メディアグランプリ

ドラえもんのひみつ道具としての漢文


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記事:向日葵(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
「きちんと起きて聞きなさい!」
はっ! 寝てた……よね? 今。いつもは仏のように優しい漢文の先生が怒っている。珍しい。非常に珍しい。それもそのはず、学年末考査が終わった3月の授業。クラスの大半が静かに居眠りしていた。私も例に漏れず。高校時代、私の漢文の授業を受ける態度はこんな感じであった。決して漢文が嫌いなわけではなかった。わりと好きだし、得意な方だったと思う。そんな私はいつも不思議に思っていた。「漢文って、なぜ勉強するのだ?」と。
 
私と同じ疑問を持っていた人もいるのではないだろうか。漢文はもといはといえば、古代中国語。「国語」という教科で学ぶのに、日本語ですらない。いったい何のために? そもそも役に立つのか? うーん、わからない。が、漢文の歴史を見ていくと、漢文はドラえもんの四次元ポケットにあるひみつ道具っぽい気がする。
 
日本語では、漢文に使われている漢字が、現在も使われている。なぜ? 日本語はもともと文字を持たない言語であった。しかし、文字がないと不便だ。すべて暗記することになる。大変だ。ということで、文字を作ろう! でも、一から文字を作るのは大変だ。「ドラえもん、なんとかしてよ!」ちゃらっちゃー。「か~んぶん~」困ったときのひみつ道具、漢文。中国の漢字を日本語の文字にしてしまえばいいではないか! ということで日本人は日本語の音を漢字の音にあてはめて、日本語の文字にしたのである。これを「万葉仮名(まんようがな)」という。この万葉仮名は、原則一字一音である。たとえば、「なつ」と書きたければ「奈津(なつ)」と書く。すると、三十一文字の和歌を記述するだけで大変なことになる。画数が多い。書くだけでめちゃ大変。じゃあ、なるべく早く書けるように省略しましょう! ということで漢字からひらがなが誕生した。まずはひみつ道具、漢文で日本語の文字がない問題をクリア。
 
漢文の真骨頂はここからである。国語で学ぶ漢文は古代中国語である。かつて中国はシルクロードによって、世界中の物や書物が集まる場であった。世界に開かれた中国の書物がぜひとも読みたい! 古代中国語がわかる人だけでなく、多くの人が読めるようにしたい! そうすれば、日本人全体の知識が増える!「助けて~ドラえもん!」ちゃらっちゃー。「か~んぶん~」ということで、古代中国語に日本語と同じ順番になるように返り点をつけ、日本語っぽく読めるように送り仮名をつけた。すると、古代中国語がわからない人でもなんとか日本語として読める可能性が高くなる。そこで発展したのが返り点と送り仮名である。日本語と中国語の語順が違っているところには、日本語と同じ順番になるように返り点をつけ、日本語っぽく読めるように送り仮名をつけた。送り仮名をつける際、ひらがなでは、漢文の漢字と漢字の小さい隙間に入りきらない。そこで、漢字からひらがなよりも画数の少ないカタカナを生み出した。ということで、漢文で日本人の知識レベルを上げたい問題はクリア。江戸時代には、この返り点、送り仮名が入った『三国志』や『水滸伝』が出版されている。中国語で書かれたものを、日本の一般庶民が読もうと思えば読めるのである。なんともスゴイ。
 
漢文のひみつ道具としての働きはまだ続く。日本が鎖国状態から開国した明治期、西洋の書物や考え方が多く入ってきた。文明開化だ! これからは欧米の考え方を取り入れなくては! ということで、西洋の書物を翻訳しようとした。「ん? これ、いったいどう訳せばいいの?」日本には、その考え方にあてはまる言葉自体がないものも多かった。「ドラえもん、どうしたらいいの~」ちゃらっちゃー。「か~んぶん~」日本人は、そういった言葉を訳すときに漢文を使用した。たとえば、「liberty」を翻訳するときに福沢諭吉は「自由」という言葉をあてた。「自由」という言葉は『後漢書(ごかんじょ)』までさかのぼることができ、「思い通りにふるまう」という意味があった。それを「liberty」の翻訳に使った。ただ、福沢諭吉は、「liberty」が「思い通りにふるまう」とは少し違っていることを明記している。意味が少し違うが、似ているので、使ったのだろう。他にもそういった語が確認されている。そして、そうして翻訳された言葉は、現代まで残っている。以上、漢文で翻訳語がない問題をクリア。
 
現在は、翻訳語を探さずとも、英語をカタカナにしてしまい、そのまま日本語に取り入れる、という方法ができるようになった。これもおそらく、カタカナが漢文という外国語に使用されていたからこそ、外国語の発音をカタカナで書く、という発想ができたと思われる。
 
こうして漢文の歴史を振り返ってみると、日本語が漢文に助けられている面が非常に多い。まさに困ったことはなんでも解決できてしまうひみつ道具である。ここまで読んでいただいて、これだけ日本語に深く食い込んでいるのだから、まあ、国語で学習するのも仕方ないかな、と思っていただければ幸いである。《終わり》
 
 
 
 
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2025-02-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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