必要なものは、必要なときにやってくる
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:777(ライティング・ゼミ11月コース)
「運命」
というと大げさに思われそうですが、私にとって天狼院書店との出合いは、そう呼べるほどの衝撃がありました。
あるコンテストに応募した小説が、最終候補に残れず落選して間もないころのことでした。当時、私は他のコンテストでも最終選考の手前で落選することがつづき、落ち込んでいました。
それで気分転換しようと、京都へ小旅行に出かけることにしました。気ままに過ごして頭を休ませようと思ったのです。
ところが、現地に着いて、鴨川をながめても、にしんそばを食べても、寺町を散策しても、小説のことがずっと頭から離れませんでした。
どうすればおもしろいストーリーをつくれるのか、人を惹きつける「面白い文章」とはどういうもので、どうすれば書けるようになるのか。
そんなことばかり考えていたら、あっという間に帰京する日になりました。
その日はホテルをチェックアウトしたあと、事前に調べておいたカフェでコーヒーを飲んでから、新幹線に乗ろうと考えていました。しかしいざお店に行ってみると、私が見た営業情報とはちがって休業日でした。
がっかりしながらどうやって時間を潰そうか考えたところ、近くに町屋を改装したカフェがあったのを思い出しました。
「そういえば、ここに来る途中にもう一軒あったな……」
そのお店の前にもどってみたら営業していました。
店内は入ってすぐが書籍の販売スペースになっていました。カフェを併設した書店だったのです。
おもしろいお店だなと思いながら、本好きの性で書棚に首を向けました。瞬間、ある文言が目に飛び込んできました。
「自分史上最高の文章を書くための文章術会議」
「特集『面白い』とは何か?」
ぎょっとして立ちすくみました。まさに私が考えつづけていたことが、ずばりと書かれていたのです。
それは平積みにされた雑誌の表紙でした。飛びつくように手に取りました。その雑誌の名前は――
「READING LIFE」
はじめて見る雑誌でした。表紙には夏目漱石や芥川龍之介らしき文豪たちのイラストが描かれています。そこにさきほどのコピーが書かれていました。
「面白いとは何か?」
私のための本だと思いました。でなければこんなにタイミングよく目の前にあらわれるなんてことないでしょう。私は中身も見ずにレジにもっていって買いました。
このお店が「京都天狼院」だったのです。
購入した雑誌は、小説や文章にさまざまな角度から光をあてた記事が満載で大満足の内容でした。発売元をたしかめると「天狼院書店」とあります。
すぐさまインターネットで調べました。すると東京を中心に店舗を展開している書店で、さまざまな講座を開いていることがわかりました。
そのなかに、文章を書く講座「ライティング・ゼミ」があるのを見つけました。書店が開く文章講座、文章について熱く考察したあの雑誌をつくった書店の講座です。受講を決めるのに時間はかかりませんでした。
ゼミは実用性と再現性に富んだ執筆技法を教えてくれるもので、初回から心を奪われ、のめり込みました。文章について学ぶ楽しさを思い出せただけでなく、なにより文章を書くことにワクワクしている自分を発見できたからです。
小説家を志して長い年月が過ぎていましたが、思えばこの間、文章を書くことを楽しんだ記憶はありませんでした。むしろ自分の書いたものに納得できず、自己否定をくり返してばかりでした。
小説を読むことも、つい批判的な目になってしまって、純粋に読書を楽しむことができなくなっていました。
むかしは時間を忘れるほど夢中になって本を読み、自由奔放に文章を書いていたのに、その楽しく満たされた感覚は完全になくなっていました。
どうしてこんなに苦しいことばかりやっているんだろう。本当に自分は文章を書きたいのだろうか。
小説を書くという人生の目的も、もはや形ばかりで意味を失っているように感じていました。
ところが……。
「文章を書くって、楽しいな」
毎週一本、ゼミに提出する課題文をやっとの思いで書き終えて一息つくと、いつもしみじみ思うのです。やっぱり文章を書くことが好きだと。
それまでの私は、小説を世に出すという結果ばかり気にして、そのほかの物事をないがしろにしてきたところがありました。
結果はもちろん大切です。しかし、そのために文章を書く楽しさを忘れてしまっては本末転倒。なのに結果に拘る心はどうすることもできませんでした。
四ヶ月の講座期間中、日々の仕事のかたわら毎週課題を提出するのは、題材を見つけることも含めて大変な作業でした。
最初の二、三本を提出してからはなかなか題材が見つからず、毎回四苦八苦して書いていました。しかし、だからこそ書き上げるとなんとも言えない達成感と充足感がありました。そしてなにより、この苦しい課題提出は、自分自身を見つめ直す良い機会にもなっていました。
私の課題文の題材は、大半が自分の体験でした。とはいえ最初はある程度客観的に、当たり障りのないことを書いていました。しかしすぐにネタは尽き、以降は締め切りのプレッシャーもあって、時間的にも気分的にも抜き差しならない状態になりました。
勢い、自分の内面の深いところから題材を探すようになりました。社会生活では隠している自分の弱さや醜さにも目を向け、それを題材にしなければ、課題をこなせなくなったのです。
ライティング・ゼミは、文章力を鍛えることに加えて、自分の内面を掘り起こすという意味でも得難い学びになりました。
自分のことを書いて、不特定多数の第三者に読んでもらえる文章にするには、自分を客観視することが不可欠で、これが私の内省、内観になったのです。
近年、「ジャーナリング」など文章執筆の様々な精神的効用が注目されています。
私にとって課題文の執筆は、長年小説を書くために痛めつけてきた自分自身を見直し、治癒する行為だったとも言えます。その甲斐あって、いまはまたむかしのように文章執筆を楽しめるほどに回復しました。
課題として提出した十数本の原稿をいま見返すと、われながらよく書けたなと思います。拙い文章ばかりですが、それでも自分自身から削り取った大切な欠片たちです。胸を張ることはできなくても、抱きしめたい気持ちが湧いてきます。自分の文章をこんなふうに思うのは、小説家を目指すようになって初めてのことです。
天狼院書店には「人生を変える書店」というコンセプトがありますけれども、四ヶ月前の自分と現在の自分をくらべると、まさしくこのコンセプト通りになったと実感します。
文章を書く素朴な楽しさを思い出させてくれて、やっぱり文章を書くことが好きだと思わせてくた天狼院書店。人生思うように行かず、弱り切った時期に出合ったのは、いま思えば必然であり、自然であり、運命だったとさえ思います。
なぜなら、私の人生を「変える」だけでなく、私が見失っていた人生に「帰る」きっかけをつくってくれた書店でもあるからです。
これからも山あり谷ありの人生で、悩んだり、苦しんだりしていくことでしょう。ですが、その苦境の切り抜け方は、ライティング・ゼミで身につけられたと思っています。
転んで立ち上がるときの私の杖、先行きの見えない人生に立ち向かうための私の武器、それは――
「文章を書くこと」
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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