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「思いやり」をもって教えて、「心」を学ぶ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:777(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
「しっかりチェックするように何度も言ったのに、なんでやってないの? 使えないやつだな」
 
興奮して言ってしまった瞬間、「しまった!」と思いました。
人のことを「使えない」なんて偉そうに言う人間を、私は人一倍嫌ってきました。それと同じことを自分が口走ってしまったのです。
 
新しく職場に入ってきた男性を教育していたときの出来事でした。私はすぐに取り繕うようなことを言いましたが、相手はずっと肩を落としていました。
十五年近く前のことですが、いまもこのときのことを思い返すと後悔して、男性に申し訳ない気持ちになります。
 
どれだけ年齢と経験を重ねても、人にものを教えるのはとても難しいと感じます。それは、わかりやすい教え方や、相手の成長に合わせた情報の伝え方など、技術的な面だけではありません。
 
常々気をつけなければならないと考えているのは、「教えるという立場を、偉くなったと勘違いしないようにする」ということです。
このことは、いくつかのセミナーを受け、学ぶ側に立ったことで、なおさら意識するようになりました。
 
「初心者なんて、みんなダメだから。全員できないから」
 
以前私が受講した、とあるセミナーで講師が言った言葉です。人を小馬鹿にしたような言い方に、私は反感を覚えました。
 
「いやな言い方をする人だな。初心者ができないのは当たり前で、できるようになるためにこの講座を受けているのに……」
 
その後、講義を受けてみて、その講師が悪い人ではないということはわかりました。が、終始言葉の端々に「上から目線」がにじみ出ていました。
相手が知らなくて当然のことを教えているにもかかわらず、知らないことを馬鹿にするようなその方の教え方は、けっして気分のいいものではなく、最後まで不快感を拭うことができませんでした。また教えられたことも、さほど有益さを感じられるものではありませんでした。
 
近年、「学び直し」が注目され、さまざまなセミナーが数多く開かれています。私もこれまでにいくつかのセミナーを受けてきました。
 
こうしたセミナーは、社会人が受講生ですから、危険を伴う訓練などよほどの理由がないかぎり、講師の方の態度や教え方は、丁寧で礼節のあるものがほとんどです。
まして受講料をとるビジネスであれば、講師がきつい教え方や不快な態度をとれば客足は離れてしまうので、いっそう失礼のない対応、一定の敬意を払って教える姿勢が心がけられていると思います。
 
現在、私は天浪院書店のライティング・ゼミを受けているのですが、さきほどのセミナーとはちがって、とても気持ちよく学ばせてもらっています。
役に立つ技術を教えてもらえているだけでなく、文章を書く楽しさそのものを思い出すこともできました。
その理由は、講義の内容もさることながら、講師の方がとても礼儀正しく、紳士的な教え方をされていることも大きいと思っています。
 
失礼な教え方と礼節をわきまえた教え方、この両極端なセミナーを体験して感じたのは、気分良く勉強したほうがよく頭に入るし、よく身につくということです。一方、不愉快な気持ちで勉強した場合は、どんな内容でもすんなり頭に入ってきません。
 
これらのセミナー体験は、自分が職場で行う新人や後輩への教育の仕方を客観的に見直す良い機会にもなりました。
 
私が新人や後輩の教育を行う際、いつも悩むのが、どうすれば自信をつけてもらいながら仕事を覚えてもらえるのか、ということです。
甘やかしたり機嫌をとったりしていれば気持ちよくサクサク覚えてくれる、というわけでもありませんから、必要と思ったときには叱ったり厳重に注意したりもします。
ただし、そこで重要になるのが、「上から目線にならない」ということです。
 
相手の自尊心を不必要に傷つけるような言動は、たとえ負けん気の強い相手だったとしても、けっしてプラスに働かず、相手の学びを促進させることはほぼないと思うからです。
 
反対に、しっかり相手に寄り添い、敬意を示した上で指導した場合は、少々厳しい言い方になっても、たいていの人はしっかりとこちらの意図をくみ取り、学んでくれます。
 
具体的には、ミスをしてしまった相手の事情や理由をいったん受け止めてから、正しいやり方を伝えたり、自分も同じ失敗をしたことがあると経験談を織り交ぜながら、失敗しない方法や根本的な勉強の仕方を伝えたりしています。
できるかぎり相手と同じ目線で、どうすればより良い仕事ができるようになるのかを、いっしょに考える関係をつくるようにしています。
 
年齢を重ねて立場が上がっていくと、教える側になることが増えて、学ぶ側になる機会が減っていきます。勢い、学ぶ側の気持ちを忘れて、配慮を欠いた教育や指導をしてしまいがちになります。
 
教える側も学ぶ側も、本来、立場の違いがあるだけで、人としての存在価値に優劣がついているわけではありません。
しかし、教える側に立って、ある種優位な立場から一方的に話し、相手を評価する状態がつづくと、だんだん自分が偉くなったように錯覚する人は、私の経験的に見て少なくありません。
こういう私自身、冒頭の一幕のとおり、興奮のあまり新人の男性にひどいことを言ってしまったことがあります。当時の私は自分の優位な立場から気が大きくなって、勘違いしていたのだと思います。
 
ここで改めて大切だと痛感させられるのが、人にものを教えるときの「思いやりの心」です。
 
教える相手は、性格も能力もみんなちがいます。学ぶときの心構えや姿勢も人それぞれです。そうした個別の事情を心にとめた上で、各人に合った教え方を模索し実践していくことが肝要なのだと思います。
口で言うほど簡単なことではありませんが、だからこそ自分にとっても学んで成長する良い経験になるはずです。
 
今後も、人生の少し先を行く先輩として、後進に自分の知識や技術を教えることがあると思います。しかし、教えるばかりでは、学ぶ側の視点を忘れて独り善がりになってしまう恐れがあります。
人生百年、百二十年といわれる時代ですから、まだまだ学べること、学ぶ時間があります。
教える側になるだけでなく、これからも興味のあるセミナーを受けてみて、教える側と学ぶ側、両方の視点から、「思いやりの心」を磨いていきたいと思います。
 
 
 
 
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2025-02-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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