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The Worst Brothers(最凶兄弟)


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西尾たかし(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
※この話はフィクションです。
 
夜の街、血の匂いが漂う裏路地。
街灯の薄明かりに照らされ、二人の男、次郎丸(じろうまる)と三郎太(さぶろうた)が足早に歩いていた。
 
二人とも身体にピタリとあった黒いスーツを着て、白いシャツに黒のスリムネクタイというお揃いのコスチューム。
 
相棒よりも少し大柄な三郎太が、半歩先を猫背で歩く次郎丸に話し掛ける。
「ボスは俺たちが来ることを知ってるはずだよな?」
「当然だな」
「罠を張って待ち構えてるんだろうなぁ」
「当然だな」
 
淡々と話しながら、二人の口元には笑みがこぼれている。
「いよいよ、今日で終わりかねぇ?」
「かもな」
二人は顔を見合わせ、ニヤリと笑った。
先を行く次郎丸が、いかにもな雑居ビルの前で立ち止まる。
「着いたぜ」
ビルの最上階が二人の目的地。ボスのアジトだ。
 
重い鉄の扉がギシギシと開く音が響く。
広い部屋。かつてはキャバレーか何かだったであろう場所。
部屋のあちこちに、一見してスジ者と分かる男たちが配置され、いっせいに入り口に視線と銃口を向ける。
その数は、1ダースは下らない。
 
そして、中央のソファに、ふんぞり返る男。
組織のボス。
その傍らには、ツインテールの少女が鎮座する。
赤いワンピースに膝が露出したスタイル。背中には白く汚れた兎のリュック。その視線は宙を見つめる。
一見場違いなほど無邪気なその姿は、けれど確かに、血の匂いのするこの空間に溶け込んでいた。
 
ボスが、今まさに部屋に入ってきた二人に声を掛ける。
「……やっと来たか。次郎丸に三郎太。最近じゃ、最凶兄弟って呼ばれてるんだっけか? いずれにせよふざけた名前だ」
笑いながら、ボスは続ける。
「それにしても、随分と好き勝手やってくれたじゃねぇか」
 
次郎丸と三郎太は、ソファの前で立ち止まった。
ボスは傍らの少女の頭に銃口を押し付ける。
「ところでお前ら、本当に俺を殺せると思ってんのか?」
 
少女、千秋(ちあき)は小さく息を呑み、震える声で叫んだ。
「次郎おじさん、三郎おじさん……助けて!」
次郎丸と三郎太はわずかに肩を揺らした。
 
次郎丸が口を開く。
「……なるほど、こんなもんか」
三郎丸が続ける。
「想定通りというか、ちょっとひねりがねえなぁ」
 
 
ボスが少し驚いたように目を細める。
「おいおい、この状況で何を言ってんだ? 大事な姪っ子を人質に取られて、数でも勝負にならねぇぞ。こんなんで俺を殺せると思ってんのか?」
 
「もちろん。太郎一太(たろういった)兄貴の仇は取らせてもらうぜ」
「あぁ、見たところ雑魚ばっかりっぽいからな」
二人はすっかり落ち着き払っている。
 
動揺を隠せないボス。
「その太郎一太の仇ってのが、腑に落ちねぇ。確かに太郎一太は俺が殺した。とんだヘマをやらかしてくれたからな」
次郎丸と三郎太は静かに頷く。
ボスは続ける。
「だが、あいつは親兄弟のいない天涯孤独の身だと聞いていたし、女にも興味がねぇって話だった」
ボスはじろりと傍らの少女を見る。
「……なのに、こんな娘がいるって死んでから分かった……」
千秋は、怯えたように目を揺らした。
 
次郎丸と三郎太が顔を見合わせて、プッと吹き出す。
「気づいちゃったかぁ」と次郎丸。
「いい線行ってたんだけどなぁ」三郎太が続ける。
「……は?」目を見開くボス。
 
次郎丸がニヤリと笑い、話し始める。
「俺たちに兄貴なんていねぇよ。お前が人質に取ったその千秋も、どっかの孤児を適当に仕立てただけだ。お前が俺たちを”太郎一太の復讐者”と思い込むように、わざと噂を流したんだよ。そしたら案の定、俺たちの思惑通りに千秋を人質に取って、こうして間抜け面して待ってたってわけだ」
 
「何だと!? いったい何のために?」
白目を剥くボス。
取り巻く手下たちの顔にも動揺が見える。
 
次郎丸に代わって、三郎丸が答える。
「何のために?  やってみたかったんだよ、“復讐”ってやつを。映画とかで復讐劇ってぞくぞくするだろ? ああいうのって見るより、実際にやる方がもっと興奮するじゃねぇかと思って、この遊びを思いついたんだよ」
次郎丸が続ける。
「そうそう、こいつにしては冴えてるじゃねーかと思って、誰の復讐をしようかなと考えてたら、太郎一太っていう間抜けな殺し屋がヘマをして殺されたって話を聞いたもんでな」
 
「お前ら、それだけのためにこんな真似を……狂ってやがる」
ボスが呻くように言葉を吐き出す。
 
次の瞬間、銃声が響いた。
撃たれたのは、ボスの手下の一人だった。
音の出所に目を向け、ボスはまた白目を剥く。
「はー!?」
隣に座る千秋の手には、ほどけた縄と、さっきまで自分が握りしめていた拳銃。
その銃口が今、自分の方に向けられている。
 
千秋がふわりと微笑む。
「ねぇ、ボス。本当に、私が“巻き込まれた”だけだと思ってる?」
「……何?」
ツインテールの少女。赤いワンピースに膝が露出したスタイル。背中には白く汚れた兎のリュック。その姿は、無邪気さを増していた。
 
ありえない、という表情のまま、状況を理解しようと口を開き、そのまま凍りつくボス。
 
一拍遅れて、次郎丸と三郎太も千秋を見つめ、驚いた仕草を見せるが、やがて顔を見合わせ、ククッと笑う。
「俺たちの他にもこの遊びを楽しんでるやつがいたか。ボス、まぁ、あんまり深く考えるなよ。遊びってのは、そういうもんだ」
 
「おじさんたちが、随分楽しそうだったから」
千秋が無邪気に言う。
その言葉にニヤリと笑い、次郎丸と三郎太が同時に声を上げる。
「こいつはすげぇな!」
 
その声を合図に二人は同時に動く。
次郎丸の二丁拳銃が火を吹き、最も近くにいた手下の頭を撃ち抜く。
三郎太の機関銃が、別の男の腹を蜂の巣にする。
銃声が飛び交い、室内に火薬の匂いが充満する。
 
混乱に乗じて、千秋も再び引き金を引く。
撃ち抜かれた男が、血の泡を吹いて崩れ落ちる。
 
ボスの顔が歪む。
「……テメェら……」
だが、もう遅い。
次郎丸と三郎太は笑いながら、残った手下を次々と屠っていく。
「おいおい、楽しいじゃねぇか!」
「もっと暴れろよ、ボス!」
ボスは必死に出口の方へ走ろうとするが、背後から千秋が囁く。
 
「もう終わりだよ」
 
銃声が響く。
ボスの体がよろめき、血の花を咲かせながら床に崩れ落ちる。
静寂。
血の匂いだけが、室内に充満していた。
 
 
夜の街を歩く三つの影。
血にまみれた服のまま、次郎丸と三郎太は満足げな顔をしていた。
「いやぁ、楽しかったな」
「ほんとにな」
千秋は二人の少し前を歩きながら、ふと振り返る。
「次はどこ行くの?」
二人は顔を見合わせ、ニヤリと笑う。
「どこでもいいさ」
「新しい遊びを探しに行くだけだ」
千秋は、兎のリュックの肩紐をぎゅっと握りながら、にっこりと笑った。
夜風が、彼らの笑い声をかき消した。
 
 
 
 
***

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2025-02-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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