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管理者になれなかった日、僕の働き方が変わった


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記事:内山遼太(ライティング・ゼミ1月コース)
 
 
「推薦が取れなかったと知った瞬間、頭の中が真っ白になった。努力が報われることを信じていた僕は、どうしても現実を受け入れられなかった」
デイサービスの会社で管理者になるためには、現管理者たちの推薦を受けて初めて試験を受ける資格が得られる。僕の勤める店舗の管理者である平山からは推薦を得られたが、他店舗の推薦という最後のハードルを越えられなかった。目指していた管理者への道が閉ざされたように感じ、深い挫折感が心に広がった。
 
僕がデイサービスで働き始めて2年。職場は利用者一人ひとりと直接向き合える仕事であり、そのやりがいに魅力を感じていた。たとえば、週に3回通う80代の男性利用者は、元々あまり会話をせず、レクリエーションにも積極的ではなかった。しかし、ある日「昔の写真を見ながら話をしたい」という言葉をきっかけに、僕は彼のために小さな「思い出の写真会」を企画した。スタッフや他の利用者たちと一緒に彼のアルバムを囲みながら、彼の思い出話を聞くうちに、表情が次第に柔らかくなっていった。数か月後、彼が別の利用者に写真会の魅力を語る姿を見たとき、この仕事の素晴らしさを改めて実感した。
 
ただ、現場での仕事には限界も感じていた。利用者のために新しいプログラムを考えても、最終的には管理者の承認が必要だ。現場スタッフとしてはできることが限られており、提案を却下される悔しさもたびたび経験した。もっと自分の意見を通したい、施設全体のためにより大きな影響を与えたいという思いが強まり、僕は管理者試験を目指すことにした。
 
平山は僕の努力を見てくれており、「内山さんなら推薦にふさわしい」と背中を押してくれた。その言葉に励まされ、僕は推薦を得るための準備を始めた。これまでに企画した活動プログラムの成果や、利用者満足度アンケートの結果、スタッフとの協力によって解決した問題などを資料にまとめ、分かりやすいプレゼンテーションを用意した。同僚にも協力してもらい、練習を重ねて改善を続けた。
 
最初に訪れたのは、近隣店舗の管理者である高上だった。ベテランの管理者である彼は、的確な指示と判断力で知られており、店舗全体を統率する力を持つ人物だ。オフィスに通されると、高上は穏やかな表情で迎えてくれた。僕は用意した資料を元に、自分の取り組みや実績を丁寧に説明した。特に、「利用者の個別ニーズに応じた活動プログラム」の成果について話したとき、高上は「いい取り組みだね」と感心してくれた。
 
しかし、話が終わると彼はこう続けた。
「あなたが一生懸命頑張っているのは伝わった。でも、推薦を出すには慎重にならざるを得ない。他店舗の管理者として、内山さんの仕事ぶりを直接確認する機会がない以上、推薦するのは難しいんだよ」
 
その言葉に、僕は思わず沈黙した。どれだけ努力しても、それが他店舗に伝わらない現実に直面し、自分の力不足を痛感した。
 
次に訪れた稲村の店舗でも状況は同じだった。稲村は明るくエネルギッシュな人物で、現場の職員や利用者とも親密に接している。オフィスに通されると、稲村は「平山さんから話を聞いてるよ」と笑顔で迎えてくれた。僕は高上と同じようにこれまでの成果を伝えたが、彼女も「直接あなたと仕事をしたことがないから、推薦を出すには難しい」と言葉を濁した。
 
その日の帰り道、僕は深い挫折感に包まれた。これまでの努力が足りなかったのか、それとも自分の伝え方に問題があったのか──何度も自問自答を繰り返した。しかし、その後も悔しさに立ち止まるだけではなく、どうすればもっと評価されるかを考え始めた。推薦に落ちた経験は、僕に「自分の働き方を見直す」という重要な課題を与えてくれたのだ。
 
翌日、僕はいつも通り利用者の対応に当たった。ある利用者から「あなたが考えたリハビリ、楽しいよ。本当にありがとうね」と声をかけられたとき、私は大切なことに気づいた。肩書きがなくても、現場で利用者に寄り添い、工夫を重ねることで結果を出すことができる。管理者という立場がなくても、僕が努力を積み重ねれば利用者やスタッフにとって価値のある存在であり続けられるのだ。
 
また、推薦に落ちた後、僕は別の目標を立てることにした。現場での経験を積み重ねることで信頼を得て、次回の推薦に挑戦する道を選んだ。それと同時に、現場で実現できることに集中し、デイサービスの質を高めることに注力することにした。たとえば、利用者やその家族が参加できる「地域交流会」を企画し、スタッフと一丸となって取り組んだ。このイベントは大きな成功を収め、利用者やその家族から「普段会えない人とも交流できて楽しかった」という感想を得ることができた。この経験を通じて、僕は「自分次第で現場でも多くのことを達成できる」という自信を深めた。
 
「役職や肩書きではなく、自分が何を目指し、どう行動するかが大事だ」推薦に落ちたことで得たこの教訓を胸に、僕はこれからも利用者やスタッフに貢献し続ける。そして、いつか再び挑戦する機会が訪れたときには、確固たる実績を持って臨みたいと考えている。
 
 
 
 
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2025-02-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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