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茶道とは、リベラルアーツである.

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ほり こずえ(ライティング・ゼミ3月コース)
 
 
人材不足である。
 
物流の2025年問題のことではない。茶道人口のことである。
 
お茶の教室に10年以上通っているが、新人が増えたことが一度もない。
しかも5人しか生徒がおらず、その中で45歳の私が一番若い。
 
茶道具屋さんいわく、茶道をやる人が減ったので、お道具の値段が昔に比べるとかなり下がってしまっているらしい。また、茶筅などのお茶に欠かせない道具を作る職人も、需要の減少に伴って減っている。
 
危機的状況である。このままではいずれ、茶道をやりたくても出来ない未来が待っている気がしてならない。
 
茶道を愛するものの端くれとして、茶道人口をもっと増やしていきたいと思う。
 
しかし、である。
ためらいがある。友人知人に「茶道やろうよ!」と自信を持って言えない自分がいるのである。
 
なぜか?
 
説明できないからである。茶道は面白い。私自身10年以上続けられているのは、面白いからである。しかし、「なぜ面白いのか?」が言語化できないのである。
 
また、これも説明できない。「何の役に立つのか?」
茶道をやることが、人生にとってどんな役に立つのか、が説明できない。茶道は1回のお稽古が2時間程度、お茶事となると最短でも4時間程度など、それなりに時間(とお金)を費やすことになるが、時間を費やした対価が何なのかが、うまく説明できないのだ。
 
いや、説明はしようと思えばできるのだが、「日本文化が学べる」「立ち居振る舞いが美しくなる」など、なんとなくぼやっとした、「刺さらない」ベネフィットしか出てこない。この説明では、聞いた人はおそらく着物を着て正座をした女性が畳の上でこじんまりとお茶を点てているステレオタイプで退屈な茶道像しか想像できないかもしれない。
 
実際、やっているのはシンプルに「お茶を点てる」、それだけなのである。それだけのために茶室を作り、床間に掛け物を掛け、季節の花を飾り、炭をついで湯を沸かし、茶碗や茶筅などの道具を取り揃え、客を招き、一連を手順を踏んでやっと亭主が客に一碗の茶を出すのである。
 
で、それが何の役立つのか?
この急速に変化している現代社会をどうやって生き抜いていくかという視点に立った時、一服のお茶を点てて飲むことがどう役立つのか?
他に時間を費やすべきことがたくさんあるのではないか?
 
役に立たないまでも、明確な面白さがどこかにあるのか?
オンラインゲームをしたりNETFLIXを観たりすることより楽しめる何かがあるのか?
 
ここまで考えて、ふとこの感じは何かに似ていると気づいた。
この感じというのは、直接的に何かに役立つかと言われると答えられないが、しかし人間にとって本質的に生きる上で必要なものであるような気がする、という感じである。
 
茶道と同じような「感じ」を感じるものがある。
 
「教養」である。いわゆる「リベラルアーツ」と呼ばれるものである。
 
「「liberal arts」は、広範な学問領域を指す英語表現である。古代ギリシャ・ローマ時代に起源を持ち、文学、哲学、数学、自然科学など、人間の知識・技能を広く深く育むための学問分野を総称する。」(weblio 辞書)
「リベラルアーツを、社会人として身につけるべき教養、といった薄っぺらいニュアンスで捉えている人がいますが、これはとてももったいない。リベラルアーツのリベラルとは自由という意味です。アートとは技術のことです。つまり「リベラルアーツ」というのは、「自由の技術」ということです。」(『知的戦闘能力を高める独学の技法』山口周)
 
つまり、専門分野に特化するのではなく、科目横断的に学ぶことによって、幅広い知識を身につけることにより、世界を総合的に把握する能力が養われる。それによって既存の常識にとらわれず自由な視点で物事を認識でき、それが自由に生きるため武器となる、ということではないだろうか。
 
茶道も実は科目横断的である。1碗の茶を点てるために、様々な分野の知識を総合させる。
茶室を作るには建築の知識、茶碗を選ぶには陶芸の知識、掛け軸を選ぶには禅や中国文学、日本文学の知識、花を選ぶには植物の知識、茶事を催すにはコミュニケーション力やプロデュース力、また高い美意識を養うことが求められる。
 
つまり、建築、美術工芸、文学、歴史、宗教、コミュニケーション術、総合プロデュース術など茶道を通して学べることは多岐にわたる。
 
しかも、ただ頭に知識を入れるだけではなく、茶事というイベントで実践することによって、自分の地肉としていくことも可能である。
 
一碗の茶の背後には、とても広大で豊穣な世界が実は広がっているのである。
 
VUCAの時代を生き抜くための、自由の技術としての茶道。
 
ときどき面倒なこともあるが、イチオシである。
 
 
 
 
***

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2025-03-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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