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書けなくなったら「移動」せよ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:久保田倫生(ライティング・ゼミ1月コース)
 
 
「あー、終わらない!!」
 
とある年末のこと。私は東京の職場で一人声を上げた。
今年も残りわずかとなり、そろそろカウントダウンが始まりそうな12月20日。私の前には年内納期の報告書が立ちはだかっていた。
 
しかもタイミングが悪いことに、明日は出張で秋田、その後移動して明後日は午前中に岩手で仕事が一件、そしてその日の19:00までに京都に入らないといけない。そしてその次の日は滋賀で視察。週末はパパ友ママ友とクリスマスパーティの予定があり、さすがに今から仕事でいけないとは言えない。
 
まずい! 時間がない。さすがに切羽詰まった私。
 
あー、やめた!
職場のデスクにいてもこれ以上何も出てこない。
 
やけくそになった私はおもむろにPCを立ち上げ、出張の交通手段を変えた。
東京→秋田→岩手→京都→滋賀→東京、この工程をすべて「新幹線」に変えて、仕事はすべて新幹線の中で行おうと覚悟を決めたのだ。幸いにして、報告書に必要なデータ類はそろっている。それらをすべてPCに入れ、報告書を書くということに特化し、新幹線の中でやっつけようという作戦だ。
 
正直、新幹線の中で仕事はやったことはあるが、メールの返信ぐらいで、報告書や原稿作成など、それなりに考えたり、集中したりしないとできないようなものをやったことはない。今まで経験がないのだから正直どうなるかわからない。新幹線の揺れで電車酔いにあうかもしれない。しかも、ここを逃すと年末まで時間が取れない。本当に行き当たりばったりである。でもやるしかない、追い込まれているのだから。
 
というわけで、次の日、東京駅東北新幹線乗り場から赤のラインが印象的な秋田新幹線こまちに乗って、一路秋田へ向かった。
 
そして乗るなりすぐにPCを開いた。がしかし、どうも気乗りしない。仕方がないので、乗車前に買ったコーヒーを飲みながら車窓からみる景色に目を移した。
 
東京のビルの谷間を超え、だんだんと高い建物が減っていき、荒川を超えて埼玉県に入った。
そこで不思議なことが起こったのだ。
 
ん!! なんだ。
コーヒーに入っているカフェインがちょうど効きはじめたころか?
 
心なしか頭がクリアになったような気がしたのだ。
 
私はクリアになった頭をフルに動かし、報告書の構成を考え、ノートにメモを取った。
よし、この構成で進めよう。
 
さらに、大宮を超えたあたりから頭のクリアさが一段と増す。私は急いで自分が考えた構成に従って報告書作成に取り掛かったのだ。
 
 
あれから何分たっただろうか。
ふと、顔を上げ、窓の外を見ると、積もった雪が太陽の日差しを浴びてキラキラと光っていた。
目に映るすべてのものが美しく見えた。
ああ、きっと頑張った私へのご褒美なんだなと思った。
 
 
そう、報告書はできあがっていたのだ。
 
 
次の日、移動する新幹線の中で校正を済ませ、京都に向かった。
京都のおいしい食事をつまみながら日本酒を傾け、今回起こったことを振り返ってみたのだ。
 
私の感覚はちょうど東京を出て、埼玉県にはいったぐらいから頭がクリアになり、大宮を出たあたりから、集中力が体感的に10倍ぐらいになったイメージ。そして、東京から離れれば離れるほど感覚がクリアになっていき、秋田に近づくころにはその感覚がマックスになっていた。
なぜそんなことが起こったのか?
 
その時考えた仮説は以下通りである。
 
人は日々様々なものに追われ、様々なしがらみの中で生きている。家庭では夫・妻、父・母として、職場では会社の一員として、部下でもあり上司でもあったりする。そういう周りからの「こういう人である」「あなたはこういう役割である」という周りの人が思う「私」(期待すると言ってもいいかもしれない)というものを無意識のうちに演じているのではないか。
 
無意識に演じているといっても脳は稼働しているわけで、脳のメモリーのうち、多くの部分をその無意識で演じている部分にとられていて、新しいものを考える「空き」がない状況に陥っているのが日常ではないか。
 
それが今回出張で、職場から距離が離れていくたびに無意識に演じなければならないことが減っていき、脳に「空き」ができたのではなかろうか。
 
例えば東京を超えて埼玉に入ったら「東京の職場にいる〇〇会社の一員の私」というものを演じる必要はなくなり、大宮を過ぎると、東京都市圏での生き方みたいなものを演じる必要もなくなる。
秋田までいったら、私は縁もゆかりもない土地なので、私のことを知っている人はほとんどおらず、何かを演じる必要もなく、日ごろのしがらみからかなり解放されている状態と言えるだろう。
 
そう、なんらかアウトプットする際には、どうしても脳をフル活用しなければならない。
今までインプットしてきた情報を何らかの形で整理し、論理立てて表現しなければならない。そのためには脳が働くスペースを作ってあげないといけないわけで、今回そういった無意識で演じるために稼働している脳の部分を一旦解放し、オープンにすることで、脳が自由に動けるスペースを確保できた。結果、報告書のとりまとめがスムーズに進んだ。これが私の仮説である。
 
 
さて、私はそれ以来、報告書の作成や原稿書き上げる際に煮詰まったときは、カフェやコワーキングスペース等、職場のデスクや自分の家など、しがらみが多い部分から「移動」して書き上げるようにしている。すると、不思議なことに、あんなに進まなかった筆がスルスルと進むではありませんか。
 
そして自分で色々と試してみた結果、物理的距離が離れるほうが望ましいが、必ずしも距離をとる必要はなく、要は日常のしがらみを感じにくい場所であればどこでもよい、これがポイントだとわかった。
 
 
というわけで、もし私が全国の締め切りに追われている皆さんにアドバイスを送るとするならばこうなる。
 
書けなくなったら移動せよ!
少しでもいいから、いつもと違う場所に移動してみよう!
 
と。
 
 
さぁ、また出張に行くぞ~ 
 

「ただ出張に行って日本酒が飲みたいだけだろ!」
というもっともなご意見に対してはノーコメントとさせていただきます。 
 
 
 
 
***

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2025-02-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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