メディアグランプリ

熱量を込めて語る人に会いに行きたい。いつだってそういう人が人を動かし、世の中を変えるから。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:志村幸枝(ライティング・ゼミ1月コース)
 
 
普段受講している天狼院書店の文章講座の講師、石綿さんに会いに行った。
 
お話が上手なのは、オンラインの画面越しでも感じていたけれど、実際にお会いしてみると、その印象はまるで音量が上がったかのようだった。声が大きいという意味ではない。存在感というか、話の密度というか、「この方は、舞台の人なんだな」と思わせる空気があった。会場は天狼院書店京都店のこたつの間。春を迎え、こたつ布団はしまわれていたが、まだこたつに入っているような、ほわーとした緩やかな熱気がそこにはあった。
 
演劇がご専門だという。
 
お話を聞いていると「もっと知りたい」が高まって、質問をした。すると「いい質問ですね!」と目を輝かせ、スッと背筋を伸ばし、居住まいを正した。それはまるで、これから舞台の幕が上がるような、そんな瞬間だった。所作そのものが、落語家が羽織を脱いで、本題に入るときのような緊張感があった。観客は無言のまま息をのむ。さあ、はじまりますよ、というような。
 
話しぶりは熱を帯びていて、けれどそれは「熱弁」というより、「愛着のあるものを丁寧に紹介するときの温度」という感じだった。こういう人の話を聞くのは、心が耕される。やっぱり、人と会うのは面白いな、と改めて思わされる。
 
「話をきいていたい」と思わせる人の話は、いつだってその人の中にその言葉がある。箇条書きはあっても台本はない。しゃべり出すと、勝手に言葉が出てくる感じだ。いや、言葉よりエネルギーが先なのかもしれない。石綿さんのお話はまさにそんな感じだった。
 
 
 
 
「マツコの知らない世界」
 
わたしはこの番組が大好きだ。
毎回なにかに「異常(褒め言葉です)」に詳しい人が登場し、その魅力を全力でプレゼンする、という構成になっている。
 
初めて見たときからそのニッチすぎる内容に心を鷲掴みにされた。
テーマは「水ようかん」でも、「駅弁」でも、「電柱」でもいい。
問題はそこじゃないからだ。
 
大事なのは、「語る人」が魅力的かどうかだ。
 
「私、これが好きで、ずっと追いかけてきたんです」
「ここを見て欲しいんです。これを知ってもらえたら本望です」
 
そんな熱量に満ちた語りを前にすると、たとえ自分がその世界に興味ゼロだったとしても、なぜだか引き込まれてしまう。だから「推しを語る」を聞くのも同じエネルギーを感じて、好きだ。
 
「知らなかった世界」が「ちょっと面白い世界」になり、最後には「あしたコンビニで水ようかん買ってかえろうかな」とさえ思ってしまう。それは情報でもプレゼンでもなく、語る人の熱量がこちら側に波及して、ついには行動を突き動かした結果とも言える。
 
石綿さんのお話にも同じものを感じていた。ご自身の専門である演劇のお話をされているとき、その場の空気がほんのり舞台照明に照らされているような、そんな気配になる。演劇に詳しくなくても、観たことがなくても、「ああ、いいな」と思ってしまう。
 
その魅力は、知識の量とか、巧みな表現とかではない。
(もちろん、石綿さんはご専門なので、そのどちらもお持ちだと思います)
 
一番惹かれるのは「この人は、本当にコレが好きなんだなあ」という一点だ。
 
好きなものを語る人は魅力的だ。
その世界を誰かに伝えたい気持ちは純度がどんどん高まり透明になってキラキラ輝くのだと思う。
 
マツコさんが、ゲストの語りに時々黙って頷くだけになる瞬間がある。あの時間が私はとても好きだ。
 
きっとあれは、知識を受け取っているのではなく、相手の人生にちょっと触れているような、そんな時間なんだと思う。
 
私たちは日々、多くの情報にさらされている。役立つ情報、目を引くトピックス、バズりそうなネタ。
 
でも「この人から聞きたい」と思える話は、そう多くはない。
だからこそ、語る人の熱が感じられる瞬間がたまらなく貴重だ。
 
それがたとえ演劇の話でも、水ようかんでも、電柱の話でもいい。
そこに「その人」がいれば、私はどこまでも耳を傾けていたくなる。
 
「語る人」は空気を変える。
言葉の前に、所作や表情や呼吸があって、そのすべてで「好き」を伝えようとする。
そして、ただ情報を伝えるんじゃなく、語っている本人が、誰よりもその時間を楽しんでいる。
 
「語る」ってきっと自己表現なんかじゃない。
ほんとうは「誰かに手渡したい」という行為なのかもしれない。
 
誰かに自分の好きなものを語るのはちょっとはずかいいところもある。「むき出し」な感じがあるからだ。
「せっかく伝えても共感してもらえなかったどうしよう」という気持ちもある。
 
でも語る人の熱はちゃんと伝わる。
たとえ言葉に詰まっても、巧みな言い回しじゃなくっても、表情や姿勢や呼吸に、ちゃんと「好き」はにじむ。
 
石綿さんの「にじみ出る熱」に心を揺さぶられたのは私だけでは無かった。だって、一緒にお話を聞いていた方が、その場で講座を申し込んだくらいだから。なんかいいなー、と思った。
 
そして、もう一つ余談。
石綿さんに会いに行ったのは「天狼院フェスタ」と「タイトルの付け方1DAY講座」の2日間。
フェスタでは羽織を脱いだ石綿さんに会えて、講座の参加者には「マツコの知らない世界の出演経験者」がいた。天狼院書店のコミュニティっていろんな熱が対流していて、マグマみたいだ。
異常に濃すぎませんか? (褒めてます)
 
「好きを手渡す」ような熱を帯びた語りをいつでも目指したい。
私の好きがあふれてしまうのは「漢方の世界」
羽織を脱いで、背筋を正して、私もこう言うんだ。
 
「いい質問ですね!」
 
 
 
 
***

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2025-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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