アラ還、服を買う~魔法と冒険の旅へようこそ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:みちこ(ライティング・ゼミ11月コース)
「ストレス解消法は何?」
そう聞かれると決まってこう答えてきた。
「服を買うこと!」
例えば、仕事が上手くいかないとき、中身がカラカラの自分を変えたいとき。
習熟するにも、知識や経験をインプットするにも時間が必要だ。
でも、低空飛行で浮上しない毎日が続くのはしんどい。
そんなとき、新しい服を着て、外見だけでもデキるオーラをまとって武装する。
服を探すのは新しい自分を探すようで気分が上がる。好きな服を着れば頑張るパワーが湧いてくる。
そしてそれが先へ進む原動力にもなるというわけだ。
新しい服を手に入れることは、自分を変身させる魔法のようなものだ。
しかし、年齢を重ねていくにつれ、これだ! と思える服に出会うことがなかなか難しくなった。
服と顔がしっくりこない。ラインの出方が想像していたのと違う。
着たい服と見た目との間にギャップを感じ始めた頃、一旦トレンドとは距離を置き、世間的に年相応と思われるようなラインナップに方向転換しようと試みた。
けれども何だかしっくりこない。年相応って何? 余計に迷走してしまう。
そんなとき、少し年上のファッションプロデューサーの動画に出会った。
彼女のファッションに対する在り方や姿勢を見て、年齢を重ねるのは素敵なことであり、今の私の「好き」が、今の私の年相応でいいのだと思えた。
今の私が目指すのは、トレンドを品よく取り入れた、大人かわいくてかっこいい、斜め45度上をゆく服だ。
とある週末のこと。翌週に大寒波が襲来するとの予報が出た。
何年も着ているダウンジャケットが古めかしくなっていたので、大寒波を迎え撃つべく、新しいダウンジャケットを迎え入れることにした。
幸いボーナスもそんなに使っていない。久しぶりに奮発してしまおう!
心躍る旅の始まりだ。
まずはウィンドウショッピング。
パルコにふらりと入り、若い子が着る服を見てみる。トレンドがもりもりに盛られた服がたくさんあっておもしろい。
若い店員さんに不思議そうな顔をされても気にしない。リサーチのほうが大切だ。
トレンドをチェックしたら、次は大人の服のお店をめぐる。
ちなみに私は百貨店を見て回るのが好きだ。服以外でも、ブランドそれぞれの卓越した物が美しくディスプレイされている。プチ美術館のようで、鑑賞しているだけでもワクワクする。
昨今は大型ショッピングモールに押され気味だが、百貨店には百貨店の良さがある。百貨店よ、がんばっておくれ、と心から願う。
さて、いつもだったら個性的すぎて素通りするお店に、それはあった。
落ち着いたシルバーに目が釘付けになる。出会ってしまった。一目惚れかもしれない。
「かわいいですよね。あったかいし、後ろが少し長くなっているラインもいい。この袖口もおもしろいですよね。これは素材にこだわりがあって……」
店員さんが熱心に語ってくれる。
見た目だけではなくて、そのストーリーがさらに服に生命を吹き込み、出会いを運命的なものに導いてくれる。
試着してみると、とても軽くて暖かい。シルバーがレフ板となって顔回りが明るく見える。
私はそのジャケットをお迎えすることに決めた。これには何を合わせよう。大寒波さえ楽しみになる。
家に帰って広げてみると、ベージュと茶色の地味な部屋で、そのダウンジャケットは宇宙服のように浮いた。
「どう? これ」
「わお…… 私にはちょっと難しいかなー」
いつもは褒めてくれる娘の微妙な言葉に、私は弱気になった。冒険が過ぎたかしら。
来月引き落とされる代金が急に重くのしかかってきた。
返品するべきか。とりあえずタグを付けたままクローゼットに入れた。
そして予報どおり大寒波は襲来した。
毎日気になって仕方がなかったあのジャケットを、着ることにした。
もう返品はできない。慎重にタグを切る。
派手かな。みんなびっくりするかな。家を出るときからドキドキした。
ところが、自転車で走っていても、たいして誰も見てこない。
スリル満点で職場に着いても、ドン引きされるような反応はない。
この寒さに上手く溶け込んでいるようだ。
ありがとう、冒険の友! 気分は上々、大寒波を迎え撃つこともできた。
服は着る人にパワーをくれる。
ここ一番の勝負のときは戦闘用モビルスーツとなり、落ち込んだときは気分を上げるタンバリンとなる。パーティーでは彩りに満ちた花となるし、ときには冒険の相棒となる。
見渡せば、ファストファッションから高級ブランドまで、街中に服は溢れている。それだけ服の魔法には需要があるということだろう。
でも、この溢れる大量の服は、この先一体どうなるのだろうか。
2020年の段階で、日本の衣料廃棄物は年間50万トンを超えると推測されている。
アパレル業界では多方面で企業努力を求められているようだが、じゃあ購入した私たちには何ができるのか。
私は微力ながら、惚れこんで買った服を大事に長く着るようにしている。好きな服を手入れする時間はまた、癒しの時間となる。
サイズや年齢的に着られなくなった服は、娘が好めば着てもらう。
そして服を買ったら同じ分だけ、古い服をリサイクルに出す。
今や地域の資源回収から店頭での回収まで、古着のリサイクルはいたるところで可能だ。
小さなことでも意識しながら大切に服を着て、幾つなっても自分らしいおしゃれを探求していきたい。
同志の皆さま、一緒に服を探す旅に出かけてみませんか。
***
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