メディアグランプリ

サルートと通帳と蓬莱の玉の枝

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記事:皐月(絶対麗度ライティング)
 
 
「クリスマスのプレゼント、何が欲しい?」
 
彼の何気ない問いかけに、私は軽い調子で答えた。
「サルートのランジェリー!」
一瞬の沈黙の後、彼は笑って「わかった」と言った。その瞬間、私は小さな期待と不安が胸をよぎった。
私が望んだのは、ただのランジェリーではない。サルートのランジェリーは華やかな刺繍と繊細なデザインで知られ、選ぶにはセンスと勇気が必要だ。それは、竹取物語に出てくる「蓬莱の玉の枝」のように手に入れるのが難しい贈り物だと、心の中で思っていた。
 
私が彼に用意したプレゼントはもっと平凡だった。同僚に頼んで、落ち着いた色合いで品の良い刻印入りのペンを二本用意した。そのうち一本は私が使い、「ペアで使おうね」と提案した。そして、そのペンにこんな物語を添えた。
「このペンで、あなたの未来をたくさん描いていってね。その未来に、私も一緒にいられたら嬉しいな」 彼はその言葉をとても喜んでくれた。
そんな彼を見て、私も少しだけ満足していた。それでも心のどこかで、「サルート」という挑戦状を渡したからには、彼がどんな形で応えるのか、期待せずにはいられなかった。
 
そして迎えたクリスマスの翌日。華やかな箱やリボンを想像していた私の前に、彼が渡してきたのは地味な封筒だった。 「これ……?」
不思議そうに封筒を開けると、中には一冊の通帳が入っていた。その通帳には「○○○万円」の振り込み記録がしっかりと記されていた。
「サルートのランジェリーも考えたんだけどさ……いろいろ悩んだ結果、今の君に必要なのはこっちかなって思ったんだ。とりあえず、当面の生活費に使って」
彼はそう言って、少し照れくさそうに笑った。
私は言葉を失った。確かにロマンチックさには欠けている。けれど、それ以上に、彼が私の生活や状況を本気で考え、支えたいと思ってくれていることが伝わってきた。
「ありがとう。でも、これ、なんだかクリスマスプレゼントっぽくないよね?」 そう言って笑うと、彼は肩をすくめてこう言った。
「まあな。でも、これが俺なりの“蓬莱の玉の枝”だと思ってくれたら嬉しいかな。サルートのランジェリーは一緒に買いに行ってください」
その一言に、私は思わず吹き出した。難題をふっかけたつもりが、まさかこんな形で返されるとは。サルートのランジェリーは来なかったけれど、その通帳には彼の誠実な気持ちが詰まっていた。
 
その夜、ふと渡したペンのことを思い出した。
「蓬莱の玉の枝――それは、ただ手に入れるだけでは意味がない。相手のために努力し、心を込めることで価値が生まれるのだ」
彼が封筒を差し出した瞬間、その物語が少し現実に重なった気がした。 ペンで描く未来があるとすれば、それはきっと、彼と一緒に紡いでいくものだろう。通帳という現実的なプレゼントに込められた彼の思いを受け止めながら、私は心に誓った。
来年のクリスマスには、私も彼に「蓬莱の玉の枝」に匹敵するような、特別な何かを贈りたいと。今年のクリスマスは、彼からの予想外のプレゼントに驚かされた。通帳という現実的な贈り物に込められた誠実さと優しさに心を打たれたものの、私は密かに思ったのだ。
「来年はもっと彼を振り回してやろう」と。
それぞれが自分の中の「蓬莱の玉の枝」を見つけ、少しずつその枝を育てていく――そんな未来を想像しながら、二人の物語はまた新しいページを描き始めたのだった。
 
 
 
 
***

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2025-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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