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自作自演、母の日。「ネバナラヌ」を追いやって、「シテモイイ」の呪文を唱える日のススメ。

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記事:志村幸枝(ライティング・ゼミ1月コース)
 
 
「母の日、どうするんですか?」
 
この時期、まるで「明日の天気どうですか」みたいなテンションで、みんな聞いてくる。いや、むしろ、こっちも知りたい。
 
そもそも、である。
母の日って、なに?
ありがとうって言われる日?
 
無理だ。プレッシャーがすごい。
母たるもの、無償の愛を提供し、見返りを求めず、でも感謝される存在であれって?
え、宗教ですか?
 
SNSでやりとりされる、母の日エピソード。コレだって、ちょっと圧を感じるときがある。
自分も投稿するときがあるが、家族の気分やお小遣い事情も一定ではない。盛大にお祝いされることもあれば、そうでもないときもあり、そんなことに「今年はどうなの?」とソワソワするのも疲れる。
 
それよりも、こちとら、日々のごはん作りでギリギリ生きてるんですけど。
 
「感謝されるべき」
「家族に囲まれるべき」
「喜びをかみしめるべき」
 
べき、べき、べき。
気がつけば、そんな「ネバナラヌ」に、ぐるりと取り囲まれている。
 
でも本当にそうだろうか?
 
母だって、いつも「母」をやらなくたっていい。
時々は「好きなことだけする母」でもいい。
いや、「母」を脱いだっていいんだ。
 
だいぶ前から、私は思いきって、「ネバナラヌ」を追い払った。
その代わり、心に唱えたのは「シテモイイ」の呪文だ。
 
「好きな花を飾ってもいい」
「好きなご飯をつくってもいい」
「自分のためにご褒美をしてもいい」
 
シテモイイ、シテモイイ、シテモイイ~!
(ちちんぷいぷい的な感じで唱えてほしい)
 
母の日といえばカーネーションが定番だけど、自分で好きな花を選ぶ。「これがいい」って思ったら、それが正解。誰の顔色も気にしない。自分がうれしい方を選ぶだけだ。
花は芍薬を、どんと生ける。ふくふくと膨らんだその姿は見ているだけで心が浮き立つ。
 
呪文を唱えながら、台所に立つ。
自分が食べたいものをためらいなく作って並べる。
お酒が好きな私が食べたいもの。つまりは酒のあてのようなおかずだ。
ご飯に合うおかずとは言いがたい。でも子どもたちにはこれで食べてもらう。
新じゃがは、オリーブオイルでカリッと焼いて、おいしいお塩をぱらり。海老とアボカドはレモンたっぷりのマリネに。春キャベツと生ハムはざっくり混ぜたサラダ。メインディッシュは鯖のトマト煮込みにしようかな。そうだ、デザートもいるよねー。
 
こんな時、ここにあるのは「自分はこれが食べたい!」という、まっすぐな気持ちだけ。
 
そんなことをしようと思ったのは、実は、あるご婦人のエピソードかきっかけだ。
 
90代でお一人暮らし。ご家族は近所にお住まいで、ひ孫さんまでいらっしゃる。
その方は、毎年、自分の誕生日に、自分で台所に立ってお料理を作る。しかもメニューは「家族の好物」だという。自分の誕生日なのに、なぜそんなことを? と不思議に思ったが、よくよく聞いてみると、「自分がやってうれしいこと」をしているだけだという。
 
なるほど。作るのも、家族が喜ぶのも、自分がうれしいこと、という訳か。
 
その根底には、祝ってもらうのを、ただ「待つ」だけでは無く、自分から「祝う側」にまわる、潔さ、たくましさみたいなものを感じた。年齢を重ねても、なおこんな風に生きられたら、どんなにいいだろうと思った。
 
「家族の好物」と「自分の好物」。一見対極にあるように思っても、「自分がどうするのがうれしいか」という点では共通している。90代のご婦人も、私も、自分がしたいことをしているだけ。
 
 
 
 
世の中には、「ネバナラヌ」があふれている。
「母なら、こうしなければならない。」
「母なら、こうあるべきだ。」
そんなものを背負い、子どもを思い、家族を思い、仕事を重い、細かなことまで、アレコレ気を配る。ふだん、あまり大きな声で自分を褒めることはない。そんな、ちょっと息苦しくなっている人が多いように感じる。
 
本当は、もっと自由でいいし、軽くていい。
だから、一年に一度くらいは、自分で自分に花を贈る日があってもいい。
 
つまりは、「自作自演、母の日」
である。
 
だれにも気兼ねは不要。人生の主役は、たったひとり、自分だ。
お気に入りの花屋で、好きな花を買う。
台所で、ゆっくりごはんをこしらえる。自分の食べたいものをひとつ。いや、もう一つ、二つ。
食卓に並べて、自分に自分で「ありがとう」って言ってみて欲しい。
ひとときの開放感に、肩の力が抜けるはず。
 
母だから。女だから。
そんな肩書きを全て脱ぎ捨てて、ただ「わたし」として、ひとときを祝う。
いい母親でいようと、いい人間であろうと、ひたむきに過ごしてきた自分にひとさじの甘やかしを贈る。「ネバナラヌ」じゃなく「シテモイイ」にする。
 
めちゃくちゃ楽しいから。
満たされるから。
是非やってみて欲しい。
 
わたしは、今年もまた「自作自演、母の日」の予定。
で、来年も、再来年も、リピ決定。
 
 
 
 
***

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2025-05-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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