旅支度は桃太郎気分で
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:和田 千尋(ライティング・ゼミ3月コース)
旅行に行く際ひとりだけ荷物が多い。加えて荷物1つ1つも大きい。他の人がリュック1つで集合する中、キャリーとパンパンに詰まったサブバッグだったりする。他の人は、私が持っていくのをあきらめた髪の毛をカールするコテまで持参しているにもかかわらずだ。何が違うのか。私の場合、宿泊先で用意された寝間着が浴衣だった時のためのパジャマだの、朝食を食べに行くときの部屋着だの、雨に降られてぐっしょり濡れた時用の替えの靴下と下着一式が通常枚数のほかに追加で入っている。スペースがあれば替え靴も入れたかったぐらいだ。1週間以上の旅には枕も持参している。うわっアレを持ってくればよかったと歯噛みした記憶が次回の荷物の多さを生む。
荷物が多い人・少ない人の基本法則は「多い人は少ない人をいいなと思うが、逆はあまりない」ということだろう。もちろん荷物の多寡が貧富の差である場合はのぞく。夫が友人と香港旅行に行った際に、件の友人はジーンズの後ろポケットにパスポートと財布をつっこんだのみで出国したという。それがカッコ良かったと今でも語り草となっている。
情報誌で特集が組まれるほどに、荷物がコンパクト=旅上手というイメージがある。家人にあきれられながら、雑誌やSNSで紹介された衣類を圧縮するポーチや小さくたためるネックピローなどを購入しては物を増やしている。荷物が多いデメリットの1つは探し物が多くなるということだ。何をどこに入れたがわからなくなり、何度もバッグの底から物をひっくり返す羽目になる。こんな私につける薬はあるのか。
題名を「桃太郎気分」とした。桃太郎の肝の据わり方はすごい。刀ときび団子をたずさえたのみで鬼退治に出発している(ようにみえる)からだ。
私だったら刀ときび団子だけで旅立つことはできない。遠くから狙えるよう弓矢がいるとか、鬼の間合いに入れなかった時のために槍も必要とか、雨あがりで地面が滑るかもしれないから草鞋に滑り止めを施そうとか、命がけの旅路には考えつく限りの下準備をしていただろう。
さらにおばあさんの肝の据わり方もすごい。物語の表記は「おばあさん」だが、桃太郎にとっては「おかあさん」だ。きび団子と刀だけで息子を死地に向かわせている。「襲われたとき用に、石礫入りのきび団子も作ったよ。いざとなったらそれを投げなさい」などと私だったら言いかねない。本当はもっと武器を持たせたいのだが、欲しいものは「きび団子」としか言わないのだからしかたない。息子を傷つけるヤツは許すまじと念をこめて、攻撃用のきび団子に石礫を仕込む。
桃太郎を旅立たせるおばあさんの態度を見ると、先回りして準備してしまう心配性は、子育てにおいても、子供の大事な芽をつみとってしまうことにつながりかねないと考える。子供に申し訳ないと思うのは天パと短足のDNAだけで十分だ。子供に害が及ぶ可能性があるならば早急に変わらなければならない。この歳で昔話から学ぶことがあろうとは。
余談だが昔話に出てくる重要な登場人物は「おとうさん」「おかあさん」年代ではなく、「おじいさん」、「おばあさん」が多い。『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』の著者である大塚ひかり氏によるとこれには理由がいくつかあるという。老人の生産性が低く、社会のお荷物と考えられていた時代、そういう主人公が最終段階で宝物を手にして裕福になることで逆転性を際立たせるためだとか、また老人が長く生きていることから善と悪に年季が入り、キャラクターが確立しているためとか、語り部が老人であったため身近だったからなどが考えられるという。また別に「おじいさん、おばあさん」という現役の子育て世代ではないことで、桃太郎が旅立つと宣言した際にも、「労働人口が減る」などと文句をいうこともなく、物分かりよく旅立たせることが自然となるという説もあるようだ。
こうして身軽に気持ちよく旅立った桃太郎は、行く先々で必要な配下と出会い、映えの先取りのような「日本一」と記された旗もどこからか手に入れる。そうして首尾よく鬼を倒し、宝物を土産に意気揚々と戻ってくる。
持ち物は事前に指定されてない限り、経験と想像によって決まる。ポジティブな桃太郎とは違い、心配性の人はより荷物が多くなる。人の気持ちを数値では表すことはできないが、荷物の量で、その人となりを測ることができるのはちょっと面白い。私の場合、分析すると宿泊所を含めた周囲を信じきれず、人を頼りきれない頑なな気持ちが荷物の多さとつながっていると感じる。そんな自分を変えるために必要なのは、持たない勇気と足りないことを恐れない心、それによる成功体験だろう。最低限の荷物で行く旅は、珍しいものと出会い景色や味覚を満喫する以上に、自分の中の壁を壊すきっかけとなるかもしれない。
暮らしの中で物が少ない人をミニマリストと呼ぶ。荷物が少ない旅行者をミニマリストとツーリストをかけあわせて「ミニマツーリスト」と呼ぶのはどうだろう。旅の醍醐味は吸収にあり。パンパンに肥え太ったカバンの中には思い出も経験も入ってこない。さあいざ「ミニマツーリスト」として旅立たん!
憧れのミニマツーリストに挑戦するか? 実は来月旅に行く予定がある。そしてその顛末はいつかの文章課題のネタとなりそうだとココロ密かにほくそ笑む……。
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