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結婚への近道?


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記事:向日葵(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
「これは絶対にない! ヤバすぎる!」
 
30代後半で実家暮らし。料理はしたことないのに、冷凍パスタはまずくて食べられない。極めつけは、仮にもお見合い相手に会うのに、服装が上下ジャージ。何年か前に私が結婚相手を探すために婚活をしていたときのことである。私は、まだお見合いが終わっていないにもかかわらず、すぐに決めてかかった。今なら盛大に突っ込める。なんとまあ傲慢なこと! 「この人は結婚相手として、ない」とすぐに判断しているお前はどうなんだという話である。この当時、私は30歳を過ぎていたが、まだ実家暮らしをしていた。立派なパラサイトシングルというやつである。両親は元気で、料理も洗濯もほとんどしていなかった。母が私に頼むのは、掃除くらいである。お見合い相手のことを「実家暮らしだからヤバい」、「料理をしたことがないなんて!」と言える立場ではまったくない。私がどうこう言えるのは相手の服装くらいである。この状況で話している最中から断ろうと決められるレベルではない。私の程度が低すぎる。しかし、当時の私はそれがまったくわかっていなかった。
 
結婚は、買取査定のようなものだ。買取査定では外箱がキレイに残っているか、とか、本体にキズがないか、などを見て、価格を決める。結婚では、外見のみならず、その人がそれまでどのように過ごしてきたか、といった人間性にかかわる部分も明確に数値化されずとも査定されていると思う。例えば、直感、というような言い方や、話が合う、合わないという言い方で。当然、結婚の査定で高価格を叩き出せる人たちは、同じようなレベルの人を探す。私は、当時、自分が「高価格」な人間だと意識的に思っていなくても無意識にそう思っていたのだろう。自分のことがすばらしく客観的に見られていない。どうしようもないやつである。
 
そんな私だったが、婚活を続け、「とてもいいな」と思った相手がいた。デートも数回行った。話も合って、楽しく過ごせていると思っていた。私は。ところが、急に連絡がとれなくなった。連絡を意識的に絶つくらいなら、きっぱり断ってくれた方が宙ぶらりん状態にならなくていい。と、当時の私は思っていた。今思うと、これも傲慢だった。これはお見合い相手からの優しさだったかもしれない。
 
その後、やはり「いいな」と思った人から断られ続けた。数回会った人もいれば、一度しか会っていない人もいた。私は、自分が断るときは特に何も考えずに断っていたが、断られると、かなり精神的にはつらい。それも何度も断られ続けるとかなりつらい。今思うと、このときの私は、全く身の丈に合わない「高価格」な人を結婚相手として探し続けていたのだろう。うまくいくわけがない。私が最低なのはそれだけでなく、婚活の後半では、会っている最中から「これを理由に断ろう」と考えていたことである。こんな私と会ってくれているのに恐ろしく失礼である。我ながら最低だ。
 
こんな最低な婚活をしていた私に変化が訪れた。しびれを切らした母が、「いい加減、家を出て、一人暮らしをしろ」と言った。それもそうである。私には姉妹がおり、私は長女であるが、私以外全員すでに家を出ている。すでに一児の母になっている妹もいた。母が怒るのも当然である。そうして家を出ることになった。初めての一人暮らしに仕事の異動が重なり婚活に時間を避けないほど忙しくなった。長いこと休会した。休会期間が切れるころにコロナの流行が起きてしまい、とても婚活などできるような社会情勢ではなくなった。退会せざるを得なかった。
 
このころ、私の考え方にも変化が起きていた。コロナで人と話せなくなったのもあり、昔会った婚活相手に、「いろいろ聞いてみればよかった、どうしてすぐ断ったんだろう……」と思うようになったのである。実はもう数回会っていたら、その人の良さがわかったかもしれない。せっかく時間を使ってなんでお見合い相手の悪いところばっかり探していたんだろう? 後悔しまくりである。でも、すでに婚活サイトは退会してしまっている。あきらめるより仕方ないか。後悔ばかりしていても仕方ない。いいこともあった。一人暮らしをして、料理にハマったのである。自分だけが好きなときに使えるキッチンがあるというのがいい。ズボラ飯からお菓子まで作ってみたいものはほとんど作った。いかに時短料理を極めるか、ということにも挑戦していた。そうして私の家事能力は楽しくめきめき上達したのだった。
 
そんなときに出会ったのが今の夫である。実は婚活仲間だった。売れ残り同士意気投合し、付き合うようになって、結婚までこぎつけた。夫は以前からの知り合いだったので結婚した後に、「なぜ知り合ったころではなく、今になって結婚してくれたのか」と尋ねてみた。
 
「実家暮らしの人とはそもそも付き合わないようにしていた」
「家事がきちんとできる人か確認したかった」
 
なるほど。母の𠮟咤激励をきっかけに、私はその条件をクリアしたということか。本当は客観的に自分を分析して自分を変える努力をするのが理想である。でも、それはとても難しい。だから、今、結婚相手を探している人や探そうと思っている人は、いっそのこと自分が置かれている環境を変えるのが手っ取り早く近道になるかもしれない。私だったら過去の自分にこう言う。
「とっとと実家を出ろ!」
 
 
 
 
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2025-01-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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