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海を越えて、時を超えて


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記事:奥村麻香(ライティング・ゼミ年末集中コース)
 
 
昨年の大晦日、私は上の娘と日本で、旦那は下の娘とオーストラリアで過ごした。
年末年始、彼のオーストラリアでの滞在先はメルボルンとブリスベン。
かつて、我が家にホームスティしていたジェニファーの家族と過ごすために行ったのがメルボルン。ジェニファーとの再会は18年ぶりとなった。
 
今から20年以上前、新聞記事に見つけたホストファミリー募集の記事。
2才の娘と家にいる生活に少し退屈していた私は、すぐに掲載されていた番号に電話を掛け資料請求をした。
 
AFSはアメリカン・フィールドサービスの略。国際奨学基金を設け、各国の高校生の交換留学を推進する民間の国際的非営利団体で、具体的には高校生の交換留学プログラムや異文化コミュニケーション、国際交流に関する各種プログラムなどを実施している。
その名前は知らなかったけれど、調べて見ると50年近く活動している団体ということが分かった。
 
電話を掛けた夜、旦那と同居する両親に
「来年、うちで留学生を受け入れますので、ご協力よろしくお願いします」
と決定事項として伝えた。
 
さすが、常に事後報告されることに慣れている3人。私が小学生の時に、いとこたちの家でロータリークラブ交換留学の高校生を受け入れていたこともあったので、
「どこの部屋を使って貰う?」「どこの国とか分かるんか?」
資料が届く前に我が家はすっかり受け入れモードになっていた。
 
後日、届いた資料を確認し受け入れの意向を伝えると、AFSからボランティアスタッフが訪れ、プログラムの説明や受け入れの条件、希望の確認をした。
三姉妹(私は長女)を育てた母は、男子高校生への接し方が分からない。ということで、英語圏の女の子という希望でお願いし留学生の決定を待った。
 
程なくしてホストファミリーとしての許可が下り、オーストラリアの女子高校生が来ることが知らされた。ホストファミリーオリエンテーションに参加して、留学生を迎える準備が始まった。
 
最寄りの高校は私と母の母校でもある。AFSのボランティアスタッフが高校に出向き、受け入れの交渉をしてくれた。その高校では、毎年ロータリークラブの留学生を受け入れていたので、その学生と同じように制服や教科書の手配をしてくださった。
 
家から学校まで距離にして約8km。
家からバス停まで自転車で、その後、バスに乗り換え学校へ行くことになる。
旦那と娘が家にあった使ってない自転車の手入れをしてくれた。ベッド、机、洋服ダンスと新しいエアコンを部屋に用意し、わくわくした気持ちで彼女が来るのを待った。
 
受け入れ当日、最寄りの駅に彼女を迎えに行った。
別の学生を受け入れるホストファミリーと首を長くして改札で待つ。初めて会った時の彼女の緊張した面持ちは忘れられない。そのまま家に向かいこれから1年に及ぶ新しい家族での生活がスタートした。
 
母国で日本語を学んでいた彼女は1週間もしないうちに家族みんなと日本語でのやりとりができるようになっていた。それでも、メルボルンという大都会から日本の田舎(スーパーもコンビニも車で15分)での生活に戸惑い、こっそり自分の父親に「1年ここで生活するのは難しいと思う」と連絡を入れたらしい。その答えは「あなたが田舎で生活をすることは今後一生ないだろう。だから、1年そこでの生活に楽しみを見い出しなさい」だったと聞いた。
 
そんな葛藤があったとはつゆ知らず、高校生活、旅行、お祭り、花火大会など様々なことを家族みんなで楽しんだ。唯一彼女が泣いて訴えた一件は、寒い冬の日に自転車に乗ってバス停まで行くことが耐えられない。ということだった。今でもそれを思うと申し訳ない気持ちになるが、親に対してなら当たり前のように、「車で送って」と言っていただろう。気を遣って言うのを躊躇っていたということが他人の家で暮らすことであり、如何に自分が大切に育てられていたかを知ることになったのだとも思えた。
 
あっという間に1年が終わり、彼女が帰国するときには私は2人目を身ごもっていた。
 
その2年後、両親は彼女に会いに行き、その1年後、私は娘二人を抱えて10日間の滞在を楽しんだ。その後、ジェニファーが彼とともに日本を訪れ、滞在中のコースに我が家での数日を組み込んでくれた。
 
しばらく連絡は途絶えていたが、上の娘が中学3年生の時に、以前日本に一緒に来た彼との結婚が決まったと連絡を貰った。
上の娘は、高校生になったら海外留学したい。という思いがあったので結婚式には参加せず、両親と下の娘、妹と私の5人で参加した。
 
翌年、上の娘のニュージーランド留学中、孫に会いに行った両親の滞在期間に併せて、ホストファミリーがサプライズでジェニファーをホームスティ先に招いてくれた。10年ぶりに会った上の娘は驚きのあまり号泣、その話を聞いてこんな風に関係が繋がっていくことに感謝した。
 
その後、下の娘は上の娘を面倒見てくれた信頼するホストファミリーを頼ってニュージーランドへ渡り、現地での高校生活をスタートさせた。年に1度、春休みにいつもジェニファーに会いに行っていた娘は、彼女に感化されブリスベンの大学へ進学することになった。
 
こうやって積み上げた関係性が海を越え、時を超え繋がっている。
 
今年の3月、下の娘に会いに今度は私がオーストラリアヘ行く。
 
「ジェニファーのお母さんがどうしても会いたい。って言っているから、ブリスベン滞在中一人でメルボルンにいっておいで!」
 
二人の娘をニュージーランドのホストファミリーにお願いした母親として、日本のホストファミリーへの感謝の気持ちが痛いほど伝わってくる。
 
 
 
 
***

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2025-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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