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ひとり旅でみた鬼の正体

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前田苺日子(ライティングゼミ・9月コース)
 
 
「子育てが成功したか失敗したかなんてことは、自分が死ぬ時に、この子を産んでよかったと思えるかどうかで決まるんだよ。その時にこの子の親でよかったと思えたら子育ては成功だよ。だから今はまだわからないものだよ」
 
子育て中はどうしても先のことばかり考えがちです。子育てにおいて『成功とは何か?』『正解とは何か?』 それがわからずに日々迷っていた私に、母がこう言ってくれたのです。
 
子育て中の、どのタイミングで母がこういったのかあまり記憶にないのです。でも……それぐらい子育て中いろいろなことが起こって、何をどうしたらいいのか全く分からなかったし、日々の子育てに必死で、子どものことをかわいいと思うこともなくいつの間にか彼女たちは大人になっていました。 
 
長女は、小さいころ重度の《アトピー性皮膚炎》でした。
小児科に行っても、皮膚科に行っても「あの子かわいそうね」「うちの子はあんなにひどくなくてよかった」そんな目で周囲からは見られていました。実際に「うちの子がこんなに酷かったら私おかしくなる」と、娘の同級生のお母さんに言われたほどです。その言葉に私がおかしくなりそうでした。 
 
また、小学校に通うようになり、今度は《化学物質過敏症》が発症し学校に行けなくなりました。
行きたいのに行けない自分を責める長女にどう対応したらいいのかもわからず、いつもニコニコしていた娘が笑わなくなるのを見て、明確な治療法がない病気に、親としてどうしたらいいものかと悩む日々でした。
 
次女は、集団生活が嫌いで、学校の勉強が嫌いで、保育園の3年間は毎日泣いて登園するほどでした。学校に行っていない(家では)元気な長女の病状が理解できず「お姉ちゃんが行かないのになぜ私ばっかり行かせるんだ!!」と、5歳の娘に切れられていました。当時の私は、病気で行けない長女は仕方ないけれど、病気でもない次女が行かないことは許せなかったのです。
確かに学校の先生でさえ理解してくれない病気を、5歳の保育園児が理解できるわけもなく、家の中はいつも不穏な空気が流れていました。
 
さらに次女は、小学校で行われた心電図検査で引っかかりその後大きな病院で受けた検査では「20歳ごろにはペースメーカーが必要かも」と言われました。その時の私の気持ちは「この子も? なんでうちの子ばっかりこんなことになるのだろう」って思いで、自分を責め続けました。
 
 
そして、これは子どもの問題ではないのですが、長女が中学1年生、次女が小学4年の時離婚しました。
「もうだめだよね。離婚しよう。
 子どもはいらない
 養育費は払わない
 家は俺が出ていく
 おやすみ」 
 今でこそ、ネタにもしていますが、この5行で離婚が決まりました。
突っ込みどころはいろいろあると思いますがそこはさておき、こうして始まった母子3人の生活。新たな困難を抱えながらも、私たちは少しずつ家族としての形を整えていきました。
 
一般社会の枠にはまらない生活続きでしたから、冒頭の母の言葉はいつも何かと闘っていた私にとっては心の支えでした。そして、母の言葉に救われながらも、私は自分なりの子育て哲学を模索していきました。
 
その一つが「あきらめる」という事。
 
子どもたちの人生をあきらめるのではなく、私の中での子育ての基準や、この学歴社会の中での基準は我が子の成長とは違うのだから、自分の考えを押し通すことはあきらめよう。学校の先生や、周りの大人からの言葉に一喜一憂するのはやめようと思ったのでした。もちろん、私の子育てにおいて大事にしたいと思うあれこれは伝えるものの、親の意地で押し通すことはしないようにしたのです。
 
親子の関係性が崩れたらいけないと思ったので、それはいったい誰のため? 親の見栄なの? 学校の先生のため? そういった考えは一切排除しました。
そのために、いろんな葛藤はあったし、周りの人からの何気ない言葉に傷つくこともたくさんありました。でもね、家族三人笑って暮らせることが一番だと考えて子育てしていました。
 
夢を追い求めて就職したものの、体調を崩し、アレルギーや化学物質過敏症の症状が出て会社を辞めることになった長女も今では二児の母となり、これまた通常分娩とは程遠い出産経験をする中で頑張って子育てをしています。
 
自分が納得できないと仕事を転々としていた次女は、厳しいけれども自分の成長する機会をたくさんもらえる職場に落ち着き8年が経ちました。
今年のお正月に、私の実家の家業を手伝う姿や、食べ物の好き嫌いがはっきりしていて嫌いなものは全く手をつけなかったのに、「縁起物だからちょこっとぐらい食べようかな」とお節を食べる姿になんだか将来の不安しかなかったけれど、いい感じに落ち着いている姿にうれしく思うのです。
 
そして、母の言葉を思い出します。
 
昔は、親から子へ。また、近所みんなで子育てするような日本であったのが、核家族が増え、縦とか円(縁)で子育てする機会も減り、新型コロナ流行以降は、横のつながりや地域コミュニティとのつながりも薄くなって、子育ても大変だと思います。ネット社会ではいろんな情報がありすぎて、不安をあおるようなこともたくさんあるように思います。また、いい悪い、0か100か、白か黒か……のジャッジが多く悩むお母さんも多いのではないでしょうか? 
 
今が辛いと、どうにか抜け出したいと思うことはもちろん当然のことなのですが、でも、親が子どもにしてあげれることはあまりたくさんなくて、大切にしたいことは「家族が笑顔でいられる空間があること」ではないかと考えます。
 
本当に泣いてばかりいた子育て期間で、過去を振り返るとつらい記憶はたくさんありますが、今は本当に幸せで、子どもたちとも笑顔で過ごせているので、悩むママがいたら伝えたいです。「子育てには正解はないよ。一生懸命考えて出した答えをまずはやってみよう。家族が笑顔でいられたら、それはきっとあなたの子育てにおいての正解だよ」って……
 
 
 
 
***

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2025-01-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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