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路線バスこそが最強の乗り物である

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:まこと(ライティングゼミ11月コース)
 
 
「バスは時間が読みにくい」
「どれに乗っていいか分からないから電車がいい」
 
普段バスを使わない人に限ってそんなことを言う。
まぁいい、僕にとってバスは移動手段に限らず「乗る楽しみ」のあるエンターテインメントである。その魅力が多くの人に理解されてしまった結果、外国人であふれる京都や東京よろしく、一見の乗客でごった返してしまっては困ってしまう。
 
そう。空いてるバスがいい。バス会社には申し訳ないけど。
 
そんな感じで、実に全くもって個人的な話で恐縮なのだけど、僕はバスが好きである。時間に余裕があればわざわざ電車を避け、バスで目的地までの経路を組むくらいには気合が入っている。
 
それくらいバスはいい体験ができる乗り物だ。本当はあまり教えたくないのだが、その魅力の一端を味わえる「バス遊び」を3つほど紹介してみよう。
 
まず初心者にもおすすめなのは「街の生活」を味わう遊びだ。
 
バスは道路を走る。当たり前だけど。
線路を走る電車と違い、割と細い路地まで入り込んで、くねくねと走っていく。すると、その街に住む人間の生活模様や家の様子、商店の感じを見物することができる。知らない街の知らない道にも人がいて、知り合いでもなんでもない人たちの今日の生活を感じてなんかホッとできる。
 
「自分で車を運転しても同じことができるじゃないか」
 
できない。
 
バス乗客にだけ許された特権、それは目線の高さだ。普段歩きながら見ている街とは違って、少しだけ俯瞰してる気持ちで街を見ることができる。実際にそこで生活している人たちよりも少し高い位置から、他人事のように「いい街ですなぁ」なんて雰囲気でぼけっと外を眺める。
 
「見物」という表現がよく合う。ちょっと飽きがでたら、雨の日や雪の日など天気の違う日に乗ってみても、いつもと違った街の表情が見れてとても面白い。
 
「街の生活」をバスから楽しめるようになったらおすすめなのが、「バスに乗ったことのない街で、目的地までバスで行ってみる」だ。
 
バスというのは極めてローカルな乗り物で、自分の生活に関わる路線以外に乗ることはまずないと言っていい。だから自分が普段使っていないバスに乗れるチャンスがあれば、これを好機と捉え、積極的に予定にバスをねじ込みに行くのだ。
 
「何か予定があって久しぶりにA市に行くことになった。目的地まではA駅からタクシーで10分」といった場合に、タクシー代わりに無理矢理バスを使うのだ。最近ではインターネットで調べればなんでも出てくるから、時刻も乗り場も問題ないだろう。
 
だがそうは問屋が卸してくれないのがバスというやつだ。
とにかくバスにはローカルなルールが多い。対応しているICカード、カードリーダーと運賃箱の位置、整理券を取るタイミング、整理券と運賃の関係、前乗りと後ろ乗り、前払いと後払い。
 
公営、私営、自治体によっても運用ルールが全く違い、僕レベルのバス好きでも初めて乗る路線のバスは戸惑いと不安しかない。初見殺しとはまさにこのことだが、この不安を乗り越えて座席に座り、高い目線の先に流れ始める街の景色が格別なのはいうまでもない。
 
乗ったことのないバスの不安を楽しめるようになったら次のおすすめは「恐怖を味わう」だ。これは初めての街に行って、いきなり大した下調べもせず路線バスに乗ってしまう荒技だ。
 
今ならスマホのマップと睨めっこしながらであれば大きな不安はない。だが、あえて何も見ずに、地元民しかわからないような地名のバス停を延々と見送り続けるのもいいだろう。
 
このとき、2つの恐怖と戦うことになる。
一つは「目的地につけるのか?」もう一つは「間違ったバスに乗っていた場合、無事に帰れるのか?」である。
 
特に山奥や田舎など「1本逃すと次は2時間後」みたいな環境の場合、よほど時間と心に余裕のある御仁でなければ泣きたくなってしまうような孤独感と喪失感である。この遊びをする際には十分にご注意いただきたい。
 
なお、僕はスマホもない時代に、地図も持たずに沖縄でこのバス遊びにチャレンジして、全く地名の漢字が読めなくて目的地につけずに予定外の宿に泊まることになる。
 
また、中国でやったときはクレジットカードが通用しない社会で決済アプリのチャージも尽き、クソ暑い中をホテルまで10km歩いた。
 
アメリカでは、いきなりハイウェイに乗られてまじでドキドキしたが、なんとか無事目的地につけた。
 
全く生きた心地はしなかった。
 
移動手段として使う分には、そこまでしてバスに執着する必要はない。
ここ数年でスマホのマップアプリではバス路線の多くもデータ化されて、バス停も含めた経路案内も素晴らしい精度になった。
 
一方で、僕がバスを好きなのは、バスだけが人間本来のスピードに近いからなのかもしれない。
 
全てのものが一瞬でつながって、何かを注文すれば翌日には配送される夢のような世の中でも、路線バスはゆっくり、バス停に一つずつ止まって走ってくれる。
 
ちょっと疲れた時なんかはスマホも持たずにご近所のバスにぴょん、と飛び乗ってぼけっと外を眺めてみるなんて大変におすすめだ。最短距離を進むのもいいんだけど、ちょっと寄り道して進むくらいのバスのスピードは本当に人間の脳にちょうどいいと思う。
 
 
 
 
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2025-01-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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