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結婚観の考察と迷いの狭間で


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記事:三宅彩加(ライティング特講)
 
 
「来月結婚することになって……」
 
10年来の友人が言う。ああ、言わないと。
 
「おめでとう!」
 
ちゃんと微笑んで言えただろうか。
 
 
20代後半から周りの人間が次々と結婚していった。20代後半の、たかが2、3年の付き合いで生涯共にする一人を決める。その決断をした友人たちにすごいなあと思う。もちろん学生の頃から付き合っていたという人もいるが……。すごいなあと思っていたら気がつけば30歳をゆうに超えた。何かに焦り出す。
 
多くの人が今も20代から30代のうちに結婚するのは、子どもがほしいからなのだろうか。それとも社会や家庭からの目に見えない圧力だろうか。はたまた周りのみんながそうしているからだろうか。
 
私はNHKの連続テレビ小説(通称、朝ドラ)をよく観る。朝ドラというのは世相を反映していて、例えば物語の舞台は戦前だったとしても、主人公は現代に通ずる考え方を持っていることもある。
 
例えば2024年春から秋に放送された「虎に翼」。主人公の虎ちゃんは結婚することに疑問を抱く。当時女学校を卒業してすぐに結婚する女の子が多い中、結婚ではなく進学を選び、女性初の弁護士の一人となった。
 
虎ちゃんは弁護士として懸命に働くが、女性の弁護士には弁護してほしくないと依頼人たちにどんどん断られてしまう。そこで考えた打開策が「そうだ、結婚しよう」である。今なら飛躍した考えだと思うが、女性は「無能力者」と憲法に定められていた戦前の民法では、女性は生まれてから父親に従い、結婚してからは夫の支配下に置かれていたという。結婚することで一人前という考えが今よりも強く濃く浸透していたに違いない。
 
結婚し名字が変わり、「一人前」と見なされてから案件が舞い込んだり、女性弁護士として連載を持ったりして、虎ちゃんの取り巻く環境が大きく変化した。
 
現代はさすがに結婚することでそこまで露骨に環境が変化することは稀だろう。しかしまだ人々の中には結婚して一人前という考え方があると思うし、私も深層ではそう思っていると思う。
 
だからこそ苦しいのだ。自分で自分の生きたいようにすればいいのに未婚で家庭を持たない自分は宙ぶらりんな気がしてならない。結婚せずに生きていくという覚悟もない……。今のところ。
 
 
大学時代の先輩に久しぶりに会った。先輩はひとりが好きで、海外旅行にもひとりで行くような人だ。学生時代にはタイへ一人旅に出かけていた記憶がある。
 
そんな先輩が結婚して子どもができていた。「ひとりが好き」だと思っていた先輩は、実はそうではなく「ひとりで行動するのも好き。出かけるにしても、ひとりで行くか家族と一緒か選べるのがいい」派になっていた。大学を卒業してずっと会っていなかったが、どうやら26歳のときに気がついたらしい。「ひとりだと寂しくなりそうだから、将来を見据えて結婚しよう」と。
 
パートナーを見つけるマッチングアプリを駆使し、現在の夫と出会ったということだった。26歳にして将来の自分に想いを馳せ、きっとひとりでは寂しくなると予想し、行動に移して「将来起こって欲しくないこと」を回避しようとしていることに感銘を受けた。もちろん結婚したいと思えるほどのパートナーに出会い恋愛をした結果であることは言うまでもない。
 
勧められるがまま始めたマッチングアプリはとても厳しい世界だった。年齢、年収、居住地、学歴はもちろんのこと、趣味嗜好、結婚歴などさまざまな条件で容赦なくフィルターをかける。次々流れてくるアプリからの「あなたにマッチするかも?」や「いいね! が来ています」の殿方を私は指先だけで合否を判定していくわけだ。
 
単純な作業である。同時に面倒な作業である。いや、自宅で寝そべりながらパートナーを見つけられるという点に関しては便利だと言うべきか。
 
二日に一度、私は何をやっているのだろうと思う。本当にパートナーは見つかるのかと疑問もある。今言えることは将来、たとえ親がいなくなってもひとりで生きていくという強い心を持てていないのだ。
 
少し前はレールに乗りたくないと思っていた。周りの人と同じリクルートスーツを着る就職活動も、30歳を前に慌ただしく結婚活動することもどこか白い目で見ていた。
 
ただ、親の老いや友人の結婚ラッシュ、冠婚葬祭で再会する従姉妹や兄弟の中で取り残されていると感じる、それが虚しくて今日も「いいね!」を押す。
 
結局は居場所がほしいのかもしれない。自分が生きていいと思う場所、自分が生きる価値の感じられる場所を探している気がする。人によってはそれが仕事だったりボランティアだったり趣味だったりするのではないか。私の場合はなんだろう。
 
 
今は結婚したいと思えるパートナーに出会いたいと思う。でもありのままの自分でいいと思える日がいつか来るかもしれない。数年前まで結婚をしたいか、子どもを持ちたいかも定まっていなかったのだから、日々を過ごす中で考えが変わるかもしれない。それでもそのとき後悔がなく、自分の人生悪くないかもと笑っていたいと切に願う。
 
 
 
 
***

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2025-01-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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