受験日本史における牛丼問題⇒友達百人作ったら解決するのではないか
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:森下 昌英(ライティング・ゼミゼミ年末集中コース)
(この文章は、決して牛丼をディスる意図で書かれたものではないことを予めお断りします。私も牛丼は大好きです)
なんと(710)見事な平城京
ナンパし(784)ようぜ長岡京
鳴くよ(794)うぐいす平安京
「こんなもの覚えて何になるんだろう……」
学生時代、周囲でこういう嘆きをよく聞いた。あなた自身もこう思われたことがあるかもしれない。確かに、普通に生きていて平安京が出来た年がクリティカルな問題になることは無いだろう。そんな風にぼやくのもうなづける。
学生時代、私は日本史オタクだった。どのくらいというと、高校時代に全国模試で偏差値100を超えたことがあるくらいなので、なかなかのものだったと自負している。楽しそうに日本史の話題を友達に振り、気味悪がられたことも一度や二度ではない。常に奇異の眼で見られた。
しかし、第一志望の大学に合格できたのは日本史様のおかげだ。いつの日か日本史様にはご恩を返さなければならない。だからつまらない日本史の授業を何とかしたいという想いを心ひそかに持っていた。
楽しかった学生時代が終わって20年以上が経過した。教師になりたくなかった私は教職課程をとらなかった。しかし、日本史の授業を何とかしたい熱い想いだけは心の片隅に残っていた。
社会人としての年月は、私の記憶から日本史の知識を奪っていった。しかし、かつてよりも日本史に関する知識は減った一方、日本史を知っていて良かったと思う場面が増えてきたことを感じていた。
特に仕事において部下のモチベーションを上げなければならないような場面だ。
「あの大名はこんなことを言って総スカンを食ったな。気を付けよう」
「あの商人はあんなことを言ってみんなの気持ちを惹きつけていたな」
私にとって日本史は、楽しいうえにより良く生きるヒントを与えてくれる一粒で二度おいしい存在だ。
ちなみに「こんなに楽しくて役に立つのに、日本史嫌いが多いのはなぜだろう」という問いは、中学・高校・大学の日本史友達と常に共有され、そして次のようなやり取りが繰り返された。
「それは学校の教え方が面白くないよね」
「暗記ばかり求められるのは面白くないよね」
「年号ばかり覚えさせられても苦痛だよね」
「もっと授業にストーリー性を持たせるべきだよね」
結局のところ、結論は「授業が面白くない」の一点に収斂された。私はこれを「牛丼問題」と名付けた。
最上級の牛肉を手に入れたが、「自分で料理するのも勿体ない。シェフのところに持ち込んで料理してもらおう」と思って持っていったら牛丼になって出てきた。
「いや、もっとこの肉にふさわしい料理があるんじゃないか?」
そう。日本史という大変面白い最上級の食材があるのに、何も牛丼にして出さなくてもいいんじゃないか? と、そう考えるわけだ。なんとも勿体ないのだ。
なお、改めて断っておくが、私は牛丼をディスる意図は全くなく、むしろ週1回以上牛丼を食べていることをここに追記しておきたい。
さりとて、どんな授業にすれば良いのか有効な答えを得られないまま月日は流れ、学生ではなくなり、周囲に日本史友達もいなくなってしまった。私の頭からも日一日と日本史の知識が失われていく。
そんなある日、6歳になる娘が大きな声で歌を歌っていた。
「友達100人できるかな」
そうか。それだ! ひらめいた!
「日本史の授業は、歴史上の主要人物と友達100人作る時間なんだ!」
日本史の授業は、歴史上の登場人物と友達になる時間(または「こいつとは友達になりたくない」と選別する時間)であるべきだと悟ったのだ。私も各時代に好きな人物、嫌いな人物がおり、教科書を開くことは彼らとの対話だった。それが楽しくていつの間にか教科の成績が上がっていたのだ。
さて。ここで名言を一つ。かの鉄血宰相ビスマルクは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とおっしゃった。この名言は、孤立しがちな歴史好きにとって大変心強いお言葉であると同時に、もっともっと高い視座でこの世界を構成する人々たちに、良い世界を作るためのヒントを与えている言葉だ。
その言葉を紐解いていくと、歴史の役割は私たちが正しくふるえるように先人が残した道しるべだ。そして、道筋を教えてくれるのは年号ではなく、出来事でもなく、それらを構成する主要人物なのだ。
つまり、歴史の授業において、用語の暗記を求めるのではなく、主要人物たちのふるまいを生徒に伝え、生徒は主要人物一人ひとりを、友達になりたいか、なりたくないかを決めさせる時間にしたらよいのではないだろうか。そして、なぜ友達になりたいか、なりたくないかまで考えさせられれば、歴史上の人物は自分事となり、自分のふるまいを決める道しるべとして機能するのではないだろうか。
また、受験日本史に限らず、広く教養講座みたいな感じで社会人にもニーズがあるのではないかと夢は広がる。
「じゃあ何をどうするのか?」
「学校で教えるのか?」
「塾でも開くのか?」
ここまでお読みいただいたあなたはそう思うだろう。私はこの10月に突然嫁の実家のお寺を継ぐことになった。いつの日かお寺で日本史塾をやりたいと思っている。具体的なことはまだ無い。
いつか来るその日まで、心の片隅に熱い想いを絶やさず生きようと思う。
***
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