メディアグランプリ

1月17日がくると、あらためて思う事


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:藤原 宏輝(ライティング・ゼミ9月コース)
 
 
今年も1月17日がきた。私は毎年この日、心が痛むのだ。
あれから30年。と、テレビやニュースがたくさん流れる。1995年1月17日火曜日は‘阪神淡路大震災’があった日だ。
 
朝方激しく縦に持ち上げられたように‘グラッ’と揺れた瞬間。
日頃から、寝相の悪い私は、時々ベッドから転げ落ちた。
この時も寝返りを打ったタイミングが悪く‘ドスン’とベッドから落ちて、1階まで響いた大きな音と、次にきた激しい横揺れで、祖母が慌てて2階の私の部屋に駆け上がってきた。
「大丈夫? またベッドから落ちたの? 今の地震すごい、揺れたね。怖かったね」
と、心配そうだった。私は「寒いッ」と思い、床から起き上がり寝ぼけながら、祖母と少し話した。
揺れはすぐに収まったし、まだ外は暗かったので、もう一度眠った。
 
そして、7時過ぎに目覚め1階に降りていくと、テレビのニュースはどのチャンネルも、朝方の地震の事を取り上げていて、大騒ぎになっていた。
「どこで、地震があったのかな」
と、ニュースを見てみると、関西方面だという事は理解出来た。その頃、祖母と一緒に岐阜に住んでいた私は、
「このへんじゃなくて、良かったね」と話した。が、次の瞬間!
目に飛び込んできたのは、あちこちで火事が燃え広がり、黒い煙がものすごい勢いで上がっている。
これまでに見た事もないような、焼け野原となった凄まじい映像で、私は一瞬! 固まった。
「ねえ、おばあちゃま。パパとママと従業員さんたちって、昨日からどこに旅行に行ったんだっけ?」
と祖母に尋ねると、
「あれ、確か。淡路島じゃなかった?」
と答え、その時の映像が、神戸の火災を何度も放映していたので、
「淡路島なら、関係ないね。良かったね」
と話し「今日は大変な日になってしまったなあ」と考えながら、いつも通り会社に向かった。
仕事が始まりしばらくすると、地震の様々な情報や被害状況なども、だんだんわかってきた。
休憩室のテレビから‘阪神淡路大震災’という文字が目に飛び込んできて、震源地は淡路島北部と知り
「えーッ! 噓でしょ」と、私は声に出し、あまりの驚きに手が震えた。
両親は大丈夫なのか? 従業員さんたちは大丈夫なのか? と、とても心配になり、ものすごい不安が襲ってきて、すぐに祖母に電話をした。
「あれから、揺れてはいないけど、お家は大丈夫? パパとママから連絡あった?」と聞くと、
「携帯に、何度かけても繋がらない」
と祖母は、とても不安そうだった。
私は、居ても立っても居られなくなり、会社をすぐに早退して、祖母のところへ向かった。すると、父の会社には従業員さんのご家族が数名集まっていた。
「社長とまだ、連絡取れませんか?」「みんな、大丈夫かしら?」
「うちの人、今どこにいるのかしら? どうしてるかしら?」「無事かしら?」
とみんな心配と不安いっぱいで、口々に言った。
両親からの連絡を、私たちは待つ事しか出来なくて……。その後、何度も何度も父の携帯に電話をしたが、ずっと繋がらなかった。その場では、何ひとつ出来ずに、心配な時間を過ごした。
 
テレビから流れてくる‘阪神淡路大震災’の様子は、映画のワンシーンかと思えるようなものだった。
高速道路がそのまま、倒れている。高速道路が寸断されて、バスが落っこちそうになっている。火事が燃え広がっていて焼け野原になっている。地震の被害は、想像をはるかに超えていた。
それから、どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
「こうして、皆さんと会社にいても、待つ事しか出来ないですし、何か分かったら私から連絡します」
とご家族の方々には、いったんそれぞれの自宅に帰って頂いた。
会社に残った数名の方と祖母と私は、食事も喉を通らなくて、心配で不安な時間だけが、静かにどんどん過ぎていった。
 
すると、21時を過ぎた頃。駐車場に大きな音を立てて、バスが入ってきた。
「おーい、ただいま!」
と、父の元気な第一声が、聞こえてきた時の私の安心感は、これまでに味わった事のないものだった。と記憶している。
両親も従業員さんたちも、全員無事に帰ってきたのだ。
私も祖母も従業員さんのご家族も、地震の状況やどんな事が起こったのかなど、一気に色々と聞いた。
その場は、少しずつ緊張感がほどけていき、みんなに笑顔が少しずつ戻ってきた。なんだかホッとしたら、お腹が空いてきた。
 
では、なぜ? 震源地と言われた、淡路島に昨夜から泊まりに行っていたはずの、両親や従業員さんたちは、無事に帰ってこれたのか?
まず、淡路島への社員旅行の1日目に、観光には訪れたらしい。そして、出発の1週間ほど前。急遽、宿泊先の都合で淡路島の洲本温泉から、和歌山県南紀白浜温泉に変更していたのだ。
それでも、震災の朝は南紀白浜のホテルから、対岸には黒い煙がものすごい勢いで上がっているのは、見えていたらしかった。
宿泊先を変更した事を、聞かされていなかった私は、嬉しい反面。今日という心配で不安な1日を振り返ると、なんだか複雑な気持ちだった。がしかし、何はともあれ、全員が無事に帰ってきて良かった。
 
この凄まじい‘阪神淡路大震災’を経験した私は、実際に両親を亡くす事はなかったが、今でも思い出す度に、とても心が痛む。心より、亡くなった方へのご冥福をお祈りし、被災した方々へお見舞いを申し上げたい。
 
自然が相手の震災は、突然起きても、どうする事も出来ない。
だからこそ‘備えあれば患いなし’危機感を持っての事前の備えは重要だと感じる。婚礼のお仕事の中において、引き出物の‘防災グッズ’が、この時期は多く発注される。
地震に対してだけでなく、自分の身は最低限‘自分で守れる’ようにしておきたいものだ。
そして、30年前に淡路島に宿泊していなかった両親の生命。従業員さんたちの生命。与えられた生命を、大事に使わないといけないなあ。と、毎年1月17日にあらためて思うのである。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「名古屋天狼院」

〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「湘南天狼院」

〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00



2025-01-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事