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私は金曜日の夜になるとハリウッドに怒りを抱える羽目になる


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記事:紫葉アリア(ライティング・ゼミ3月コース)
 
 
私は頭を抱えていた。先ほどまではクッションを抱き抱えていたはずのその手で。
 
「またこのパターンかい……」
 
金曜日の真夜中のことだった。華金、いわゆる華の金曜日の夜。週休二日制で働いている人たちが2日間の休日が待っていることに胸を躍らせる日であり、いつもと心持ちが違う時間帯である。明日の二日酔いの心配をしなくても良いから今日はちょっと多めに飲んじゃおっかな?! と外で楽しむ人、家に早めに帰って自分の趣味に没頭する人、過ごし方は人それぞれだと思う。「明日が休みである」という解放感を胸に、時間面でも精神面でも思い思いの好きな時間を過ごせる。夜という時間が好きな人にとっても、気兼ねなく長い夜を過ごせる。それが華金だ。
 
私は外で楽しく過ごすも、家でまったり過ごすも好きなのだが、ネットフリックスなどの定額動画視聴のサービスが拡充してからは、夜まったりしながら好きなだけ映画を見るという過ごし方がお気に入りになっている時期があった。
 
最近の映画だけでなく昔の映画も見られるというのがまた良いのだ。話題になって気になっていたけど見逃したものや、有名な格言やシーンがあって友人知人との話題にネタとして上がりやすいもの、一度見たことはあるけれど内容を忘れてしまったもの……。ずらりと並べてあるタイトルを眺めていると昔の見たかった気持ちを思い出したり、自分の脳内にインストールされていなかったタイトルも、予告で見てみたくなって手を出してみたり。新しい映画との出会いも、旧知の映画との再会もできる素晴らしいプラットフォームだ、と私は心の中で拍手をしている。
 
しかし、私はハリウッド映画(特にアクション系)を見ると、最後には大体冒頭の「頭を抱えている」ことになっている。頭を抱えると同時に怒りも抱えている。
 
その理由はただ一つ。
「結末で突如脈絡なく謎にブッ込まれるキスシーン」なのである。
 
恋愛ロマンス映画ならまだ良い。
しかし私が好んでよく見ているのはハラハラドキドキのアクション映画なのだ。命を落とすかもしれないぎりぎりの攻防戦だったり、敵に追いかけられて必死に逃げ切ったり、窮地に追い込まれて大逆転したり、クッションを抱き抱えながら私は「わあぁぁ……どうなるんだろう? どうなっちゃうんだろう?!」と予測できない結末を見守っているのである。
 
そういうギリギリの命のやりとりをし、窮地を脱して「ふう〜助かってよかった〜」と安堵し、これからフィナーレ! という時に、突然一緒に逃げていた男女二人がキスをし始めるのだ。そして、私はその瞬間に
 
「え、なんで??」
 
と思考が停止する。
そしてだんだんフツフツと怒りが湧いてくる。
 
逃げるのに必死だったはずなのだ、彼らは。ものすごく強い敵が自分を亡き者にしようとあの手この手を繰り出してくる中で、逃げまどっていたはずなのだ。なのに、急になぜ??
 
「命のやりとりをしながら、いつ恋心を育んだんだ……?」
 
最後の結末で、大きな謎が投下された。気になりすぎる問題である。おかげで私は物語の結末がどこかわからなくなってしまって頭を抱える。寝られなくなってしまった。
 
どこだ。どこの描写だ。どこに胸キュンポイントがあったのか。どこで恋心が芽生えたのか。頭の中は映像の振り返りとその謎解きでいっぱいである。
 
「吊り橋効果理論というやつか……?」
 
その可能性もある。不安や恐怖を感じる状況で出会った相手に対し、そのドキドキした感覚を恋愛感情だと誤解する心理現象、というやつだ。なるほどその可能性は非常に高い。たしかにドキドキのボルテージは最高潮だった。生きるか死ぬか、相手の手にかからなくとも心臓が破裂するのではないかと思えるくらいのドキドキの攻防戦を経ているわけなのだから。
 
しかし、映画の結末が「誤解の恋」で終わるのはちょっとなあ。私的にはあまり望んでいた形ではないというのが正直なところである。
そして私は個人的に恋愛ロマンスの映画は好きではない。なのでもしかしたらアクションものだと思って見ていたら最後に恋愛ロマンスのような終わり方をするというのが気に食わないのかもしれない。ある意味ちょっとした詐欺感を感じてしまっている。
 
「私が見てたの、アクション映画だったよね??」
 
しかし映画というものは、視聴者の予想を超えてきたり、良い意味で期待を裏切ったりするものなのだ。なるほど、そういう形の期待の裏切り方かもしれない。
 
と、思おうとしたのだがこのパターンが一度や二度ではないのである。
私の選んだ映画が偏っていたのかもしれないが、いろんなジャンルのいろんな監督のいろんな俳優の映画を見たはずなのに、「死線をくぐった男女が吊り橋効果により誤認した恋が始まる」が結末になっているものを何度も見かけてしまった。いや、誤認かどうかもわからない。もしかしたら本物の恋なのかもしれない。しかし映画はもう結末を迎えているのでそれを確認する術もない。なのでそのモヤモヤ感がに私に怒りを抱えさせているのかもしれない。
 
もしくは「男女がカップルになりました、めでたしめでたし!」とハッピーエンド感を感じさせるというテクニックなのかもしれないが、トッテツケタような結末と思ってしまうのは私の心が疲れているからなのだろうか。
月曜日から働き詰めての金曜日だからその可能性も、ある。金曜日というタイミングが悪いのかもしれない。
 
ハリウッドよお願いです。同じシリーズの次回作を撮るならば恋に落ちた二人の結末もしくはその落ちるまでの過程を描くものにしてください。気になりすぎて仕方がありません。よろしくお願いいたします。
 
 
 
 
***

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2025-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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