことだしなんとかなるだろう。とお受けすることにした。
その年の3月31日、「こんなに気持ちが楽になることがあるのか!」と目から鱗。
持っていた玉が一気に手元からなくなって、子どもの玉が自分の元に来る時間も少なくなった手持ち無沙汰の私は次の玉を探すことにした。
それまで、お金を得る為には仕事という玉は回し続けなければいけないと思い込んでいた。それを定年までやり続けるのが、大人であり、立派な社会人ということになるんだろうと。しかし、この時の経験で仕事と自分の時間という玉を時々に選択できることを知ってしまったのだ。
慢性的な教員不足で、「復帰しよう」と思ったときにはなんとか現場に戻れる気がしていた。そのために翌年1年間フルに働いて仕事を辞め、海外生活という玉を大切に両手に抱えた。
当時、ニュージーランドの高校に通っていた下の娘は2年生。1年生の時は現地での生活に慣れるまでと、こちらから連絡を取ることは極力控えていた。ここで会いに行ければ、彼女の卒業までにもう一度行くことができるかもしれない。そう思い、ホストファミリーにお願いすると快く迎え入れてもらえることになった。
自分の為に自分の時間を使う幸せ。英語、車の運転、料理、トレッキングなどそこでのすべての体験がかけがえのないものだった。あっという間に3ヶ月が過ぎた。帰国後、仕事と自分の為の時間、この二つの玉をバランスよく手にしていこうと思った矢先、パンデミックが起こった。予定していた2度目の出発日にロックダウンとなったためニュージーランドへの入国ができなくなったのだ。
その日から、「もう一度、現場に戻り仕事というたくさんの玉を抱えられるのか」自問自答を繰り返した。「仕事と自分の時間は必ずしも二つの玉でないのかもしれない。」そうは思ってみても日々の生活にお金は掛かる。あっという間に貯金がなくなり現場に戻らざるを得なくなった。その時のことはあまりにハードで記憶が飛んでしまっている。
「仕事という玉以外に病気という玉を手にすることになるのでは?」という漠然とした不安が現実のものになる気がして、教員という玉はひとまず手放すことに決めた。
手放したら手に入る。とはよく言ったもので、次のチャンスはすぐに来た。
時給で考えるとかなり安くはなったが、生活できる給料で、時間が確保されるぴったりの仕事が見つかった。片手で一つの玉を投げている感覚だから、「これ気になる!」と思ったものをもう片方の手ですぐに掴むことができるようになった。昨年は父の病気と母のけがという玉が同時にまわってきたが、それも難なくこなせたのは仕事の玉に振り回されていない自分であったからだと思う。
ジャグリングの業師のように大技をこなすような人もいるだろう。それを凄いとか、うらやましいとか思う気持ちもあったと思う。地味な作業を続けるような時期もあったし、予想もしなかった玉が飛んでくることも。それでも、どんな玉をいくつ持つか。その時々で決められる自分でいたい。自分のことを疎かにしなければ、どんな状況でも楽しめる自分でいられるはずだから。
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