メディアグランプリ

あなたの色はどんな色?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:土佐 徳彦(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
赤、青、緑……と世の中には沢山の「色」がある。
そして、人はそれぞれ好みの色を持っている。
 
鮮やかな、色彩に溢れた着物をみると、きれいだなと思う。
清々しい、新緑の木々が視界に入ってくると、心奪われる。
満開の桜の淡いピンク、見ると思わず見惚れてしまう。
 
 
しかし、しかしだ……。私は今、ダークブラウンに心奪われてしまっているのだ。
 
ラーメン、チャーハン、とんかつ、ハンバーガー、焼き肉……。
 
この世の中で、「うまいと感じるものが茶色」なのは、なぜだろうか?
 
考えないようにしているのに、気がつけば「茶色いあいつ達」を考えてしまう。
体に悪いとわかっているのに、食べてしまう「茶色いあいつ達」
太るとわかっているのに、食べてしまう「茶色いあいつ達」
 
夕飯時に、娘がぼそっと呟いた。
 
「パパって痩せればイケメンだよね!」
「え……、な、なんて言った?」
 
世の中、50をすぎれば、娘からの言葉ほど響くものはない。
 
ふと鏡を覗くと、そこには明らかに茶色に染まった中年男の自分がいる。(俺はいつから茶色い男になったのか……?)そうなのだ、知らぬ間に私はダークブラウンの権化となっていた。
 
健康的な緑、爽やかな青、情熱の赤ではなく、「脂ぎった茶色」になってしまっていたのだ。
 
その晩、寝床で娘の言葉がリフレインする。
 
「痩せればイケメン……」、「痩せればイケメン……」、「痩せればイケメン……」
 
心に芽生えた小さな闘志。それはまさしく、健康色・グリーンへの憧れだった。
 
翌朝、私は決意した。
 
さよなら、愛しの茶色たちよ。そしてこんにちは、鮮やかな緑よ。
 
まずは野菜生活からだ。
キャベツ、レタス、ブロッコリー、ほうれん草。
「これが俺の新しい仲間たちだ!」
 
しかし、食卓の緑は私を嘲笑うかのように退屈だった。
いくらドレッシングをかけても、彼らは頑なに「青臭い緑」のままだ。
 
「おい、緑! もっと俺に歩み寄れ!」
 
叫んでも野菜は応えない。当たり前か。
 
それでも私は諦めなかった。なぜなら娘の「イケメン」の言葉が頭から離れなかったからだ。
 
運動も始めた。ランニングシューズは派手な蛍光オレンジ。
「これが俺の情熱の赤だ!」
と張り切って買ったが、二日目には「靴擦れピンク」と名付けてしまった。
 
最初は近所の公園を軽くウォーキング。
お年寄りに軽々と追い抜かれ、「オレンジの俺」は早々に色褪せる。
 
「まさかここまで色あせるとは……」
 
それでも娘が応援してくれた。
 
「パパ、すごい! ちゃんと歩いてる!」
娘の笑顔こそが、私にとっての真のビタミンカラーだった。
 
娘は言った。「パパ、今日は赤を食べようよ。」
 
「え、赤? まさか……赤い肉か? 焼肉か?」
「違うよ、トマト!」
 
娘の言う「赤」は真っ赤なトマトだった。
 
爽やかでみずみずしいトマト。久々に食べると驚くほど美味しいそれからというもの、娘は毎日のように私に新しい色を提案してくれた。
 
「今日は黄色だよ。パプリカと卵焼き!」
「明日は紫! 茄子にしよう!」
 
彼女の提案する色彩は、いつしか私の生活をカラフルに染めていった。
 
数ヶ月後、鏡の前に立った私が見たのは、「脂ぎった茶色」ではなく、「健康的な肌色」の自分だった。
 
娘がまた言った。
「パパ、やっぱり痩せたらイケメンだね!」
 
今度は聞き逃さない。
「なんだって?もう一回言ってくれ!」
 
娘はニヤニヤしながら答える。
「調子乗らないでよね!」
 
気がつけば私の世界は再び彩りに満ちていた。
 
赤、黄色、緑、紫……それらは私に新しい人生を教えてくれた色だった。
 
もちろん茶色とも完全には決別していない。
 
しかし、今では「たまに楽しむ色」となった。
「今日くらい、茶色い奴らと再会してもいいかな?」
たまにそんな誘惑に駆られると、娘が言う。
 
「パパ、今日は青がいいよ!」、青って何だ?
「ああ、魚か! 健康的だな!」
 
「ううん、ジーンズ履いて一緒にショッピング!」
 
「なんだそりゃ!」
 
色は人生を豊かにする。そして、その色をどう取り入れるかは自分次第だ。
 
私の色は、娘がくれた七色の輝き、だろうか。
いや、やっぱり娘と同じ、笑顔の色だ。
 
さあ、あなたの色はどんな色?
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「天狼院カフェSHIBUYA」

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「名古屋天狼院」

〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先 レイヤードヒサヤオオドオリパーク(ZONE1)
TEL:052-211-9791/FAX:052-211-9792
営業時間:10:00〜20:00

■天狼院書店「湘南天狼院」

〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-18-17 ENOTOKI 2F
TEL:0466-52-7387
営業時間:
平日(木曜定休日) 10:00〜18:00/土日祝 10:00~19:00



2025-05-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事